People & Culture 【解説記事】SDGs2と関連深い「飢餓」の現状とは。身近にできるアクションを紹介

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標2では、「飢餓をなくそう」が掲げられている。「飢餓といわれてもピンとこない」という人も多いかもしれないが、世界で飢餓に陥っている人は8億人以上もおり、日本も無縁ではない。そこで今回は、飢餓の定義や現状を解説していく。

飢餓とは「健康な生活に必要な栄養を長期間摂取できていない状態」

飢餓について、国連世界食糧計画(WFP)では、次のように定義づけている。

「飢餓とは、身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態」

出典:よくあるご質問|国連世界食糧計画別ウィンドウで開きます(WFP)

飢餓に陥ると、出産時の母子の健康を損なうなどの影響がある。

特に成長期の子どもへの影響は大きく、十分な栄養を得られないことにより、免疫力低下や貧血などの健康問題を引き起こす。場合によっては、命を落とす原因にもなりかねない。2022年7月に発表されたユニセフの報告書によると、発育阻害の状態にある5歳未満の子どもは、1億4,900万人にも上る。

出典:食料安全保障 最新報告書 世界で8億2,800万人がきがに直面 新型コロナ流行以来、1億5,000万人増加|ユニセフ別ウィンドウで開きます

世界には、すべての人間が健康的に生活できる分の食料があるにもかかわらず、このように飢餓に苦しんでいる人々がいるのが実情だ。特に飢餓の深刻な地域の代表例として、アフリカ東部・中央部・南部が挙げられる。

栄養不足の人口の割合が非常に高い(35%以上)地域
アフリカ チャド・中央アフリカ・コンゴ共和国・ウガンダ・ザンビア・マウライ・ジンバブエ・リベリア・マダガスカル
中南米 ハイチ
アジア 北朝鮮

出典:ハンガーマップ|国連世界食糧計画(WFP)

世界の飢餓の現状を知る

世界では、多くの人々が飢餓に苦しんでいるのが現状にある。

ここでは、世界の飢餓の現状について、具体的な状況や背景を紹介する。

世界で8億2,800万人が飢餓に苦しんでいる

2021年の時点で、世界の飢餓人口は約8億2,800万人にも上る。

2019年までの約10年間は、飢餓の状態にある人々の数は、世界人口の約8%にあたる6億人台で推移していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の大流行により、飢餓の状況は悪化した。パンデミックが発生してから飢餓人口は約1億5,000万人増加し、2021年には約8億2,800万人に到達したのだ。

飢餓人口の推移
2019年 6億7,800万人(世界人口の8.0%)
2020年 7億8,200万人(世界人口の9.3%)
2021年 8億2,800万人(世界人口の9.8%)

出典:食料安全保障 最新報告書 世界で8億2,800万人が飢餓に直面 新型コロナ流行以来、1億5,000万人増加|ユニセフ別ウィンドウで開きます

新型コロナウイルス感染症が大流行したことで、世界の経済情勢が悪化した結果、飢餓に苦しむ人口が増えたと考えられている。

経済が悪化し、職を失うケースや収入が激減するケースが出てくると、元々わずかな収入を頼りに生活していた人々は大きな影響を受ける。収入の減少が栄養状態に直結してしまうからだ。

長引く感染流行の中でさらに状況が悪化するリスクもあり、世界規模で幅広い支援が求められる状況といえるだろう。

食糧不安に陥る人は世界で約23億人

世界で食糧不安に陥っている人口は、2021年の時点で約23億人といわれている。世界人口のおよそ3割が中度または重度の食糧不安に陥っている状況だ。飢餓と同じく、パンデミック前と比較すると、約3億5,000万人増加した。食糧不安とは、必要最低限の栄養は摂取できているものの、健康的な生活を送るために十分な食品を確保できない、または栄養に過度な偏りがある状態のことだ。

食糧不安は最低限の体重維持や軽度の活動を行うのに必要なエネルギーを摂取できていない状態である飢餓と異なり、差し迫った危険性まではないものである。ただし、発育障害や衰弱・肥満などに陥る原因となり得る。広い目で見れば飢餓や栄養不足により命に危険が及ぶ前段階ともいえる。

