社会との共有価値 【解説記事】日本の食品ロスは家庭からも多い!解決が急がれる理由

食品ロスとは、まだ食べられるはずの食品が廃棄されている社会問題を指す言葉である。

この食品ロスは世界中で発生しており、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)目標12「つくる責任とつかう責任」のひとつに取り上げられている。

この記事では、SDGsの達成に必要な食品ロス削減について解説する。

食品ロス削減はSDGs達成のひとつ

食品ロスは世界的な問題であり、食品廃棄を削減することはSDGs目標12にも該当している。

この目標は「つくる責任つかう責任」として、衣料や食料、エネルギーなどの色々な分野の消費と生産のパターンを確保して、資源をより効率良く利用できる経済の実現を目指すものだ。

現在、世界ではどれほどの食品が廃棄されているか知っているだろうか。実に年間でおよそ13億トンもの食品ロスが出ているのだ。

2019年の世界人口77億人に対し、その内の1/9である約8億人が栄養不足という統計が出されている。

それにもかかわらず、現状では食料生産を必要以上に行っており、多くのエネルギーを余分に消費しているのだ。さらに、水分を含む食品の廃棄によって、多くのCO2が排出されるなどの環境問題も発生している。

SDGsでは主に目標12に該当しているものの、目標8や目標9にも関連している問題である。国内では2030年の目標達成に向けて、食品系企業を含む各企業も削減のための取り組みを行っている。

日本の食品ロスの原因は「売れ残り」「食べ残し」「作りすぎ」

食品ロスは、事業系と家庭系のふたつに分けられる。それぞれどのように食品ロスにつながっているのか原因を見ていこう。

事業系:売れ残り、食べ残し

食品ロスは、事業活動のさまざまな過程において発生している。製造工程では、加工時の不要部分のロス、規格外品の廃棄などが挙げられるだろう。

農家や漁業といった生産者段階で発生した規格外のものや、食品製造業者の製造段階で欠けた・割れたなど商品にならないものが、食べられる状態であっても廃棄されている。

需給ギャップも食品ロスを促す一因だ。獲れすぎた野菜や魚類、イベントに向けた過剰に生産された食品、製造計画と需要のギャップなどが食品ロスを生み出している。

そのほか、フードチェーン全体の慣習である1/3ルールも食品ロスの要因になっている。1/3ルールとは、商慣習上の期限で、製造業者が賞味期限の1/3までに小売に納品するルールをいう。1/3ルールでは納品期限が早まることから過剰在庫や返品などによる食品ロスが起きやすい。

消費の段階での食品ロスも日本では大きな課題だ。特に、外食産業では、仕込みによるロスのほか、食べ残しによるロスも多い。

家庭系:食べ残し、直接廃棄

消費者や家庭から発生している食品ロスは、大まかに3つのパターンにわけることができる。

まずは食べ残しによる廃棄で、一度調理された料理などが残されることは非常に多い。

そして、手つかずの食品が捨てられる直接廃棄と呼ばれるもの。

これには、買ってきた惣菜や材料の賞味期限切れなどにより、使用されることも提供されることもなく、一切手をつけない状態で廃棄された食料が含まれる。

日本の食品ロスの現状は改善傾向にあるものの解決が急務

日本の食品ロスは改善傾向にはあるが、早急に解決すべき課題のひとつだ。解決が急がれる理由を食品ロスの現状と比較しながら説明していく。

食品ロスの発生量は年間522万トン

環境省によると、令和2年度における国内での食品ロス発生量の推計は、522万トンに上ることがわかった。令和元年度の推計は570万トンのため、前年度より48万トン減少している計算だ。なお、平成27年度以降は減少に転じ、年々少しずつ食品ロスは減ってきている。

令和2年度の推計に戻ると、内訳は事業系の食品ロスが275万トン、家庭系の食品ロスが247万トンであった。

出典:我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について|環境省別ウィンドウで開きます

それでは、事業系と家庭系の合計である522万トンとはどのような数値なのだろうか。国民ひとりあたりのご飯の量に換算すると、1日お茶碗1杯(約113g)の食品が廃棄されている計算になる。

減少に転じているものの、年間にすると1人あたり年間41kgもの食品を捨てていることになり、まだまだ無視できない数値だ。世界規模で援助された食料の総量が平成30年で年間約390万トンのため、日本国内の食品ロスの方が上回っていることがわかる。どれほどの食品が無駄になっているか、おわかりいただけただろうか。

出典:日本の食品ロスの状況(令和2年度)|農林水産省pdfが開きます

なお、食品ロス量のうち275万トンが事業系と説明したが、中でも最も多いのが全体の23%を占める食品製造業からのロスである。次いで多いのが全体の16%にあたる外食産業からのロスだ。

また、家庭系の食品ロス247万トンのうち、食べ残しと直接廃棄が同等程度で、それぞれ食品ロス全体の20%程度を占める。

出典:食品ロス削減関係参考資料(令和4年6月14日版)|消費者庁消費者教育推進課 食品ロス削減推進室pdfが開きます

我が国において食品ロス削減の重要度は高い

食品ロスの現状をお伝えしたとおり、ロスは減少傾向にあるが、なぜ解決が急務とされているのだろうか。

ひとつは、食品自給率の問題だ。日本は、食品の供給を海外からの輸入に頼っており、食品自給率は38%。カナダ(233%)やアメリカ(121%)、フランス(131%)などの諸外国と比べて、低い値であることがわかる。約6割もの食品を海外の生産力に頼り、輸送エネルギーをかけて輸入しているにもかかわらず、食品ロスを生み出しているということになる。これは、国内だけでなく、世界の環境問題にも発展しつつある。

