社会との共有価値 【解説記事】エシカル(倫理的)消費の取り組み事例8選を解説

日常生活の中で、「エシカル消費」という言葉を耳にしたことはないだろうか。簡単にいえば、消費者である私たちも、消費行動に責任をもつというのがエシカル消費の考え方だ。

なぜエシカル消費が必要なのか、今回は、エシカル消費の概要と事例について取り上げる。

エシカル消費とは“倫理的消費”を表す

エシカル(Ethical)消費とは、倫理的消費ともいわれる。人、社会、環境、地域、動物福祉に貢献する消費のあり方で、社会的課題や課題解決に取り組む事業者を応援する消費の選択だ。安心・安全、品質、価格による選択に加えて、商品を選択するときの第4の尺度といわれる。

近年、エシカル消費が意識されるようになったのは、手に取った「商品の裏側」、つまり、普段目にすることのない生産や廃棄のあり方を意識し、消費行動を通して社会的課題に取り組もうという考えが広まったからだ。世界中でつくられた商品やサービスを利用する今、「商品の裏側」を詳しく知ることは難しいのではないだろうか。

エシカル消費と関連が深いのが、社会の持続可能性だ。持続可能な社会を目指す国際的目標のSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)にもつながっている。

エシカル消費と特に関連が深いのが、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」である。目標12では、持続可能な生産、持続可能な消費形態の確保が盛り込まれている。詳しい内容は以下の記事で紹介している。

エシカル消費の4つの目的

エシカル消費は、具体的に何を目的にしているのか。4つの観点から説明する。

人・社会への配慮

身の回りの商品は、原材料の生産・加工から実際に消費者の手に届くまでにいくつかの過程があり、その過程には多くの人が携わっている。

ここで問題となるのは、原材料の生産の多くを担う開発途上国の現状だ。

消費者が少しでも安い商品を手に入れたい、企業がコストを落として商品を提供したいという考えが優位になるほど、発展途上国の働き手を苦しめる。

原材料の生産者の多くが十分な賃金を手に入れられず、貧困の加速を助長するためだ。

消費者には、人や社会への配慮がなされた商品を選ぶ権利がある。公正な取引で生産された商品を選ぶ、困っている人たちの生活を支援する取り組みを行う企業の商品を購入するなど、人や社会へ配慮することがエシカル消費の目的のひとつだ。

地域への配慮

日本では、多様な地形や気候を生かした特産物が作られ、地域社会を育んできた。しかし、インターネットの登場で、人々が自由にものを購入できるようになり、従来の地域社会が崩れてきている。

地域を応援し活性化させる地域振興のためには、地元を応援し、地元の商品を購入することも重要だ。地域を活性化させるという、地域への配慮もエシカル消費の目的のひとつである。

環境への配慮

私たちの生活が豊かになることと引き換えに、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」の課題を抱えている。これらの課題は、地球温暖化、海洋汚染、生態系破壊、異常気象、などの地球全体の環境問題を引き起こしている。

環境というものは、私たちの生活とは切り離せないものだ。多種多様な生物との共存、エネルギー資源、食料など、環境は私たちの生活に深く根付いている。

大量生産、大量消費、大量廃棄の問題から目を背けず、環境にやさしい商品を選択する、環境に負荷のかからない消費をする、という環境への配慮もエシカル消費の目的のひとつだ。

動物福祉

畜産動物が食肉になるまでにどのような過程を進んでいるのか、関心をもつ人は少ないのではないだろうか。

消費者が日常的に安い食肉を求めるようになったことから、生産者がコストを引き下げるために効率を最優先にする生産が長らく行われてきた。

家畜は、効率最優先で、狭い場所で飼育されていることもある。家畜以外にも、昨今減りつつあるが、研究などのために実験動物が使われているケースはある。

動物福祉(アニマル・ウェルフェア)は、動物の苦痛を少しでも軽減するために生まれた。人が動物に対して与える苦しみやストレスを最小限に抑えようとする考え方だ。動物愛護とは異なり、人に対する動物の利用を認めつつも、動物の感じる苦痛に配慮しようというものである。