出典:食料安全保障 最新報告書 世界で8億2,800万人が飢餓に直面 新型コロナ流行以来、1億5,000万人増加|ユニセフ別ウィンドウで開きます

海外だけではない!日本の飢餓の現状

飢餓に苦しんでいるのは諸外国だけではなく、日本においても身近な問題だ。

ここでは、日本における飢餓の現状を解説する。

相対的貧困による飢餓

相対的貧困とは、ある国において国内の平均的な文化や生活の水準と比較して、困窮した状態を意味する。2019年の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2018年時点では、相対的貧困の等価可処分所得(いわゆる手取り収入を世帯人数で割った所得)は127万円以下で、これに満たない相対的貧困世帯の割合は15.7%だった。

なお、17 歳以下の子どもの貧困率は14.0%で、そのうち48.3%がひとり親世帯という結果になっている。

一定の収入があったとしても、家賃や通信費などの支払いに充てた結果、食費が不足していることが、相対的貧困による飢餓が起こる原因のひとつだ。

そして、相対的貧困による飢餓のリスクは、意外と身近なものといえる。自然災害や病気など突発的な事情で家族を失う可能性は誰にでもあるし、メンタル不調などから仕事の継続が難しくなることも珍しくはないからだ。

出典:国民生活基礎調査|厚生労働省pdfが開きます

栄養不足による飢餓

栄養バランスが取れていないために体調不良を招いてしまう栄養不足による飢餓も、子どもを中心に日本で問題となっている。

1日のなかで、栄養バランスの整った食事を摂れるのが給食のみの子どももいるのが実情だ。栄養の不足や摂取の偏りがあると、栄養失調で日々の生活に必要なエネルギーが不足したり、心身の成長が遅れたりするほか、免疫力が低下するなどにより病気にかかりやすい、あるいは重症化しやすくなったりと、影響は大きい。

特に子どもにとっては、「たかが栄養素の偏り」では済まされない重大な悪影響があることを知っておこう。

不足すると心身に悪影響を及ぼす栄養素の例には、次のようなものがある。

影響を及ぼす栄養素
ビタミンA
  • 免疫力の低下を引き起こし病気にかかりやすく治りにくくなる
  • 夜盲症といった目の病気を発症しやすくなる
たんぱく質
  • 心身の発育不良につながる
  • 極端に不足すると命の危険がある
鉄分
  • 貧血になり免疫力が低下する
  • 心身の発育不良につながる
ヨード
  • 甲状腺腫の原因となる
  • 知的な発達が遅れる
  • 運動機能が低下する

上記で紹介した栄養素は一例である。ビタミンB類やミネラル、炭水化物などの栄養素も偏りなく摂取することが大切である。

出典:キーワードで知る栄養不良とユニセフの活動|ユニセフ別ウィンドウで開きます

【飢餓対策】SDGs2「飢餓をなくそう」の達成が必要不可欠

飢餓は、世界そして日本でも多くの人々が苦しんでいる問題だ。子どもの発育や未来にもかかわる問題であり、SDGsの目標2「飢餓をなくそう」の達成が必要不可欠といえるだろう。

飢餓をなくしSDGs2の目標達成に向けて、私たちも身近なところからできることに取り組んでいく必要がある。

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飢餓対策の身近な取り組み例
食べものを無駄にしない
  • 食べられる食品の廃棄問題である食品ロスをなくすための取り組みのひとつ
  • 農林水産省によると、令和2年度の食品ロス量は522万トンで、うち一般家庭から発生する食品ロス量は247万トン
  • 必要な量だけ購入する、野菜類など傷みが早い食材は下処理しストックする、余った料理はアレンジして食べきるなどの対策を行う必要がある
フードドライブに寄附する
  • 食品ロスの解決方法として、フードドライブへの寄付もおすすめ
  • フードドライブとは、家庭で余った食品を集めて福祉施設やフードバンクに寄付する取り組み

SDGs2の目標については、以下の記事で解説している。

まとめ

SDGsで解決すべき目標ともなっている飢餓の問題は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、世界的に悪化している現状にある。子どもの貧困問題とも深く関わる問題であり、日本でも飢餓に苦しむ子どもが一定数いるのが実情だ。

フードドライブへの寄付など、私たちでもできることはある。身近なところから取り組みを始めてみよう。

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