People & Culture 【解説記事】ルッキズムとは?SDGsとの関係や解消するためにできることとは
ルッキズムとは、外見に対する差別や偏見のことだ。1970年頃、アメリカを中心として始まった肥満差別の廃絶を訴えるファット・アクセプタンス運動のなかで生まれた言葉とされている。
近年、日本でも問題視されるようになってきたルッキズムは、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)とも深い関係がある。今回は、ルッキズムの概要や歴史、見直しの動きなどについて紹介する。
ルッキズムとは?SDGsと関係あるの?
ルッキズムについて正しく把握するために、以下のポイントを解説する。
- ルッキズムの概要
- SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)との関係
まずは、基本的なところからルッキズムの問題について知っていこう。
ルッキズムの概要
ルッキズムとは、外見のみを重視して人を判断したり、容貌や容姿を理由に差別的な扱いをしたりすることだ。外見を意味する「Looks」と、主義を意味する「ism」を組み合わせた言葉で、日本語では「外見至上主義」と訳されることが多い。
痩せていることを美しいと捉え、太っている人は雑に扱うといった風潮は、ルッキズムの代表例といえるだろう。
当初は海外を中心に問題視されていたルッキズムだが、最近では日本にも浸透しており、2022年には新語・流行語大賞にもノミネートされた。
ルッキズムとSDGsとの関係
ルッキズムは、SDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」と深く関係している。
SDGsの10番目の目標は、世界中からあらゆる不平等を減らすことだ。具体的には、年齢・性別・国籍などいかなる理由による差別があってはならないとしている。
そのため、外見で人を判断したり差別したりするルッキズムは、SDGsの目標を達成するためには克服すべき課題なのだ。
また、ルッキズムは、性差別や人種差別などとも切り離せない問題だ。白人の特徴を備える外見が、それ以外の人種よりも魅力的とみなされることなども、ルッキズムの一環である。
ルッキズムは、さまざまな差別に発展しうるリスクをはらんでいるといえるだろう。
SDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」については、以下の記事で詳しく紹介している。
【持続可能な開発目標】SDGs10「人や国の不平等をなくそう」とは
ルッキズムの歴史
ルッキズムの歴史は長く、始まりは1970年代のアメリカにまで遡る。肥満を理由とした差別に抗議する運動「ファット・アクセプタンス運動」で、ルッキズムという表現が使われたことが始まりとされている。
その後、外見を理由とする差別などをなくすための運動や研究・メディアなどで、広く使われるようになった。ただし、日本で使われるようになったのは、比較的最近のことだ。
2018年発行の広辞苑には採用されておらず、2021年の三省堂国語辞典に新語として収録されたことから、ここ数年で広く認知され始めた言葉といえるだろう。
ルッキズムが起きる理由とは
ルッキズムが起きる理由としては、メディアによる影響が大きいとされる。
例えば、痩せている女優やモデルだけが美しく価値のあるものとして取り上げられることで、多くの視聴者がダイエットをしなければならないと考えがちだ。
また、SNSの普及もルッキズムに拍車をかけている。一般人であってもSNSで気軽に情報などを発信でき、「いいね」の数やフォロワー数・リツイートによって反響が可視化されることから、外見の良いユーザーに対する賞賛の声を目にする機会が多いためだ。
見た目の良い人に「いいね」やフォロワーなどが集まる状況を目の当たりにして、落ち込む若者もいる。その結果、過度なダイエットに及んだり、美容整形を選んだりする例もあり、深刻な課題といえるだろう。
人間は外見だけで判断する傾向があり、多数派の意見に流されやすい性質であることも、ルッキズムを加速させる一因といえるだろう。
