社会との共有価値 【解説記事】フェアトレードの目的と3つの問題点を解説

フェアトレードは、貧困や飢餓の解消など、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )達成に寄与する取り組みとして注目されている。ただし、まだ問題点が残る取り組みといわれており、早期解決が必要と考えられている。

この記事では、SDGsと関連性のあるフェアトレードの目的や意義、問題点を取り上げていく。

【SDGs】フェアトレードの目的と意義

フェアトレードとは、経済的に不利な立場で生活する生産者や労働者を公平・公正な貿易によって支援する取り組みのこと。発展途上国の生産者や労働者の生活水準を向上させることを目的にし、継続的な適正価格での取引の実現を目指しているのがフェアトレードの特徴だ。

フェアトレードには国際フェアトレードという基準が設けられている。製品が国際フェアトレード認証ラベルを取得するには、労働環境や地球環境に配慮されていることなど、厳しい審査基準を満たさなければならない。

このようなフェアトレードの取り組みは、SDGsのすべての目標にも関係している。

フェアトレードの意味や主な製品、SDGsとの関連性については、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にされると良いだろう。

フェアトレードの目的について、途上国の生産者や労働者の生活水準の向上や公正な国際貿易の実現であると説明したが、具体的にはどのようなものだろうか。この項目では、フェアトレードの目的について紹介する。

目的1. 生産者・労働者の生活水準の向上

フェアトレードの基準のひとつに、途上国の生産者や労働者に適切な賃金が支払われることが含まれている。フェアトレードによって、劣悪な労働環境の整備、貧困の削減、地域開発を目指しているためだ。適切な賃金が継続して支払われることで、生産者や労働者は世帯所得を増やす機会が得られ、生活の安定が期待できる。

世帯所得の上昇により生活が安定すれば、子どもを働きに出すことも避けられるだろう。子どもは、仕事に従事するのではなく、教育を受ける時間に充てられるようになる。

目的2. 公正な国際貿易の実現

貿易は輸出国と輸入国の両方に利益が生じるものだが、必ずしも公平・公正とは限らなかった。特に、豊かな先進国と貧しい発展途上国の間では、不公平な貿易が目立つ。

フェアトレードは、このような不公平な貿易をなくし、公平・公正な国際貿易によりお互いの国が豊かになることも目的としている。

【SDGs】フェアトレードの問題点といえる3つのこと

フェアトレードは、先進国と発展途上国がともに持続可能な社会を形成していくために重要ではあるが、問題点もある。何がフェアトレードの取り組みの妨げになるのだろうか。フェアトレードが抱える3つの課題を取り上げる。

1. 商品価格が高いため普及しにくい

フェアトレードは、途上国の生産者や労働者と適切な額で取引することではあるが、消費者の立場ではメリットばかりとは限らない。製品の価格設定には限界があり、同ジャンルの他商品と比べると割高になるためだ。

フェアトレード製品を意識して購入する消費者もいるが、経済的に余裕がない場合は、より安価な商品を購入する傾向にあるだろう。

また、国際フェアトレード認定を受けた製品の場合は注意が必要だ。市場価格が下がった場合でも、フェアトレード認定品は最低価格を保証する必要がある。つまり、最低保障額よりも市場価格が下回ったときは、市場価格よりも割高な価格になる可能性がある。

通常の商品よりも割高だと手に取る消費者が少なくなり、それにともなってフェアトレード製品を取り扱うお店も少なくなる。フェアトレード製品の認知度が低いのも、フェアトレードの抱える問題点のひとつだ。

2. 品質維持が難しい

フェアトレード製品は、主に途上国から先進国へと流通している。そのため、先進国の消費者に購入してもらうことが必要であるが、その際、均一な品質を維持することが課題となることも多い。

ほかの商品と比べたとき、品質や満足度が劣ると売れなくなってしまうためだ。均一な品質を保つためには、現地の文化や生産者の能力を尊重しつつも、消費者に手に取ってもらえるように品質維持対策を行う必要がある。

あくまで搾取する技術移転ではなく、生産者や労働者との協働での開発や適切な技術移転など、フェアトレードの前提条件を守ることも必要だ。

3. フェアトレードの基準が曖昧

フェアトレードの基準は、企業や団体が独自に設けているケースがあり、曖昧な部分も多いのも問題点といえる。世界共通の基準として国際フェアトレード基準があるものの、その基準を満たさないとフェアトレード製品の表示ができない決まりはない。

国際フェアトレード認証ラベルやフェアトレード団体マークでは明確な基準が設けられているものの、その認知が進んでいないことも課題のひとつである。そのため、国際フェアトレード認証ラベルを取得しても、ほかのフェアトレード製品との差が消費者にはわかりにくい。

そこで、企業や団体には、フェアトレード認証や基準の明示、認知の拡大が求められる。近年ではフェアトレード認証の対象商品が広くなっているため、よりアピールできる機会は増えているといえるだろう。また、消費者側も積極的にフェアトレード認証や基準について知ろうとすることが必要だ。

企業のフェアトレードへの取り組み事例

先述したように、フェアトレードにはまだまだ課題がある。そこで、企業側は問題点を解決できるようにビジネスモデルを構築すること、消費者側はフェアトレードにおける意識を高めて情報を自ら取得することが大切だ。

ここでは、フェアトレードに関する企業の取り組みを紹介する。

ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社

ダーボン・グループはコロンビアに本社を置く会社で、日本をはじめ5大陸で食・エネルギー・物流・不動産の4つの事業を展開している。1990年以降、持続可能な有機農法を世界に先駆けて開始した。パーム、バナナ、コーヒーを栽培するすべての農園で有機認証を取得している。

有機栽培に関する認証のほかにも、BIOTROPICOフェアトレード認証も取得した。BIOTROPICOフェアトレードはコロンビアに拠点がある国際的な認証団体だ。児童労働や強制労働の撤廃、野生生物の保全などの基準を満たす、国際労働基準を遵守している企業として認証を受けている。

ダーボン・オーガニック・ジャパンは、フェアトレードによる高品質な商品を、日本をはじめとしたアジアに供給し続けている。

株式会社ローソン

株式会社ローソンは、「MACHI café」に使用するコーヒー豆を、2011年から徐々に「レインフォレスト・アライアンス認証」の農園産のものに変更してきた。2015年からはレインフォレスト・アライアンス認証を受けたコーヒー豆のみを使用している。

レインフォレスト・アライアンス認証とは、環境保全と労働環境の厳しい基準をクリアしたフェアトレードを認証するものだ。

さらに、2021年には首都圏のナチュラルローソンにおいて、国際フェアトレード認証のカカオを使用した商品の発売に乗り出した。チョコレートブランドとのコラボレーションで消費者のニーズにも配慮した商品となっている。

まとめ

フェアトレードは先進国と途上国の公正な取引を実現するためのものだが、消費者側の認知や品質維持、フェアトレードの基準の曖昧さには課題がある。

企業側は問題点を踏まえて商品開発やビジネスモデルを構築することが求められる。消費者側も、積極的にフェアトレードに関する情報を収集することが大切だ。

協和キリンの「社会との共有価値」についてもっと知る

トップへ戻る