社会との共有価値 【解説記事】【SDGs】サステナブル素材とは?種類や企業の取組事例

近年、環境に対する負荷が少なく、持続可能な調達を重視したサステナブル素材が注目されている。大量生産・大量廃棄の風潮が抜けきれないファッション業界は、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)を達成していくうえで欠かせない存在だからだ。今回は、サステナブル素材の基礎知識を紹介する。

サステナブル素材とは

サステナブル素材とは、自然環境に配慮された、環境負担が少ない持続可能な素材のことだ。そもそもサステナブルとは、「持続する」を意味するsustainと「可能」を意味するableを組み合わせた言葉で、「持続可能な」を意味する。

サステナブル素材が重要視されるのは、自然環境への負荷だけでなく、生産者の労働環境の持続可能性にも配慮しているからだ。

例えば、サステナブル素材の代表例であるオーガニックコットンの認証基準には、次のとおり、綿花を栽培する環境および労働者の両方について基準が定められている。

オーガニックコットンのGOTS認証基準の例

  • 環境負荷の高い毒性が強い化学薬品を使用しない
  • 強制労働や児童労働を行っていない
  • 安全な労働環境で労働者に対する搾取のない労働条件になっている

背景となる社会問題

サステナブル素材が注目される背景には、ファッション産業のライフサイクルを通した環境負荷の高さという問題がある。

さまざまな素材を利用して製品を作り、シーズンが過ぎると未使用でも廃棄する傾向があるファッション産業は、製造から廃棄に至るまでの環境負担が大きいのだ。

特にファストファッションは、大量生産・大量消費・大量廃棄の傾向が強く、世界的に問題視されている。

このような課題の解決策のひとつとして、材料調達時の負荷を抑えられるサステナブル素材が注目されているのだ。

SDGsとの関係性

サステナブル素材を活用することは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の達成に貢献する。

目標12の達成のためには、生産者が資源を無駄にしないモノづくりを行うことが必要だ。企業は、適量生産・適量購入・循環利用の循環型モデルの実現に向けてのアクションが求められているといえるだろう。

また、私たち消費者は、持続可能性に配慮して作られた製品を選ぶとともに、3Rなどに取り組むことで資源を無駄にしないライフスタイルを心がける必要がある。

特に3Rの中でもリサイクルは環境負荷が高い。リサイクルする過程で水や電気などのエネルギーを大量に消費するためだ。可能な限りリユース・リデュースを心がけ、リサイクルは最後の手段と考えることが、SDGsを実現するうえで大切だ。

サステナブル素材の種類

サステナブル素材には、以下のとおり、天然素材とリサイクル素材の2種類がある。

天然素材 オーガニックコットン・アニマルフリー素材など
リサイクル素材 再生ポリエステル繊維・アップサイクル素材など

それぞれどのような素材なのか、具体的に確認してみよう。

天然素材

天然素材とは、化学物質が含まれておらず、自然界に存在する原材料から作られた素材のことだ。ここでは、オーガニックコットンとアニマルフリー素材の2種類について紹介する。

オーガニックコットン

オーガニックコットンとは、農薬・殺虫剤などを使用せず、遺伝子組み換えをできる限り行わないオーガニック農法で栽培されたコットンのことだ。

コットンは環境負担が高い素材のひとつとして知られ、大量の水資源を消費する。さらに問題なのが、水資源が豊富でない地域で盛んに栽培がおこなわれる傾向にあり、生態系や人々の暮らしに悪影響を及ぼしている点だ。

この問題を解決するべく生まれたオーガニックコットンには、認証制度が存在し、取得には費用がかかるうえ厳しい認証基準を満たす必要がある。

アニマルフリー素材

アニマルフリー素材とは、本来は動物由来の原材料で作っていた素材を、非動物性の原材料に置き換えた素材のことだ。

例えば、近年注目されているのが、植物性の素材や人工的な素材で作られるフェイクファーやエコレザーだ。これらはサボテンやパイナップルの葉など、さまざまな原料から作られている。

ミンクやコヨーテなどの希少な動物の毛皮への利用が絶滅危惧を招くことから、また動物性の革のなめしの段階で大量の薬品や水を消費し環境汚染が問題になっていることからフェイクファーやエコレザーが開発された。

リサイクル素材

リサイクル素材とは、廃棄予定の資源を再利用して作られた素材のことだ。今回は、代表的なリサイクル素材である再生ポリエステル繊維とアップサイクル素材について、どういう素材なのかを見ていこう。

再生ポリエステル繊維(再生ペットボトル繊維)

再生ポリエステル繊維とは、廃棄予定のペットボトルやフィルムなどを再利用し、再生原料で作った繊維素材のことだ。リサイクルポリエステルや再生ポリエステルなどとも呼ばれている。

廃棄されるはずだったPET製品を再利用できるので、廃棄物の減量に役立つ素材だ。加えて、石油から新しいポリエステルを製造しないため、環境への負担を大幅に軽減することもできる。

マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの2種類の再生方法があり、種類に応じて再生にかかるコストや再生後の品質が異なるのが特徴だ。

アップサイクル素材

アップサイクル素材とは、廃棄予定の素材を加工して新たな価値ある素材として変換した素材のことだ。例えば、廃棄予定のビニール傘を使って小物を作る、廃タイヤを利用してバッグを作るなど、さまざまなアップサイクル素材を活用した製品がある。

アップサイクルでは、リサイクルとは異なり、廃棄予定の素材に対して化学処理などを行わずそのまま活用するため、コストや環境負荷を抑えられることが特徴だ。

サステナブル素材の企業の取り組み事例

サステナブル素材は、すでに多くの企業が活用している。ここでは、GRUNBAG(グリュンバッグ)・株式会社ナイキ・People Tree(ピープルツリー)の3社を取り上げ、具体的にサステナブル素材がどのようにモノづくりに生かされているのか説明する。

GRUNBAG(グリュンバッグ)

機能的かつ丈夫さが特徴のオールラウンドバックパックを販売しているGRUNBAG(グリュンバッグ)では、まだ使える製品や素材を実用的なアイテムにアップサイクルさせている。

リサイクルとクリエイティブなデザインに対する信念から、エコロジカルな製品づくりに挑戦している。実際に、同社で使用している材料の90%は、再利用または持続可能な方法で調達された材料だ。

株式会社ナイキ

オーガニックコットンや再生ポリエステルなどの環境に配慮したサステナブル素材を使用した製品づくりを行っているのが、有名スポーツブランドの株式会社ナイキだ。

スニーカーのソールにリサイクル素材を50%使用するなど、再生素材を利用することで廃棄物の発生や二酸化炭素排出量の大幅な削減に寄与している。

また、オーガニックコットンの積極的な利用にも取り組むことで、環境だけでなく生産者の持続可能性にも配慮している。

People Tree(ピープルツリー)

People Tree(ピープルツリー)は、フェアトレードを専門とし、約30年にも渡ってサステナブルファッションをつくり続けているファッションブランドだ。

オーガニックコットンをはじめ、その地方で採れる天然素材を手仕事で仕上げる商品開発・販売を行っている。手仕事を活かすのは、開発途上国の生産者が収入を得られる機会を提供するうえ、持続可能な生産を支えるためである。

まとめ

SDGsの目標達成に深く関係するサステナブル素材は、特にファッション業界の課題解決に欠かせない。環境はもちろん、立場の弱い労働者にも配慮されたサステナブル素材の活用を推進するために、素材選びにも目を向ける必要がある。

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