社会との共有価値自然を愛するフィロソフィーを次世代に。「高崎工場」の環境保全への取り組み

協和キリン株式会社の医薬品製造拠点の一つである生産本部「高崎工場」と「バイオ生産技術研究所」。ここは文字どおり、協和キリンが製造するさまざまな「バイオ医薬品」の国内最大級の製造、生産研究拠点である。

高崎インターチェンジからすぐ、広大な敷地を有する本工場は、1990年の竣工以来、地域の人々との連携を大切にしながら、環境保全活動と社会貢献活動に力を入れてきた。2018年には、環境保全や創造に寄与した団体に贈られる「群馬県環境賞」を受賞している。

今回のテーマは、「高崎工場が目指す、持続可能な未来。」

高崎工場が実施するさまざまな環境保全活動や、働く人々の思い、今後の展望を通じて、協和キリンの環境哲学に迫った。

話を聞いた2名

酒井輝行(さかい てるゆき)
生産本部 高崎工場 総務部

1987年、前身となるキリンビール医薬開発研究所に入社。有機合成、腎臓グループのリーダーとして、長年医薬品の研究開発やマネジメント、生産企画業務などに広く携わる。2018年より総務部マネージャーに就任、高崎地区全体の社会貢献活動を担当する。趣味は、早朝のランニング。

岡田勉(おかだ つとむ)
生産本部 高崎工場 環境安全室

1993年キリンビール医薬開発研究所に入社。遺伝子操作、細胞培養を主に手掛け創薬探索研究に携わる。2014年より高崎工場環境安全室で物質管理を担当、2016年より高崎地区の環境管理活動の事務局を担当。各部署の環境課題の抽出やエネルギー・水使用量削減目標の策定、排水判断方針の策定業務を実施。趣味は、長年飼育する金魚の鑑賞。

医薬品製造工場としての責務

画像:左から岡田勉、酒井輝行(協和キリン株式会社)

–「高崎工場」は、どのような工場ですか。

酒井輝行(以下、酒井)「高崎工場」と隣接する「バイオ生産技術研究所」は協和キリンの主軸製品である「バイオ医薬品」の製造と生産研究の拠点です。

「バイオ医薬品」とは、人間の体内にある酵素、ホルモン、抗体などの生体分子を応用して作られる製剤のことです。協和キリンは、「高崎工場」と「宇部工場(山口県宇部市)」の2箇所に製造拠点を持っており、「高崎工場」では主に「バイオ医薬品」、「宇部工場」では「経口剤」を製造しています。

画像:高崎工場製造エリア。ここで製造された医薬品は製剤化された後、世界へと流通する。

–「高崎工場」は「バイオ医薬品」に特化した工場なのですね。皆さんが環境保全活動に積極的なのは、何か理由があるのでしょうか。

酒井医薬品の製造にはたくさんの水を必要とします。さらに、製造工程で発生した廃液などの“副産物”は、適切に処理しなくては、環境を汚染する原因になります。

「薬」は、私たちにとってなくてはならないものである一方、環境に負荷をかける「産業」としての側面があるのです。私たちは、人々の健康をつくる医薬品製造企業だからこそ、環境汚染には敏感でなくてはいけません。

高崎工場のそばには、今日も利根川が雄大な流れを湛えています。自然を守り維持していくことは、企業としての責務と考えています。

–環境への取り組みに関して、具体的に教えてください。

画像:上空から眺める高崎工場。隣に流れるのは雄大な利根川。

岡田勉(以下、岡田)私が所属する環境安全室は、環境マネジメントシステムの国際規格である「ISO14001」に則り、協和キリン「高崎地区」における環境活動を統括する「環境事務局」を担当しています。

  • 企業や工場などの活動による地球環境への負荷を最小限にするように定めた国際的な仕様書。

「高崎地区」には生産本部の高崎工場とバイオ生産技術研究所とともに、品質本部高崎品質ユニット、調達部、キリンエンジニアリング社高崎プラント部、協和キリンプラス社高崎営業所などの多くの部署が存在します。環境事務局の業務は、まず、それぞれの部署における「環境課題」を洗い出し、環境(削減)目標を策定します。そこから、目標が確実に実行されているかを確認、そして、改善点を見出し次につなげていきます。常に、PDCAを回しながら環境保全に努めているのです。

画像:環境安全室が定期的に発行する「ecoニュース」。情報提供をこまめに行うことで、社員への意識づけに注力している。

具体的な「環境課題」には、CO2の削減や、製造過程で出た廃液、廃棄物の適切な処理などがあります。特に、高崎地区は場内の排水処理場で廃液を処理し、基準を満たしたもののみが排水されるよう、徹底した管理を行っています。排水処理場で処理できない特殊な廃液の処理は外部委託しています。

