People & Culture【健康経営】キーワードはワクワク感。協和キリンのネクストアクション
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最近耳にすることが増えた「健康経営」。「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること※1を指す。この言葉は、会社や社会に向けた奉仕的長時間労働が美徳とされた時代の終わりを端的に象徴している。今や従業員の健康は、コンプライアンスの観点はもとより、業績や株価の上昇、企業の社会的意義の向上のために最も重要な戦略的ファクターの一つと認識されつつあるのだ。
今回は、この「健康経営」を独自の視点から実施し、5年連続でホワイト500にも選出される協和キリン株式会社人事部の取り組みに迫る。次の5年、社会は、企業は、「働く」は、どのように変化を遂げるのだろう。
- ※1令和2年9月経済産業省「健康経営の推進について」
話を聞いた2名
幡谷まり子(はたや まりこ)
人事部 多様性・健康・組織開発G
1986年協和キリンの前身となる協和発酵工業入社。協和キリン健康保険組合に出向。長年、保険給付、資格業務、保健事業など健康保険組合の業務に幅広く携わり、2010年協和キリン健康保険組合事務長に就任。2014年より現職。健康保険組合で培った経験を活かし、コラボヘルスの体制や健康診断結果に基づく重症化予防の仕組みを構築。
藤田優(ふじた ゆう)
人事部 多様性・健康・組織開発G
2008年、キリンビール株式会社入社。キリンビジネスエキスパートに出向。給与計算、人事システム運用、人事制度改定などに携わる。2017年より現職。シェアードサービス会社で培った経験を活かしグループ内就業規則の共通化や業務効率化、健康経営を推進。2021年にマネージャーに就任。
従業員の健康は経営マター。次の5年へ「Wellness Action 2025」
–企業として「健康経営」を推進されている協和キリン株式会社ですが、まずその取り組みの概要を教えてください。
幡谷まり子、以下幡谷協和キリンでは「健康経営」へ向けた取り組みを「Wellness Action」と銘打って推進しています。「Wellness Action」は当社が2015年5月に行った「健康宣言」の考え方をもとに、さまざまな健康習慣を従業員につけてもらえるよう目標に落とし込んだものです。
従業員の健康について、自分たち自身で意識することに加えて、「予防」という視点から企業としても支援の度合いを高めることでより高次元の健康を目指すことを目的としています。
そして、「Wellness Action 2020」を土台として本年度からは次の5ヵ年に向けた「Wellness Action 2025」がスタートしました。
–「Wellness Action 2020」の具体的な内容と結果はどのようなものだったのですか?
幡谷「Wellness Action 2020」では、主に「生活習慣の改善」、「がん予防」、「ストレス対策」「働き方改革」の4つの軸を中心として、具体的な達成項目である「Wellness Action 2020 GOALS」を設定していました。
幡谷結果として現在集計中の項目や未達項目はあるものの、概ね以下の様な事柄に関して効果を得られたと考えています。
- 健康診断で高リスクと判定された従業員の重症化の予防(産業医との連携)
- ウォーキングキャンペーンによる運動機会の提供とコミュニケーションの促進
- 禁煙推奨による健康リスクの低下、生産性の向上、社外への好影響
- 健康経営優良法人(ホワイト500)の5年連続認定
–なるほど。ホワイト500とは、どのようなものですか?