動物福祉の広がりにより、実験動物は置き換え、数の削減、苦痛をなくす3R、畜産動物では欧米を中心に行動を大きく制限せず苦しまない方法の研究や導入が進んでいる。

動物福祉を考えた取り組みを行っている生産者や加工者から購入することも、エシカル消費の目的のひとつだ。

日本におけるエシカル消費の現状

日本ではエシカル消費はどのように捉えられているのか、消費者庁の「令和元年度エシカル消費に関する消費者意識調査報告書」より現状を解説していく。

出典:エシカル消費に関する意識調査|消費者庁別ウィンドウで開きます

いまだ認知度は低い

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エシカル消費に関連する言葉の認知状況
エコ 倫理的消費(エシカル消費) エシカル
2019年度調査 72.6% 12.2% 8.8%
2016年度調査 50.9% 6.0% 4.4%

引用:エシカル消費に関する意識調査|消費者庁別ウィンドウで開きます

エシカル消費に関連する言葉として、「エコ」の認知度は7割を超えており認知度が高い。一方で、「エシカル」や「倫理的消費(エシカル消費)」を認知している人の数はまだまだ少ない。

調査によると、「エシカル」を知っている人の割合は全体の8.8%、「エシカル消費」を知っている人は全体の12.2%にとどまった。約10人に1人の認知しか得られていない状況だ。

とはいえ、直近の調査と比較すると認知度は伸びてきている。2016年度調査と比較すると、認知度は約2倍に上昇した。

「これからの時代に必要」と考えられている

それでは、エシカル消費に対する一般のイメージはどうだろうか。調査によると、「これからの時代に必要」と答えた人は半数を超える51.8%に上った。2016年度調査と比較すると22.5%も上昇しており、必要性を感じている人が増えていることがわかる。

エシカル消費の関心度に関しては、全体の59.1%が「興味がある」と回答している。属性で見ると、女性の関心が高く、特に50代や60代において関心度が高い傾向にある。

最も実践されているのは「マイバッグの利用」

エシカル消費を実践している人でもっとも多い行動が、全体の86.8%に上る「マイバック・マイ箸・マイカップの利用」だ。ほかにも、省エネや食品ロスの削減、リサイクルに関する取り組みをしている割合も高かった。

一方で、実践内容として少なかったのは、エシカル消費に関連する取り組みを行っている団体・企業への支援や投資、エシカルファッションなどだ。

エシカル消費に関連して取り組みを行っている人も多く見られたが、一方で行動内容には偏りもあることがわかる。

エシカル消費の事例

エシカル消費とは何か、その目的とともに紹介してきた。それでは、消費者はどのような消費を心がければ良いのだろうか。最後に、エシカル消費の事例を8つ紹介する。

認証ラベル・マークのついた商品を購入

まず、エシカル消費を意識しやすいのが、認証ラベルや認証マークだ。たとえば、以下のようなものがある。

  • エコマーク:生産から廃棄まで環境負荷が少なく環境保全に役立つ商品
  • MSC認証:水産資源や環境に配慮して行われる漁業の水産物
  • 国際フェアトレード認証:生産者の自立や環境保護のため適正な値段で取引された商品
  • GOTS:コットンや麻などオーガニック原料から、環境や社会に配慮して作られた繊維商品
  • RSPO認証:熱帯林の環境と生物多様性、生産者に配慮した商品

いずれも、認証ラベルや認証マークは、第三者機関により認められた一定の基準を満たしたものを指す。商品パッケージや商品ラベルなどで確認できるので、商品購入時には、認証ラベルやマークがあるか意識してみると良い。

フェアトレード商品を購入

フェアトレードとは、生産者から適正な値段で購入することだ。

立場が弱く低賃金で働かざるを得なかった開発途上国の生産者から継続して適正な価格で取引を行うことで、開発途上国の労働者の経済状況の向上や自立を図る取り組みである。

フェアトレード商品かどうかは、国際フェアトレード認証が行われているか、フェアトレード商品であることが公表されているかで判断可能だ。世界中の多くの人が十分な暮らしができるようにするためにも、できるだけフェアトレード商品を選択すると良い。

