協和キリンと米国アムジェン、開発中のアトピー性皮膚炎治療薬「KHK4083」の共同開発・販売に関する契約を締結
様々な成果をもたらした両社による提携活動の歴史がさらなる進化へ
KHK4083はアトピー性皮膚炎やその他の炎症性疾患に関連するOX40発現T細胞を減少
G7地域におけるアトピー性皮膚炎の罹患患者は約3,000万人
協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本昌志、以下「協和キリン」)とAmgen Inc. (本社:米国カリフォルニア州サウザンドオークス、会長兼最高経営責任者:ロバート・A・ブラッドウェイ、以下「アムジェン」)は、協和キリンが創製したヒト型抗OX40モノクローナル抗体KHK4083の自己免疫疾患であるアトピー性皮膚炎等を対象とした共同開発・販売に関する契約を締結したことをお知らせします。
KHK4083は協和キリンが保有している「完全ヒト抗体作製技術」と抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高める「POTELLIGENT®技術」を利用したヒト型抗OX40モノクローナル抗体であり、活性化T細胞を選択的に減少させることが確認されています。現在、G7地域で約3,000万人以上が罹患しているアトピー性皮膚炎を対象として、本剤は米国、欧州、日本で開発が進められており、アトピー性皮膚炎の治療薬としてファーストインクラスになりうる開発品です。本年2月に中等症および重症アトピー性皮膚炎患者さんを対象とした第2相臨床試験の結果が公表されており、今後第3相臨床試験の実施を予定しています。
ADCC活性を高める協和キリンのPOTELLIGENT技術を利用した抗体医薬品は、現在、がんや喘息などの治療分野で応用されています。このADCC活性を高める協和キリンのPOTELLIGENT技術は、多くの製薬会社にもライセンスされています。
今回の契約に基づき、アムジェンは本剤の開発や製造を主導し、協和キリンが単独で販売活動を担当する日本を除き、グローバルでの販売活動を主導します。また、両社は米国において本剤のコ・プロモーションを行い、協和キリンは米国以外(日本を除く欧州およびアジア)においてコ・プロモーションを行う権利を有しています。アムジェンは、協和キリンに400百万ドルの契約一時金、今後最大850百万ドルのマイルストンと全世界での売上に対するロイヤルティーを支払います。両社は、日本を除く全世界での開発費および米国での販売にかかる費用を折半します。なお、日本を除く全世界の市場における本剤の売上はアムジェンに計上されます。さらにアムジェンは、子会社であるdeCODE Genetics社の独自データを活用し、KHK4083のさらなる開発可能性も検討します。
協和キリンの代表取締役社長 宮本昌志は次のように述べています。
「協和キリンは、当社の科学的発見や新薬の価値をできる限り患者さんに届けるために、さまざまな企業と提携してきた長い歴史を持っており、中でもアムジェンは当社がよく知るつながりの深いパートナーです。KHK4083は、当社のグローバル・パイプラインにおける重要な資産です。過去の成功と信頼関係に基づく今回のアムジェンとの提携が、今後のKHK4083の開発と販売に向けた活動の加速と同時に、当該疾患に関する知見の蓄積につながり、本剤が患者さんのニーズにかなう新たな治療の選択肢となることを期待しています。」
アムジェンの会長兼最高経営責任者CEOであるロバート・A・ブラッドウェイは、次のように述べています。
「協和キリンは、私たちアムジェンの最初のパートナーの一つであり、アトピー性皮膚炎の治療薬として有望な後期開発品目を推進するために、再び協和キリンと協力できることを嬉しく思います。私たちは、炎症性疾患における20年の経験を活かし、KHK4083のグローバルな可能性を一刻も早く実現できるよう取り組んでいきます。」
アムジェンは、炎症性疾患の治療におけるグローバルリーダーであり、Otezla®、Enbrel®、AMGEVITA® (Humira®のバイオシミラー)、AVSOLA® (Remicade®のバイオシミラー)などの医薬品を販売しています。アムジェンの開発パイプラインには、tezepelumab(重症喘息のファーストインクラスの治療薬として2021年5月に米国FDAに承認申請中)、ABP 654(STELARA®のバイオシミラー)などがあり、さらに全身性エリテマトーデスとセリアック病を対象としたフェーズ2bの品目も開発中です。
協和キリンの執行役員研究開発本部長 鳥居義史は、「KHK4083は、当社の抗体作製技術を駆使し、最適なターゲット分子を選択・最適化した世界でも誇るべき当社の専門性が具体化した事例です。このように、私たち協和キリンの研究開発機能が疾患治療のさらなる改善につながる発見を生み出し続けていることを誇りに思います。KHK4083の第2相試験のデータを含む一連の臨床試験結果は非常に有望であり、この開発品に対する理解をさらに深めるため、アムジェンと共同で後期のグローバルプログラムを開始することを楽しみにしています」と述べています。
1984年、アムジェンと協和キリンの親会社であるキリンホールディングス株式会社(旧キリンビール株式会社、以下「キリン」)は、エスポー®(米国製品名:EPOGEN®)の開発・商業化を目的とした折半出資の合弁会社を設立し、1989年に本剤はアムジェンの医薬品として初めて米国食品医薬品局(FDA)に承認され、日本においても1990年にキリンの医薬品として初めて承認されました。その後、この合弁事業は拡大し、グラン®(米国製品名:NEUPOGEN®)、ジーラスタ®(米国製品名:Neulasta®)、ネスプ®(米国製品名:Aranesp®)、ロミプレート®(米国製品名:Nplate®)など、他のいくつかの医薬品の開発と販売にも発展しました。2017年、両社は、合弁会社をアムジェンの完全子会社とし、アジア太平洋地域でアムジェンが導出した医薬品の一部を協和キリンが引き続き保有することを発表しました。
