People & Culture 【解説記事】【わかりやすく解説】ジェンダーギャップ指数とは?上位国に学ぶ取り組み
男女格差は世界的にも改善すべき課題であり、さまざまな取り組みが実施されている。男女の平等性を数値化して分かりやすくしたものがジェンダーギャップ指数だ。
この指標を知ることで、日本が男女格差を解消できているか、世界と比べてどのような状態かを把握できる。
今回は、ジェンダーギャップ指数について分かりやすく解説していく。
ジェンダーギャップ指数とは「男女格差を数値化したもの」
ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが毎年発表している男女格差を数値化したものだ。
指数は0〜1の数値で評価され、スコアが1であれば完全平等、0だと完全不平等を示している。そのため、男女格差の少ない国ほど1に近い数値となり、不平等な状況であれば0に近づく。
指数を構成する分野は「経済」「教育」「健康」「政治」の4つで、格差状況を表す数値を「女性÷男性」で計算される値とし、全体の平均値がその国のスコアとなる。各項目は、男女格差が生じやすい分野として考えられており、すべての項目で平等な社会を実現することが目標だ。
2022年現在でジェンダーギャップ指数の対象となっている国は146ヶ国である。基本的に先進国の方が男女格差は少ない傾向にあるため、ジェンダーギャップ指数も高い。
2022年で最も指数の高い国はアイスランドで0.908というスコアを出している。前年もトップで0.892であったが、さらに男女格差の改善が見られた。
日本は、スコア0.650で146ヶ国中116位という結果である。この結果は、先進国としては最低レベルといわれ、アジアでは韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い状態だ。
【分野別】日本のジェンダーギャップ指数
日本のジェンダーギャップ指数は、分野ごとに大きく数値が異なるといった特徴が見られる。特に教育では完全平等の1.000を達成しているが、経済と政治に関しては非常に低い数値となっているのだ。
日本の抱える男女格差について、ジェンダーギャップ指数を参考にして分野別に解説する。
【教育】1.000(1位)
日本の教育に関する男女格差は、スコア1.000で完全平等を達成しており146ヶ国中1位である。ただし、複数の国が完全平等を達成しているため、1位を獲得しているのは日本だけではない。
教育のジェンダーギャップ指数は、以下の男女比によって判断されている。
評価基準
- 識字率
- 初等教育就学率
- 中等教育就学率
- 高等教育就学率
日本の場合、識字率や高等教育までの就学率が高く男女の差も少ない。
特に高等学校への進学は義務教育ではないものの、女子が96.9%、男子96.3%とほとんど差が見られずにどちらも高水準である。
また、すべての性別を同じく対象とした日本の教育カリキュラムは世界からも注目されている。
中でも、日本の学校で当たり前に行われている学級活動や学校行事などの特別活動は、特に重要な要素だ。特別活動は個人の自主性を育みながら、感情や価値観、人間関係の構築など、さまざまな役割を担う。
近年では、男女の相互理解を深めつつ、互いに協力し尊敬し合う態度を育成する取り組みの充実を図っている。
参照:「第1節 教育をめぐる状況」(内閣府男女共同参画局)
【健康】0.973(63位)
健康に関する男女比を評価した数値で、日本は比較的高い水準である。健康分野の1位のスコアは0.980で、ブラジルやポーランドなど複数の国が該当している。
評価基準
- 出生児の男女割合
- 健康寿命
日本は世界的に見ても長寿で、2013年には男女ともに平均寿命が80歳を超えた。
男女の平均寿命には差があり、2019年には女性87.45歳、男性81.41歳で、女性の寿命が6.04年長い結果となった。
海外でも同様に平均寿命は女性の方が長く、生物学的な違いや社会文化的な影響などが要因と考えられている。
そのため、男女格差を評価するうえでは単純な生命活動の寿命だけではなく、自立して生活できる期間である健康寿命が重要だ。
2019年日本の健康寿命は、女性75.38歳、男性72.68歳で、その差は2.7年と平均寿命ほどの大きな差は見られない。
