ペイシェント食を通じて学ぶ患者さんのQOL、協和キリンのRDD2023

世界には6000をこえる希少・難治性疾患があり、3億人以上の患者さんがいると推定されている※1。治療法や薬の研究開発がなかなか進まない疾患も少なくない。そこで毎年、2月末の「世界希少・難治性疾患※2の日(Rare Disease Day:RDD)」には、希少・難治性疾患の患者さんのQOL(生活の質)向上につなげるため、世界中で多くの啓発活動が行われている。

協和キリンでも毎年2月のRDD月間に従業員一人ひとりが患者さんの気持ちに寄り添って業務を推進できるよう、さまざまな取り組みをおこなってきた。2022年には「やってみた」をテーマに、患者さんが療養のために行う体操や食事を実践し、患者さんの状況に思いを巡らせた。2023年も「やってみる」ことを重視しながら、さまざまな活動を実施。特に力を入れたのは「食堂で体感しよう、RDD」という取り組みで、全国の食堂で「食」を通じ、患者さんや疾患について知るための時間を持った。東京リサーチパークでの様子を中心に、レポートする。

[関連: 今年もグローバルで多彩な取り組みを実施 「RDD2022」日本編]

  1. ※1参照元:European Journal of Human Genetics (2020) 28:165–173
  2. ※2希少・難治性疾患とは、患者数が少ないことや、病気のメカニズムが複雑なことなどから、治療・創薬の研究が進まない疾患を指す。

根底にあるのは「より多くの従業員に伝えたい」という思い

画像:RDD当日の様子

「食堂で体感しよう、RDD」のメインイベントとして企画されたのが、病気等の患者さんの食事を参考とした療養食を実際に食べてみることだ。RDD月間中に、東京都、群馬県、静岡県、山口県にある研究所、工場で、特別メニューが提供されることになった。

今回、取り組みの場を食堂にした背景には、ペイシェントアドボカシー(PA)※3担当の熱い思いがあった。「昨年は全従業員を対象に社内SNSを用いてイベントを実施したのですが、『業務の使命を再認識できた』といった前向きな声が多かった一方で、参加者が一部の従業員にとどまっていました。その理由の一つは時間的な制約でしたので、今年は特別な対応なく気軽に参加してもらえるよう、研究所や工場の昼食の場を活用することにしました」(PA担当の豊泉夏紀)

  1. ※3ペイシェントアドボカシー活動(PA活動)とは、患者および医師コミュニティとの対話と連携により、社会の疾患に関する正しい理解を促進し、さらに事業のバリューチェーン全体を通じて未充足の医療ニーズの解決に取り組み、病気と向き合う人々に笑顔をもたらす活動。協和キリンにおいて「PA(ピーエー)活動」と呼ばれている。
画像:東京リサーチパークの特別メニュー「イタリアンやきそば(左)」と「きのこだらけの腸活カレー(右)」

今回は、各地の担当者がPA担当と連携しながら活動した。東京リサーチパークでは、よりたくさんの従業員に興味を持ってもらえるよう、事前・事後の広報活動に注力。所内にイベントポスターを貼るのはもちろんのこと、協和キリンが患者さん向けに発行している啓発資料を従業員が手に取りやすいように展示したり、RDDについて知ってもらう動画をエントランスで放映したりした。

画像:所内に掲示した、取り組みの意図を伝えるポスター
画像:患者さん向けの疾患啓発資材

RDD当日の2月28日、東京リサーチパークの社員食堂のメニューに特別メニューが並ぶと、多くの従業員が皿を手に取り、おいしく味わった。イタリアンやきそばは「カフェの創作料理として出てきそうな感じ。トマトの酸味がさわやかで、とてもおいしかったです。おいしいと、制限を制限と感じず、笑顔で続けられそうです。おいしさも健康維持への力になるのだと思いました」(東京リサーチパーク勤務・安藤宗稔)、「モロヘイヤや海藻が使われていて、血糖値スパイクをゆるやかにするための工夫が感じられました。面白い味の組み合わせで、家族とも一緒に食べて盛り上がりたかったので、レシピの写真を撮って帰りました」(東京リサーチパーク勤務・武地佳菜)といった声が聞かれた。当日の料理を担当したエームサービス株式会社の星野大智さんは「このイベントを通じRDDを初めて知りました。とても良い経験になりました」と話していた。

また、今回初の試みとして、特別メニューの感想やRDD関連のコメントを社内SNSに投稿するとRDD Japanのオリジナルグッズがもらえるキャンペーンも開催。各事業場の昼食の様子やRDDの情報展示が投稿され、食堂がない拠点の従業員にも、実際に体験した人たちの気づきが共有された。

画像:RDD公式ロゴ入り今治ハンドタオルと、キービジュアルがあしらわれたクリアファイル

RDD Japanのブースを設置

画像:RDD Japanと協和キリンの担当者の集合写真(東京リサーチパークにて)

食堂でのイベントに先立ち、2月22日には東京リサーチパークで「RDD Japan別ウィンドウで開きます」によるブース出展があった。RDD Japan開催事務局を務めるNPO法人ASridのメンバーは希少・難治性疾患の専門家ばかり。直接話せる機会とあって従業員の関心が高く、RDDとしての取り組みの意義やRDD Japanが行われるようになった経緯、自分たちにできることなど、さまざまな質問が交わされて、にぎわった。

画像:質問に答えている、ASrid理事長の西村由希子さん

RDD Japanのブースでは、質感やデザインにこだわったトートバッグやぬいぐるみなどの寄付グッズも展示された。ブースを訪れた栗原佳奈は「希少・難治性疾患を『知る』という意味で、改めて良い機会をいただけました。寄付グッズを通じて、希少・難治性疾患の広報活動に関わる機会をいただけたのも、良かったです。イベントはきっかけ。そこから継続的に関わり続けることも大切だと思っています」と笑顔で話していた。小川祐里子は「お話しさせていただいた時に、一人でも多くの人に活動を広め、理解者を増やそうという、志の高さを感じました」と、感銘を受けた様子だった。高岡茂樹は「寄付グッズを通じて子どもにもRDDの説明をする機会につながりました。ASridさんの患者ネットワークによる患者数の把握やアンメット・メディカルニーズ調査は、当社が取り組んでいる、研究初期に患者さんの声を取り入れる活動を行う上でも非常に参考になりました」と後日、教えてくれた。

画像:RDD Japanの寄付グッズの1つである、くまのぬいぐるみ

今回の学びを、日々の仕事に生かしたい

今年のRDDは昨年の活動内容をさらに充実させ、食を通じて多くの従業員が希少・難治性疾患の患者さんについて知り、思いをはせる時間を持つことができた。PA担当も「昨年とは違う形でイベントを実施することで、より多くの方にRDDを知り、興味を持ち、そこから疾患や患者さんに思いを馳せる時間へとつなげていただくことができ、とても嬉しく感じました。この思いや共感をさらに深めていただけるよう、今後のイベントを検討していきたいと思っています 」(豊泉)と手ごたえを感じた様子だった。従業員それぞれが今年のRDDで得た学びを、仕事に生かしていくことだろう。

  • 当社従業員の所属は取材当時のものです。

協和キリンの「ペイシェント」についてもっと知る

トップへ戻る