社会との共有価値豊かな地球環境を未来世代へ

本記事は協和キリンアニュアルレポート2022より再構成したものです。

環境に対するコミットメントのもと、バリューチェーンを含めた脱炭素企業の実現を目指し、次世代に引き継ぐ地球環境の保全に積極的に取り組んでいます。

環境マネジメント

協和キリンは、社会の持続性へのインパクトとグループの事業へのインパクトの観点から、重点的に取り組むべき環境に関する課題を2021-2025年中期経営計画へ組み込み、単年度ごとに目標設定を行い、施策を実行しています。中でも、「気候変動の緩和と適応」および「水資源管理」については環境における中核的な課題と位置づけており、単年度目標に加えて中長期の目標を設定し、各種施策を展開しています。

協和キリンの環境管理については、その最高責任者として代表取締役副社長を任命し、ガバナンス体制を構築して運用しています。

なお、日々の環境管理活動においては、すべての国内生産・研究事業場で環境マネジメントシステムISO14001に則り実施しています。

気候変動への対応など

協和キリンが属するキリングループでは、「キリングループ環境ビジョン2050」における「気候変動に関する一緒につくりたい2050年の社会『気候変動を克服している社会』」のもと、キリングループ全体で2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げています。

協和キリンにおいても、2030年のCO2排出量を2019年比55%削減する目標を掲げています。気候変動に関する具体的なコミットメントとして、設備投資を含む「省エネ」と「再生可能エネルギーの拡大」を中心とした早期の「CO2排出量削減の推進」および「エネルギー転換の推進」をあげ、2030年目標達成に向けたロードマップを作成するとともに、短期目標(2024年度CO2排出量:2019年比51%削減)も設定しました。キリングループとしてのネットワークを活用し、事業特性を活かした気候変動施策を積極的に展開することにより、本ビジョンの実現に向けて貢献していきます。

協和キリンでは、再生可能エネルギーの利用を促進するため、2011年から太陽光発電設備の導入を進めてきました。2022年度末現在、東京リサーチパーク、富士事業場、宇部工場、高崎工場で稼働しています。また、2023年3月には宇部工場へのオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデルによる大規模太陽光発電設備(1.47MW)の導入・稼働をしており、CO2排出量削減を加速させる予定です。

宇部工場のPPA大規模太陽光発電設備

一方、2020年以降、RE100適合の再生可能エネルギーを高崎工場、富士事業場に順次導入し、各事業場の電力を100%、再生可能エネルギーに切り替えてきました。2023年4月には宇部工場にも導入し、当事業場の電力の100%をRE100適合の再生可能エネルギーに切り替えました。これらの再生可能エネルギーの導入により、協和キリングループの年間消費電力量約70,900千kWhのうち約60,300千kWhがCO2排出量ゼロの再生可能エネルギー由来のものに切り替わり、当社グループの年間CO2排出量の約53%(27,300t)が削減される予定です。※1なお、2021年には、本社の電力(100%)もRE100適合再生可能エネルギーが導入されています。※2

「エネルギー種毎のCO2排出量割合(2019年)」(電気66%、都市ガス26%、灯油6%、蒸気1%、天然ガス1%、その他1%)から2020年より順次、高崎工場、富士事業場、宇部工場の購入電力の100%を再エネに変更することで、「当社グループの年間CO2排出量の約53%を削減(2023年予想)」
エネルギー種毎のCO2排出量割合と再生可能エネルギー導入によるCO2排出量削減効果(国内外の全生産・研究事業場)

今後、2025年までに国内主要事業場の、2030年までに海外サイトや国内支店営業所等も含めた当社グループ全事業場の購入電力を100%再生可能エネルギーに切り替える予定です。さらに、国内生産・研究事業場や、海外生産事業場への太陽光発電設備の導入も検討しています。

なお、生産・研究事業場※3では、事業場ごとに単年度のエネルギー原単位削減目標を設定し、生産効率向上の施策を展開しています。2022年度のエネルギー原単位は、各種生産効率向上施策を展開したものの、生産設備増強ならびに製造量増加等の影響により、前年比2.2%増となりました。

また、営業車両から排出されるCO2削減にも取り組んでおり、2009年以降、国内の営業車両(社有車)へのハイブリッドカー導入を進めてきました。2019年度以降は、国内の新規導入営業車両にはすべてハイブリッドカーを採用しており、2022年度末現在でハイブリッドカー導入率は99.2%に達しています。また、Webによる面談や説明会・講演会の実施など新たな情報提供活動が増加しており、CO2排出削減にも貢献しています。

2018年:CO2排出量2,616トン ハイブリッドカー導入率92.0% / 2019年:CO2排出量2,355トン ハイブリッドカー導入率91.7% / 2020年:CO2排出量1,524トン ハイブリッドカー導入率92.9% / 2021年:CO2排出量1,913トン ハイブリッドカー導入率96.9% / 2022年:CO2排出量1,790トン ハイブリッドカー導入率99.2%
営業車から排出されるCO2排出量とハイブリッドカー導入率

水資源管理

協和キリンは、国内外の各生産事業場における水リスク評価(WRI AqueductおよびWWF Water Risk Filter等による水不足・水ストレス、洪水、水源の水質汚濁のリスク評価)を実施しています。

その結果、宇部工場では渇水や高潮による浸水のリスクが、協和麒麟(中国)製薬有限公司(上海)では水不足や洪水のリスクが、他の生産事業場より高いことが判明しました。一方、高崎工場については、国土交通省が発表している最新の地点別浸水シミュレーションにより、浸水の被害が想定されています。