オフィスにおいても、ペーパーレス化や毎月の省エネパトロールなどの活動により、省エネルギーを推進しています。また、毎月のエネルギー使用状況をニュースで地区社員へ共有したり、省エネ活動の優良職場表彰を実施したりするなど、環境への意識を高める工夫も行っています。

アイデアを形に。環境へ「プラス」のアクション

画像:「高崎水源の森づくり」(2020年は中止)

–協和キリンでは環境に「プラス」のアクションとして、さまざまなイベントを企画していますよね。

酒井地域住民の皆さまのご協力もあり、さまざまなイベントを実施する機会を頂いています。

あいにく2020年は、新型コロナウイルスの影響でほとんどの活動を休止せざるを得ない状況でしたが、2021年からは状況を見極めつつ、活動再開を前向きに検討する予定です。

高崎工場が実施する主な環境・社会貢献活動

高崎水源の森づくり

キリングループ創立100周年を記念し、社会との絆を深めるため2007年から毎年10月に実施している水源地の整備活動。協和キリンや関連企業の社員が家族ぐるみで参加する。水源地の除伐、下草刈り作業がメインだが、作業と並行して実施される「工作教室」や「花植え」など自然と触れ合うように趣向を凝らした催しが子ども達にも人気のイベントだ。作業後のバーベキューも楽しみの一つ。参加者は懇親を深めている。

観音山清掃奉仕活動

画像:「観音山清掃奉仕活動」(2020年は中止)

毎年4月に高崎市のボーイスカウト、ガールスカウト両高崎地区協議会が主催する活動に協賛し、高崎市の烏川(からすがわ)河川敷から「観音山」へ通じる歩行路を清掃している。「観音山」には高崎市の観光名所の1つ「白衣観音像」があり、桜の名所でもある。

卓球教室

協和キリン卓球部と高崎市卓球協会とが連携し、2012年から中学生を対象に実施している。協和キリン卓球部は1974年に創部され、直近では2020年度日本卓球リーグプレーオフ JTTLファイナル4(内閣総理大臣杯)にて3位に入賞する強豪チーム。子ども達にとって、日本を代表する有名選手から直接の指導を受けられる貴重な機会だ。

画像:卓球教室の様子

サッカー教室

高崎市少年サッカー協会と連携し、小学3、4年生を対象にサッカー教室を2005年から実施している。当時はまだ敷地内に建屋が少なく、簡易的なサッカー場をつくれるほどの空き地があったことがきっかけで、Jリーグのプロ選手やコーチが指導にあたっている。

バイオアドベンチャー活動

地域の小学生(5年生)を対象に、顕微鏡を用いた実験授業を定期的に実施。カビや乳酸菌など身近なものをテーマとし、科学への興味関心を育むことを目的としている。

–活動のアイデアはどこから出てくるのですか?

岡田高崎市環境部や町内会などとのつながりを大切にして、訪問したり、逆に来ていただいたり、またアイデアを共有したりするなど、気軽に相談し合える関係性づくりを意識しています。

例えば、「観音山清掃活動」。この活動は、子どもがボーイスカウトに所属している社員から「うちでも(協働して)何かできることはないか」と相談を受けたことが始まりでした。その他のイベントに関しても、お互いに相談したり、されたりする中で現在の形になりました。

イベントに参加した方々から、「すごく良い体験になった」「楽しかった」などたくさんの声を頂けることが、私自身のモチベーションにも繋がっていますね。

つながりを大切に、フィロソフィーを次世代へ

画像:長年の環境・社会貢献活動が認められ、群馬県環境賞を受賞。

–今後の活動に関して、どのような展望を持っていますか?

酒井2020年はコロナ禍で、イベント中止が相次いだ上に、これまでにないような経験をたくさんしました。

例えば、学校の長期間の休校。子どもの預け先がなく、出社が困難になる社員が多くいました。リモートワークが困難な職種であることから、対応策として、近隣の保育施設と連携して会議室に臨時の「託児所」を開設、多くの社員が利用しました。

社内ではこれを機に、いつでも安心して働ける体制を整えようという動きが強まっています。現在、正式な企業内託児所の早期の新設を目指し、行政担当者の方や子育て世代の皆さんから意見をもらいながら議論を重ねている状況です。

コロナ禍において、企業活動そのものが行政や地域の方々の理解、協力があって成り立っていることを改めて実感しました。これからも、皆さんとの横のつながりを大切にしながら、自然を愛する協和キリンのフィロソフィーを伝える活動が継続できたらと考えています。

–今後も積極的な活動を期待しています。ありがとうございました。

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