幡谷正式名を「健康経営優良法人認定制度」といい、経営方針や理念、健康施策の実行率などの基準を数値化し、企業の健康増進の取り組みを評価する制度です。
上位500社に与えられる称号が「ホワイト500」といって、ホワイト500は参加企業の増加※2などにより、年々その認定のレベルが上昇しているように感じます。そのような中でも協和キリンは5年連続で認定を受け、さらに獲得順位も上げ続けることができています。
- ※2申請企業数は、2017年(726社)から2020年(2523社)に増加
一人ひとりに行動変容を。キーワードは「ワクワク感」
–社会的評価も高い「Wellness Action」ですが、「Wellness Action 2020」を踏まえて新たに制定された「Wellness Action 2025」にはどんな特徴があるのでしょう。
藤田優、以下藤田「Wellness Action 2025」では、全ての項目でより高い目標を掲げています。さらに、従業員の意識・行動変容に関係する指標に関しては、一人ひとりの行動目標にまで落とし込んでいます。
例えば、「Wellness Action 2020」における運動の指標は「適度な運動習慣のある者の割合」でしたが、「Wellness Action 2025」では、「ウォーキングキャンペーン平均歩数5,000歩かつ参加率80%以上」としています。
–より具体的な指標で一人ひとりの行動変容を促しているのですね。
藤田そうですね。しかし、いくら高い目標を立てても、それが実際の行動に繋がらなければ意味がありません。目標を分かりやすくし、達成率を「見える化」することは、あくまでも一つの手段だと考えています。
「Wellness Action 2025」では具体的数値を示す一方で、ありたい姿勢を「従業員とその周囲の方がWellness Actionを自分ごととして、ワクワク感を持って取り組んでいる」と設定しています。
この“ワクワク感”には、一人ひとりが自らの健康と主体的に向き合い、活動に取り組むことで、意識や体が変わっていく(ワクワクな)感覚に目覚めて欲しいという意味を込めています。
健康維持は毎日の習慣と密接に関わっていますから、「ルールだから」と押し付けられては長続きしませんよね。まずは、さまざまな企画を通じ、楽しみながら健康について考えるきっかけを提供し、健康意識の高い風土を醸成すること。それができて初めて数字はついてくると考えています。
–健康意識の高い風土の醸成のために実施している取り組みはありますか?
定期的にウォーキングイベントを行なっているほか、近年では、社内SNS(Beats Live)を通じた健康情報の発信や、「Smileプロジェクト」の立ち上げを行いました。
「Smileプロジェクト」とは、「コロナ禍でも、まずは私たちが笑顔でいることが大切だよね」という考えからスタートした一連の企画です。
例えば、昼休みに放送される人事部長をD Jに迎えたラジオ企画もその一つ。従業員にとって馴染み深いゲストを呼んで、多様なテーマを取り上げています。チャットによる双方向コミュニケーションもあり、とても人気のある企画なんですよ。
また、本社主導の取組みだけではありません。事業場外の活動を中心とするMR※3が集う支店全体会議前に昼食付き「健康セミナー」が開催されたり、
ゼロ円サラダが提供される工場もあります。事業場毎の働き方に応じた工夫もなされており、そういったことの積み重ねで健康意識の向上に努めています。
- ※3Medical Representative(医薬情報担当者)。医薬品の適正使用のため、病院などの医療現場に対して情報提供活動等を行う。
–活動における一体感を大切にしているのですね。
自らの健康が、患者さんの健康に繋がっている
–「Wellness Action」を推進する立場として、お2人の今後の目標を教えてください。
藤田健康は、不調をきたしてからその大切さに気づくことが多いですよね。この「Wellness Action」も特に若い従業員の方には、まだまだ自分ごととして浸透していないと感じることもあります。
私としては「少しずつでもやってみませんか?」というような、一人ひとりの感情に寄り添う「並走のスタンス」で、愛情を持ってメッセージを伝え続けていきたいと思っています。少しずつでも、健康の大切さに気がついてもらえるよう力を尽くしていきたいです。
幡谷当社は製薬会社なので、「自分の健康よりも、患者さんの健康」のことを考えている従業員は多いと思います。
それでも、ウォーキングイベントで支給したウェアラブル端末を日常でも使用している従業員がいたり、さまざまな場面で健康の話題を耳にすることも多くなりました。少しずつですが着実に、健康への意識は変わってきていると感じます。
従業員一人ひとりの心身が健康で輝いていることが、Life-changingな価値を創出し世界の患者さんの笑顔を創る原動力になると考えています。
「自らの健康なくして、患者さんの健康なし」。これからも、製薬企業らしく、自らの健康が患者さんの健康に繋がっているという考えのもと、「健康経営」に積極的な企業姿勢を貫いていきたいと考えています。
–協和キリングループが「健康と豊かさ」を実現するためにも、欠かせない要素ですね。ありがとうございました。