さらに、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)もルッキズムの一因だ。アンコンシャス・バイアスとは、メディアや周囲の環境による無意識の思い込みである。
社会に根付いている?日常で見られるルッキズムとは
前章でお伝えしたとおり、ルッキズムは無意識のうちに形成され、社会に根付いている。ここでは、日常の中に垣間見えるルッキズムの例を取り上げよう。
人の外見への安易な口出し
他者の外見に対して、安易に意見したり要望を述べたりすることは、ルッキズムに該当する。
例としては、知り合いや家族・友人などの体型や容姿について、「痩せたほうが良い」「痩せてほしい」などと、安易に口出ししたり意見したりする風潮が挙げられる。
また、女性スポーツ選手について、競技内容ではなく見た目の美しさや特徴ばかりが取り上げられることもルッキズムの表れだ。
このように、日々の何気ない言動や報道の中に、当たり前のように紛れ込んでいるのだ。
企業の「顔採用」
企業が採用活動をする際に、容姿端麗な人が有利になることがある、いわゆる「顔採用」もルッキズムに当たる。
具体的には、外見についても加点の対象としたり、事前に見た目に関する情報の提供を求めたり、といった扱いが挙げられる。
日本では、求職者が応募時に企業に提出する履歴書には、顔写真を貼り付けなければならないことが多い。最近は廃止している企業も増えつつあるが、求職者の顔写真が選考に影響を与えることはルッキズムの一種といえる。
ルッキズムを見直そうとする動きの例
社会に根付くルッキズムの問題に対し、このような風潮を見直そうとする動きが、近年では活発化している。ここでは、ミスコンテストの廃止やお笑いの方向性の見直し、プラスサイズモデルといった代表的な例について見てみよう。
ミスコンテストの廃止が相次いでいる
ルッキズムを見直す動きとして、民間団体や大学などで実施されていた、女性が容姿の美しさを競う「ミスコンテスト」を廃止する動きが相次いで見られている。
スリムなプロポーションや容貌の美しさを競うコンテストは、外見のみを重視する考え方へとつながってしまうからだ。
また、ミスコンテスト自体は続けるものの、水着審査を取りやめるケースや、性別を不問にしてSDGsに関する社会課題への発信力を審査基準に加えるケースなども出てきている。
外見を蔑視するお笑いが見直されつつある
お笑い業界においても、外見を蔑視することで笑いを取るスタイルが見直されつつある。
ルッキズムについての理解が深まったことで、他者の容姿を軽々しく批評することや自分の容姿を自虐することに反感を覚える人が増えているからだ。
笑いを届ける側、それを受け取る側の双方において、外見に対する差別や偏見について考え直す機会となっているようだ。
プラスサイズモデルが活躍するようになっている
モデル業界においても、ルッキズムを見直そうとする動きがある。それは、プラスサイズモデルの活躍だ。
プラスサイズモデルとは、身長や体重が平均より大きいモデルのことだ。ぽっちゃりした体型のプラスサイズモデルが活躍し、ポジティブな笑顔で雑誌やSNS上を飾ることで、「痩せていることが良いこと」という風潮を変化させている。
プラスサイズモデルの活躍をポジティブにとらえる声が多いことから、ありのままの姿を受け入れて生きていきたいというニーズが高まっていることが伺えるだろう。
ルッキズムを解消するためにできること
ルッキズムを解消するために、私たちができることがある。それは、自分に対してありのままの容姿や体形を受け入れ、「こういう外見であるべき」という考え方にとらわれないことだ。
そして、他者に対しても、見た目の多様性を受け入れ寛容であることが重要といえる。違いを理解して尊重することを心がければ、ルッキズムに囚われずに、自由な見方や評価が可能になる。
差別について、もう少しじっくり考えてみたいという場合は、以下の記事もあわせて読んでみよう。
まとめ
見た目だけで他者を評価したり、差別的な取り扱いをしたりするルッキズムは、SDGsの目標達成のためにも、解消すべき問題だ。
メディアや周囲の言動に振り回されることなく、自分も他者に対しても、ありのままを受け入れるよう心掛けることは、容姿のみに囚われない社会づくりにつながる。