社会との共有価値 【解説記事】アドボカシーの意味や具体的な活動内容をわかりやすく解説

アドボカシーとは、「擁護」「支持」を意味し、個人の権利をなんらかの理由で行使できない人に代わり、実現を支援する仕組みのことだ。さまざまな分野において、以前から世界的に行われている活動である。

国で起こっている問題や自分たちではどうすることもできない現状に対して、改革を行うためにはアドボカシーが欠かせないのである。

本記事ではアドボカシーの意味や具体的に活動内容について詳しく解説していく。

アドボカシーが広まったきっかけ

アドボカシーが日本で認知されるきっかけとなったのは「ホワイトバンド活動」である。2000年の国連サミットでは「貧困の撲滅」「飢餓の解決」などの課題について議論され、「国連ミレミアム宣言」という2015年までに貧困や飢餓を撲滅するという国際的な目標が掲げられた。

その目標を達成するために、世界中でさまざまなキャンペーンが行われた。「ホワイトバンド活動」とは、2005年に行われた世界の貧困をなくそうというキャンペーンであり、その際にシンボルとなったのが、手首につけていたホワイトバンドである。

日本では「ほっとけない世界のまずしさ」というキャンペーン名がつけられ、芸能人やスポーツ選手などがホワイトバンドを広め、貧困の現状を変えるように呼びかけた。

当時の日本人の多くは、この活動がアドボカシーであることを理解してはいなかった。しかし、キャンペーン自体は多くの注目を集めたため、アドボカシーが周知されるきっかけになったのは間違いないといえるだろう。

現在、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)や人権問題などに対して意識が高まっているのも、こういった活動がひとつのきっかけになっていると考えられる。

アドボカシーの意味とは?

アドボカシーの活動内容自体はホワイトバンド活動をきっかけとして広まっていった。しかし、アドボカシーの意味について正しく理解している人は少ない。

アドボカシーの活動は貧困問題のみをターゲットにしているわけではない。ここでは、アドボカシーの意味について紹介し、その活動内容を詳しく解説していく。

アドボカシーは「擁護」「支持」を意味する言葉

アドボカシーとは「擁護」「支持」を意味する言葉であり、特定の問題に関して社会的弱者の権利を保護したり、主張を代弁したりする際に使用される。

貧困問題や差別問題などで苦境に立たされている人は少なくない。しかし、問題の当事者だけが声を上げたとしても解決にはつながりづらいのが現状だ。そもそも当事者だけでは問題を訴えることができる範囲が限られている。

問題を知っている人たちが思いを代弁すれば、より多くの人たちに問題に対して知ってもらうことが可能だ。

アドボカシーは、患者 や高齢者、障害者などの自分自身では意見を伝えづらい人の意思や権利を代理人が伝えるといった意味でも使われる。

アドボカシーの活動の幅は非常に広い。広義の意味では「権利や主張を代弁すること」と捉えておけば問題ないだろう。街頭演説やSNSなどで特定の問題に対して理解を求めている人は少なくない。これらもすべてアドボカシーの一環と考えられる。

アドボカシーは提言活動を指す場合もある

アドボカシーは提言活動を意味する場合もある。世界が抱えている問題を解決するためには、個人の意思を変えるだけでは不十分だ。社会的弱者を守るための法律を制定したり、現行の法律を改正したりすることが時には必要となる。

問題に対して訴えを起こすだけでは、法律や制度が変わったり新しくできたりする可能性は低い。そのため、「政策提言」として、抱えている問題の現状と、どのような状態になるのが理想かを伝える必要がある。そのために行われる調査などの一連の活動もアドボカシーと呼ばれている。

これは、政府に直接訴えかけるだけでなく、他国の人々に対して問題を発信し、意識を深めてもらうことも目的だ。

実際にアドボカシーによって、ドミニカ共和国では早すぎる結婚を禁止する法律が制定された。ケニアでは生理用品の支給が教育法に追加され、女子生徒がより快適に学業に専念できるようになった。アドボカシーによって問題が好転している事例は非常に多い。

故にアドボカシーは単に問題を発信するだけではなく、変化をもたらしている意義のある活動といえるだろう。

福祉の現場におけるアドボカシー

福祉の現場において、アドボカシーは仕組みを意味している。高齢者や児童、心身障害者は自分で意見を伝えることが難しいことも多い。そのため、問題を早期発見できる仕組みを整える必要がある。

具体的には、高齢者や児童などの状況から問題点やニーズを見つけ出し、本人の意思に応じた適切なサービスが届くようにする。また、本人の権利が保護されているか、侵害されていないかを見つけ、解決する仕組みを構築しなければならない。

現状、福祉の現場においてアドボカシーが完全に機能しているとはいえない。日本でも老人ホームで虐待といった問題が起こっているように、弱者の権利は侵害されやすい傾向にある。

しかし、アドボカシー活動を通して弱者を守る仕組みを整えることができれば、人権保護はもちろん、すべての人が豊かな生活を送ることを実現できるだろう。

アドボカシーとSDGsの関連性

アドボカシーとSDGsは深く関係している。特に障害のある人たちや高齢者、児童など、社会的弱者が関係する社会課題はテーマになりやすい。

たとえば、SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」などは、社会的弱者を救うことも目的のひとつだ。

アドボカシー活動を実践することは、SDGsの達成を目指す上でも欠かせないといえるだろう。

アドボカシーを実践している団体

アドボカシーを実践している団体は数多く存在する。ここでは、代表的な団体について紹介していこう。

日本ユニセフ協会

日本ユニセフ協会は、アドボカシー活動を主要な活動のひとつとして展開している。特に力を入れているのは子どもの権利の実現だ。子どもの兵士根絶を目指すキャンペーンや人身売買根絶を目指すキャンペーンなど、取り組みは多岐に渡り、政策提言も行っている。

近年はインターネット上でも子ども保護やスポーツにおける子どもの権利推進を行っており、活動の幅をさらに広げている。

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、教育の問題に取り組んでいる「教育協力NGOネットワーク」に加盟している団体である。国際機関と協力して、子どもの権利啓発やロビー活動に力を入れている。

貧困問題について考える機会を増やすために、親子で参加できるイベントや活動報告会を実施しているのも特徴だ。

ワールド・ビジョン・ジャパン

ワールド・ビジョン・ジャパン  とはキリスト教精神に基づいて活動を行っている団体であり、子どもたちの健やかな成長の実現を目的に活動している。心身ともに健やかに成長するのはもちろん、良好な人間関係の構築や社会的公平を受けられることも重視している。

政府や国際機関に対する提言活動を行っているのも特徴だ。日本の組織ではあるものの、活動範囲は世界中に渡っており、2022年には37ヶ国で185事業を展開している。

まとめ

アドボカシーに対して理解を示すのは、国際社会で生きている私たちにとって欠かせないことである。アドボカシー活動が法律を変えたケースもあり、多くの子どもたちや障害者、病気を持つ人々など、社会的弱者を救っている側面があることを理解しなくてはいけない。

実際に患者団体と連携しアドボカシー活動を行っている協和キリン北米担当者へのインタビューを公開している。

多くの人がアドボカシー活動に対する意識を深め、自分にできる範囲で取り組みを続けていくことは、公平・公正な社会を目指す上で重要といえるだろう 。

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