これらの結果を受け、事業場の大規模自然災害BCPの見直し・策定などのソフト対策に加え、設備の浸水防止措置対策などハード面での対応も実施し、これらのリスクの回避・最小化を図っています。

また、協和キリンは、「キリングループ環境ビジョン2050」のもと、「協和キリングループ環境方針」に基づき、節水や水源の保全にも取り組んでいます。2021年に、これまでの2030年水使用量(取水量)削減目標を見直し、新たな2030年取水量削減目標として「2019年比40%削減」を設定しました。さらに本目標達成に向け、短期目標も設定しています。取水量削減に向け、計画的な施設の廃止・整理、および冷凍機の空冷化などの効果的な設備投資を実施していきます。2030年取水量削減目標に対して、2022年度末時点で2019年比33%削減※1を達成しています。さらに、水使用の効率化も図るため、毎年、事業場ごとに水使用量(取水量)原単位目標を設定し管理しています。2022年の取水量原単位は、前年比9.7%減※3でした。

生物多様性保全

協和キリンでは、資材調達において、社用封筒、会社案内パンフレット、製品包装段ボール箱などにFSC®認証製品※4を導入することにより、世界の森林を健全にすることに貢献しています。2021年に改訂された「キリングループ持続可能な生物資源利用行動計画」に従い、国内製品包装段ボール箱のFSC®認証製品導入の拡大、製品内箱などへのFSC®認証製品の採用も継続して検討しており、海外の事業場・製品等へのFSC®認証製品の導入についても検討を開始しています。

FSC®認証紙の採用

また、生態系を維持し、生物多様性を守る活動として、2007年度からキリングループの「水のめぐみを守る活動」にも取り組んでおり、高崎工場および宇部工場では、「水源の森づくり活動」として、下草刈りや植林、間伐作業を実施しています。なお、キリンホールディングス(株)は、当社を含むキリングループ全体の水資源保全に関する取り組みや製造事業所における流域の水リスク評価とリスクを反映した戦略の策定実行などが高く評価され、環境情報開示システムを提供する国際的非営利団体であるCDPにより、水セキュリティにおいて最高位の「Aリスト」企業に7年連続で認定されています。

水源の森づくり活動の様子

さらに、事業場ごとに、「あまごの稚魚放流」や「秋吉台の草原を守り・育む活動」など、地域の方々とともに生態系を守る活動に取り組んでいます。また、静岡県の「リバーフレンドシップ制度」を利用した近隣河川の清掃活動や「富士山ごみ減量大作戦」など、地方行政機関と協働した活動も継続しています。今後もこれらの活動を通じて、地域コミュニティの育成と自然環境美化・生物多様性保全の意識向上につなげていきます。

富士山ごみ減量大作戦

医薬品の研究開発・製造においては、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」遵守のため、社内に委員会を設け、適切な管理を行っています。2022年の遺伝子組換え委員会では、各部門における実験申請漏れ対策に重点を置いた監査の結果を共有しました。

なお、キリングループでは、2010年に「キリングループ生物多様性保全宣言」を策定したのち、2013年に「キリングループ持続可能な生物資源調達ガイドライン」等も策定し、取り組みを進めています。

  1. ※1協和キリングループの国内および海外の生産・研究事業場の2019年度実績値を基に算出
  2. ※2協和キリン本社が入居する「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」では、「RE100」に適合する再生可能エネルギー由来の電力が導入されています。
  3. ※3協和キリングループの国内の生産・研究事業場および海外の生産事業場
  4. ※4協和キリンはFSC®プロモーションライセンス(FSC® N003037)を取得しています。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

協和キリンは、2021年にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会、それらが及ぼす影響を見極め、TCFDの提言に沿って、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク・機会の管理」および「指標と目標」の4項目について、以下のとおり整理しました。

ガバナンス(環境課題に対するガバナンス)

気候変動におけるリスクや機会に関する課題や、環境活動方針・結果などについては、グループの環境管理における重要事項として、環境管理全般の最高責任者である代表取締役副社長を委員長としたCSR委員会で報告・審議・決定し、その内容を取締役会に報告しています。また、2020年度より環境管理統括機能を担うCSR推進部内にTCFD検討担当を設置し、気候変動におけるリスクと機会の特定・評価・対応について検討しています。特定したリスクと機会は定期的に見直し、CSR委員会へ報告・付議することにより、経営戦略の一環として気候関連課題に取り組んでいます。

気候変動に関するリスク・機会と財務影響の分析

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シナリオ区分 インパクト評価を行った
気候変動関連ドライバー
潜在的
インパクト
対応による変化
(レジリエンス)
移行リスク 政策・法規制 カーボンプライシング
(脱炭素、排出量取引制度)
リスク:小 ±0
CO2排出規制の強化 機会:微小 機会:小
人口・経済・地政学 新興国における人口の増加/
経済のグローバル化
±0 ±0
社会 社会の価値観の変化 リスク:微小 ±0
物理的リスク 平均気温の上昇・降雨
パターンの変化(急性)
極端な気温上昇 リスク:小 機会:小
集中豪雨、台風、洪水の増加 リスク:大 リスク:微小
平均気温の上昇・降雨
パターンの変化(慢性)
花粉症患者の変化 機会:中 機会:中
空調負荷増加によるエネルギー消費増加 リスク:小 機会:小
  • 2030年の目標を早期に達成し、CO2排出量を削減
  • 事業場の大規模自然災害BCPの見直し
  • 設備自体の災害への対策

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