フェアトレードについては、以下の記事で詳しく紹介している。

エシカルファッションをする

エシカルファッションに切り替えたり、エシカルファッションを取り入れたりする方法もある。エシカルファッションとは、環境に配慮したファッションのことだ。

オーガニックコットンが使われた衣服、リサイクル素材でできた衣服、などがエシカルファッションに分類される。

前述したGOTSのような認証マークも参考になるので、購入時に、認証マークがついていないか、エシカルファッションといえる取り組みを行っているかチェックしてみると良い。

エシカルファッションのポイントや事例については、以下の記事で詳しく取り上げている。

復興支援商品を購入する

被災地で作られた復興支援商品を購入することは、被災地を応援することにつながる。復興支援商品の販売で集まったお金は、歴史や文化、伝統を守ることに使われるほか、新たな産業の育成や雇用を増やすきっかけにもなるだろう

商品を購入する際は、復興支援商品にも注目してみると良い。

食品ロスの削減

食品ロスは家庭から生まれるものと、事業活動から生まれるものに分けられる。

家庭からのゴミを抑えて有効活用することも大切な取り組みだが、事業系のゴミを抑制するためにも一人ひとりが消費行動を意識したいところだ。例えば、外食で食べられる分だけ注文すること、賞味期限の近い商品から購入することなどがエシカル消費となる。

食品ロスを抑制するためのエシカル消費を意識すれば、食料資源の有効活用になるだけでなく、地球温暖化の抑制にもつながるだろう。

地産地消を意識する

地元で生産されたものを地元で消費する地産地消も、エシカル消費のひとつだ。

地産地消は、生産者にとって消費者のニーズが捉えやすいことから効率的な生産ができるほか、直接販売により規格外品の販売がしやすくなる。

消費者も、新鮮な食物を手に入れられるほか、伝統的な食文化について理解を深めるきっかけとなるだろう。

また、生産と消費をつなぐ人にも、食育の推進、消費者の確保、地元食材の流通経費の負担軽減などメリットが多い。

地産地消は、生産者、消費者、生産と消費をつなぐ人たち、それぞれに利益のある前向きな取り組みだ。

再生可能エネルギーを使用する

再生可能エネルギーとは、非化石エネルギーであり、永続的に利用できるものをいう。発電によって温室効果ガスを排出しない、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどによるものが代表的だ。

日本において、再生可能エネルギーの発電比率は高くないものの、将来的にその比率を高めようとする動きが高まってきている。再生可能エネルギーを選択することもエシカル消費のひとつだ。

日本は諸外国からの石油や天然ガスなどによるエネルギー供給に依存していることから、再生可能エネルギーの活用比率が高まれば、エネルギー自給力の改善にも貢献できる。

協和キリンも再生可能エネルギーの積極活用を進めている。詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

日々の生活でちょっとした工夫を

日常の、無駄に消費しないという心がけもエシカル消費につながる。たとえば、以下のような行動を意識してみると良いだろう。

  • ペットボトルや缶を購入するのではなくマイボトルを持ち歩く
  • 使い捨てプラスチックをできるだけ使わない
  • リユース、リデュース、リサイクルの循環型の消費を心がける

これらに合わせて、会社全体でエシカル消費につながるような活動、たとえば環境保全活動やごみを減らす活動などを積極的に行っている会社の商品を購入することもエシカル消費といえる。

商品自体だけでなく、商品を販売する企業の取り組みにも目を向けてみると良いだろう。

まとめ

エシカル消費は、人や社会、環境、地域、動物福祉に配慮した消費をいう。最終的に商品やサービスを消費する消費者の選択肢として注目されるようになってきた。

消費者ひとりひとりのエシカル消費への意識が、世界や企業の生産物にも良い影響を与えるので、商品選択の際には、常に意識することが重要である。

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