- ※1協和キリン:市場関係者向け電話会議の開催のご案内
- 2021年6月1日(火)19時より、市場関係者の皆様を対象とした電話会議を開催いたします。ご参加方法につきましては、株主・投資家の皆様向けサイトをご参照ください。
- ※2KHK4083の第2相臨床試験について
- 2021年2月、協和キリンは、同社が日本、アメリカ、カナダおよびドイツで実施した、外用剤を使用してもコントロール不良の中等症および重症アトピー性皮膚炎患者274例を対象に、KHK4083投与群とプラセボ投与群の有効性および安全性を評価した二重盲検比較試験の結果を公表しました。主要評価項目である投与16週時におけるEASI(Eczema Area and Severity Index)のベースラインからの変化率において、全てのKHK4083投与群のプラセボ群に対する統計学的有意差が認められました。また、KHK4083投与群全てにおいて、16週時点でEASI-75(EASIスコアがベースラインから75%以上改善)を達成した患者さんの割合、および16週時点でIGA(Investigator's Global Assessment)で0または1かつ2ポイント以上の改善を達成した患者さんの割合は、プラセボ群と比較して有意差が認められ、かつ、16週目以降もKHK4083の有効性の持続が認められました。
KHK4083投与群で発生した一般的な有害事象は、発熱、鼻咽頭炎、アトピー性皮膚炎の悪化、悪寒で、最初の16週間で発生しました。このうち、発熱および悪寒は、軽度から中等度の症状であり、そのほとんどが注射部位反応によるもので、治験薬の初回投与後にのみ発現しました。なお、本試験において、重篤な過敏症および死亡例は認められませんでした。
- ※3アトピー性皮膚炎について
- アトピー性皮膚炎は、免疫系の障害および過剰反応により、皮膚の保護機能が損傷する炎症性の慢性疾患です。アトピー性皮膚炎罹患例では、全身の皮膚に掻痒感を伴う発疹があらわれます。病変部を掻くと体液の浸出や出血を伴うため、その結果として感染症を引き起こしやすくなります。また、皮膚が乾燥して変色したり、繰り返し掻くことで皮膚の肥厚や硬化が見られたりすることもあります。アトピー性皮膚炎は通常、乳児期あるいは幼児期から発症し、世界中で小児の15%~20%、成人の1%~3%が罹患していると言われています。1970年代以降、発症率は2~3倍に増加しています。アトピー性皮膚炎は、喘息や花粉症を患っている人や、喘息や花粉症を患っている家族がいる人に発症しやすいと言われています。
- ※4OX40について
- OX40は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーの一員である共刺激分子で、アポトーシスを抑制することによるT細胞の増殖と生存の維持およびメモリーT細胞の形成に重要な役割を果たしています。抗原によって活性化されたエフェクターT細胞(CD4陽性)の表面にはOX40が一過性に発現し、アトピー性皮膚炎をはじめとする自己免疫疾患の病変部位には、OX40を発現したエフェクターT細胞が存在していることが報告されています。
- ※5協和キリンについて
- 協和キリンは、Life-changingな価値をもつ新しい医薬品を創出し、患者さんへ届けることに真摯に取り組んでいます。70年以上の歴史をもつ日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、腎、がん、免疫・アレルギー、中枢神経などの様々な治療領域において、抗体医薬品の研究をはじめ最先端の科学・技術の応用に邁進し、患者さんと社会のニーズに応えます。4つの地域-日本、アジア/オセアニア、北米、EMEA-にわたり、協和キリンは共通の価値観であるコミットメント・トゥ・ライフ、イノベーション、チームワーク/和・輪、インテグリティのもと、病気と向き合う人々に笑顔をもたらすために尽力します。協和キリンの事業について、詳しくはこちらのサイトでご覧ください。
https://www.kyowakirin.co.jp
- ※6アムジェンについて
- アムジェン社は、重篤な疾患に苦しむ患者さんのために、生物学的に革新的な治療を探索・開発・製造・提供する可能性を切り拓いていきます。このアプローチは、疾患の複雑性の解明と人体の生物学上の基本を理解するために、先進的なヒト遺伝学などの手法を活用することから始まります。
アムジェン社は、アンメット・メディカル・ニーズが大きい領域に焦点を絞り、生物製剤の製造に関する専門知識を活用して医療効果の向上と人々の生活に画期的な改善をもたらすソリューションを追求しています。1980年に創業したバイオテクノロジーのパイオニアであるアムジェン社は、世界最大の独立バイオテクノロジー企業に成長し、世界中の多くの患者さんに貢献しており、革新的な可能性が期待されるパイプラインを開発しています。
詳細についてはwww.amgen.comをご覧になるか、www.twitter.com/amgenをフォローしてください。
- ※7その他特記事項
- 協和キリンとアムジェンは、この「KHK4083」の共同開発・販売に関して関係当局による認可等が必要となる場合は、当該認可等諸条件が整い次第、実行する予定です。