出典:世界の食料自給率|農林水産省別ウィンドウで開きます

食品ロスにかかるコストも多大だ。毎年食品ロスのために、地方自治体においては多額のコストが投入されている。

家庭における食品の家計負担が大きいこと、7人に1人の子どもが貧困に陥っていることも大きな問題となっている。

食品自給率を高め、さらに廃棄にかかるコストを抑制し、食料品の家計負担や子どもの貧困を軽減するには、食品ロスの問題を解決することが急務なのだ。

出典:食品ロス削減関係参考資料(令和4年6月14日版)|消費者庁消費者教育推進課 食品ロス削減推進室pdfが開きます

SDGs達成に向けて!食品ロス削減の取り組み

それでは次に、実際に行われている食品ロス削減の取り組みについて紹介しよう。

食品ロスの削減の推進に関する法律を制定

国内では、令和元年10月1日に、食品ロスの削減の推進に関する法律(略称は食品ロス削減推進法)が施行された。多様な事業者などが連携して、国民活動として食品ロスの削減を推進するために制定された法律だ。

前文では、輸入に依存する状況において真摯に取り組むべき課題であること、社会全体として意識の定着を図ること、食べられるものはできるだけ活用することが明記された。

具体的な内容としては、以下の取り組みが定められた。

  • 食品ロス削減月間(10月)の設置
  • 政府の基本方針の策定
  • 事業者や消費者への教育や啓発
  • 食品関連事業者の取り組みの支援
  • 食品ロス削減の功績を残した者への表彰

SDGs等を踏まえた削減目標の策定

食品ロスを削減するため、国内では法制度による取り決めを行った。第四次循環型社会形成推進基本計画には、食品リサイクル法の基本方針が記載されている。

食品リサイクル法とは、食べ残しや売れ残り、製造・加工・調理の過程で発生する食品廃棄物などについて定めたものだ。

  1. 発生抑制と減量化による最終処分量の減少
  2. 飼料や肥料等への利用、熱回収等の再生利用

主にこのふたつについての基本方針が示されており、食品関連の事業者による取り組みが推進されている。

取り組み内容としては、食品ロスの削減を含めて、特に食品廃棄物などの発生抑制が最も優先すべき事項として位置づけられた。

「基本理念」に食品ロスの削減を明記し、事業系⾷品ロスの削減に関しては具体的な目標値も設定している。

2000年度の発生量である547万トンを、2030年度までに半減させ273万トンにすることが明言されているのだ。

現在は、食品リサイクル法に基づき、不可食部も含めた食品廃棄物等の発生抑制目標値が業種別に設定されている。

レシピ公開

食品ロス削減の取り組みは、事業者だけではなく家庭でも行わなければ、SDGsの目標は達成できない。

環境省からは、料理研究家とコラボして食ロスゼロレシピ別ウィンドウで開きますを紹介し、動画も配信されている。

このレシピを参考にすることで、普段は捨てがちな野菜の皮なども無駄なく調理できるため、ぜひ参考にしてもらいたい。

さらに消費者庁では、料理レシピサイト「クックパッド別ウィンドウで開きます」内に、「消費者庁のキッチン」というページを設けて食材を無駄にしないレシピを公開している。

こちらもあわせて参考にすることで、家庭での食品ロスを削減できるだろう。

事業者・消費者が取り組む食品ロスの解決策

食品ロスを削減するためには、事業者と消費者の誰もが普段から心がける必要がある。これからすぐ取り組めるような、具体的な実践方法を紹介しよう。

事業者が取り組む食品ロス対策

業種共通の対策としては、商慣習を見直して納品期限の緩和など行い、フードバンクの活用によって食品を必要としているところに寄贈する方法がある。

また、需要予測の精度向上は効率的な経済活動のためにも有効だろう。

製造業では、賞味期限延長、年月表示化、過剰生産・過剰在庫削減によりロスを削減できる。

卸・小売業でも売り切り、配送時の汚損・破損削減、小容量販売、ばら売りなど販売方法を工夫することで対策につながるのだ。

昨今、外食産業の食べきり推奨や持ち帰りへの協力は、目にすることも多いだろう。さらに調理ロス削減や提供サイズの調整も重要になる。

各家庭でできる食品ロス対策

各家庭でも、毎日の積み重ねが食品ロス削減には重要である。基本的な対策は、食べ切れる分だけ作り、材料もできる限り使い切るように心がけることだ。

冷凍するなどそれぞれの食材の傷みにくい保存方法を調べ、保存した食べ物は配置などを工夫して忘れないようにすることが大事である。

外食でも食べ切れる量を注文するようにして、余りそうなときは持ち帰り可能か事前に確認しておくと良い。

特に宴会では食べ残しが増える傾向にあるため、開始して30分と終了前の10分は自分の席で料理を頂く「3010運動」にも取り組むようにしよう。

食べ切れない食品や贈答品が余っている場合には、フードドライブへ寄付することで、困っている団体や施設に寄贈することができる。

自治体で行われている取り組みなので、事前にホームページなどで確認しておくと良いだろう。

まとめ

今回はSDGsの目標にも関わりの深い、食品ロスについて解説してきた。現在でも、事業者と家庭の両方から大量のロスが発生しており、環境問題や資源の無駄使いにもつながっている。

身近なところにも食料が不足して困っている人たちがいるため、余っている食品を寄付することも大切だ。

食材を使い切り、残さず食べる、その当たり前のような積み重ねが、食品ロス削減には重要であり、一人ひとりが食事を大事にするよう心がける必要がある。

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