ペイシェント腎臓について理解を深める JKAの福井医師に聞く慢性腎臓病になる理由(後編)
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「慢性腎臓病(CKD)」についてより多くの人に周知するため、3月14日に協和キリンは啓発イベントを東京・大手町の大手町仲通りにて開催しました。この催しは毎年3月の第2木曜日に制定されている「世界腎臓デー」に合わせて行われたもので、疾患に関するミニセミナーや尿検査などの健康診断コーナーなどを設け、腎臓について知識を深めていくきっかけとなるよう参加を呼びかけました。
【前編】3月の第2木曜日は世界腎臓デー 慢性腎臓病を理解し、防ぐためのイベントを開催
血圧測定や尿検査で医療相談
イベント会場には、血圧計による血圧の測定や、尿検査キットを配布する健診ブースを設置しました。血圧や尿検査の結果を受けて、医師らによる医療相談も行われ、参加者からは、腎臓に関する不安や生活習慣に関する相談などが寄せられました。
腎臓病は自覚症状なし、健康診断で早期発見
実際にイベントで参加者からの医療相談などを受けていただいた、東京慈恵会医科大学の腎臓・高血圧内科、NPO法人日本腎臓病協会(JKA)の慢性腎臓病対策部会の東京都代表でもある福井亮医師に、腎臓に関する話をお聞きしました。
–そもそも、なぜ慢性腎臓病になってしまうのでしょうか。
腎臓は非常に血管が豊富な臓器ですから、血管にダメージが起きると慢性腎臓病になってしまいます。血管にとって悪いことの代表は、高血圧と糖尿病です。それ以外にもコレステロールや尿酸、たばこ、肥満など、いろいろな要因があります。年齢によっても血管は傷みますから、高齢化が進めば当然、患者さんは増えていくと考えられます。
–今回のような啓発イベントについてはどのようにお考えですか。
腎臓には限らないと思いますが、これまで働く世代への啓発の機会は少なかったので、今回、多くの方に参加していただけてとても良かったと感じています。また、慢性腎臓病という病名の啓発のみならず、実際に管理の向上につながるような啓発が重要だと考えていますので、今回のようなミニセミナーや健診コーナーといった体験型のイベントは良い方法だと思います。実際に、イベント後のアンケートで、減塩しようと思った、運動をしようと思った、などの回答が多かったように、行動変容の効果を確認できたこともよかったと思います。
–知識をつけていただくだけでなく、行動を変えていただけるようなアプローチが大切ということですね。
解熱鎮痛薬等の副作用で少し傷んでしまったとか、感染症を起こしてしまった、脱水になってしまった、というような一時的なダメージであれば腎臓は修復できますが、3カ月を超えて慢性的なダメージを負って腎臓の糸球体という構造が破壊されてしまった場合には、再生しません。だからこそ、慢性化する前になるべく早く修正することが必要です。最初にお伝えしたように、腎臓は非常に血管が豊富な臓器なので、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の改善など、血管へのダメージを減らすことは全て、腎臓にとってもよいことです。さらに、命に関わる重要な臓器である脳や心臓の血管のダメージによって、脳梗塞や心筋梗塞など大きな病気を起こすことから、血管を守ることは健康寿命の延伸に直結します。つまり、このイベントでお伝えさせて頂いたことの多くは、腎臓の健康だけではなく、体全体の健康につながることとして理解していただけたらと思います。
–早期発見が大切とのことでしたが、腎臓のトラブルに関して、何か自覚できるサインはあるのでしょうか。
初期の慢性腎臓病では自覚症状がない、ということはまず覚えておいていただきたいです。腎臓病でむくみやだるさなどの自覚症状を感じるようになれば、かなり進行している可能性が高いと思います。また、健康診断の項目には、慢性腎臓病の診断項目の1つである尿蛋白が必ず入っていますので、ぜひ健康診断を受診し、その結果を忘れずに確認していただきたいと思います。自己判断で様子見にせず、異常があったらきちんと診察を受けることが大切です。健診施設や医師の側も、尿蛋白に異常があった場合には腎臓専門医をはじめ、腎臓に詳しい医師への受診を促すように対策していかなければと思います。
–本日はイベントに参加された方の健康相談もされていらっしゃいましたが、どんな方がいらしていましたか。
尿検査を体験して頂いた方には、尿に異常がある方はいらっしゃらなかったです。企業には健診の義務があるので、大手町という場所柄、きちんと健診を受けられていて、健康意識の高い方がお越しくださっていたのかもしれません。お忙しく働いていらっしゃる世代の方々は、健診は受けているけれど、何か問題があっても時間が無くて病院に行かないという方も少なくないと聞きます。そういう方にしっかりと受診していただくことも今後の課題ですね。
勤労世代をターゲットに疾患認知の向上を目指す
このイベントを企画したペイシェントアドボカシー担当者は、「”忙しい”を理由に健康診断を受けていない、再検査に行けていない方など、勤労世代をターゲットとした疾患認知の向上を目指して、今回初めて一般市民向けのイベントを実施しました。来場された方からは『初めて慢性腎臓病やCKDという言葉を聞いた』『腎臓について初めて知ることが多かった』『腎臓のために気軽に出来ることが多くあることを知った』などのお声をいただき、イベントを通して疾患のことや腎臓について考える時間をつくることができたと実感しています。今後も協和キリンとして出来る活動を考えていきたいと感じました。」とこのイベントを振り返りました。
イベント会場には、腎臓に関するクイズなどを記載したパネルを各所に展示していましたが、訪れた人の中には「あとでゆっくりと見直そう」と、パネルをスマホの写真に収めて帰る人もいらっしゃいました。多くの人に、腎臓と腎臓病への興味を広げることができたイベントとなりました。
参考情報 ; ニュースリリース 「日本腎臓病協会と協和キリン 慢性腎臓病(CKD) の疾患認知度に関するアンケート調査を実施」 最終アクセス日2024年7月12日