参照:「第1章 高齢化の状況(第2節 2)」(内閣府)
【経済】0.564(121位)
労働に関する男女格差の指標では、日本は非常に低い結果となっており、前年の0.604と比べるとスコアは0.04下がった。
評価基準
- 生産年齢人口の労働参加率
- 同一の労働で生じる賃金格差
- 男女の収入差
- 管理職の男女比
日本はいずれの評価基準においても低い水準となっているが、特に管理職の女性割合が低いことが最もスコアを下げる原因となっている。
国内の取り組みとしては、男女の賃金格差開示の義務付けや、女性の割合が多い業界の収入引き上げなど「女性の経済的自立」が推進されているが、結果を考えるとまだまだ十分とはいえない。
ジェンダーギャップ指数1位のアイスランドの場合、同一労働であれば男女の賃金を同一にすることを法律で義務付けており、違反すると高額な罰金が課せられる。
【政治】0.061(139位)
男女が平等に政治へ参加できているかを評価する指標で、日本はこの分野が最も低いスコアとなっている。
前年も同じ0.061であるため、スコアや順位の低さだけではなく、改善が見られていないことも問題といえるだろう。
評価基準
- 国会議員の女性割合
- 閣僚の男女比
- 過去50年に女性首相が在任した期間
日本は、世界中と比較しても女性議員の割合が少なく、過去に女性首相が誕生したことがない。
2022年3月時点の国会議員(衆議院議員)に占める女性議員の割合は9.7%と、非常に少ない状況にある。スウェーデンでは46.1%、フランスでは39.5%となっており、諸外国の中でもかなり低い水準だ。
参照:「1-3図 諸外国の国会議員に占める女性の割合の推移」(内閣府男女共同参画局)
ジェンダーギャップ解消に向けた取り組み
日本が特に低評価となっている経済と政治分野について、上位の国ではどのような取り組みをしているのか紹介する。
クオータ制の導入
クオータ制とは、政治や経済分野での男女格差を解消するために、あらかじめ女性または両性の割合を定めておく制度である。
政治においてクオータ制を導入すれば、女性議員を一定数確保できるようになる。
ジェンダーギャップ指数3位のノルウェーはクオータ制の発祥地としても有名で、政治だけではなく一般企業においても法制化により導入している。
結果、女性の積極的な登用を促すことに成功し、経済分野のジェンダーギャップ解消にもつながった。
日本では女性候補者の割合を2025年までに35%とする目標が設定されているものの、クオータ制を採用すべきかについては意見が分かれており、具体的な導入には至っていない。
男性の積極的な育児休暇取得
ジェンダーギャップ指数1位のアイスランドでは、女性だけではなく男性にも最低3ヶ月の育児休暇取得が義務付けられている。
この取り組みは2000年に育児休暇法が改定されてから開始されており、以前はアイスランドでも「育児は女性がするもの」という認識が根強かった。
男性が育児休暇を取得するようになり、育児への認識が改められ、現在では男女格差の解消につながっている。
日本にも育児休暇制度はあるが、2022年男性の育児休暇取得率はわずか12.65%だ。取得率は年々増加傾向にあるものの、世界に比べると男性が育児に関わる時間は少ない。
そこで日本では、2022年10月から「産後パパ育休」制度が新設された。
この制度は、子どもが1歳になるまで取得できる通常の育児休業とは別に、出生後8週間以内であれば最大4週間まで取得できる育児休業である。
男性の育児休業取得を促すことによって、女性の雇用継続も図り、男女格差を解消することが目的だ。
新設された制度を活用して男性の育児への関心が高まれば、アイスランドのようにジェンダーギャップへの意識も高まるだろう。
まとめ
ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の分野で男女格差を評価して数値化したものだ。
日本はまだ総合的に低い水準で政治と経済では男女の差が目立っている。特に政治分野では女性の参入割合が少なく、世界の中でも最下位レベルの指数だ。
ジェンダーギャップ指数を改善するには、クオータ制の導入や育児休暇の整備など、海外の取り組みを参考にすることも重要である。