社会との共有価値 【解説記事】「エシカルファッション」を選ぶポイントと企業事例を紹介!
持続可能な社会の実現のために誰もができる身近な取り組みがある。そのひとつがエシカルファッションだ。
今回は、エシカルファッションを実践するなら知っておくべき概要や取り組み方・選び方のポイントを解説する。
エシカルファッションとは
エシカルファッションとは、生産者の生活・安全や環境に配慮したエシカル消費の一種である。具体的には、オーガニックやフェアトレード・リサイクルなどの素材を使用した、労働者にも環境にも優しいファッションを意味する。
エシカルファッションが広まった背景には、開発途上国の生産者が置かれている厳しい状況がある。生産コストもまかなえないほどの低い取引価格、国際的に使用禁止とされる危険な農薬の使用など、生産者の労働環境は劣悪だ。
このような状況を変えようと、2004年にはエシカルファッションショーの開催が、2006年にはエシカルファッションビジネスを牽引するエシカルファッションフォーラムが設立された。
現在、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標達成とも関わるエシカルファッションは、ますます大きなムーブメントとなっている。
エシカル消費について詳しくは、こちらの記事で紹介している。
エシカルファッションの基準
では、どのような基準を満たせば「エシカルファッション」に該当するだろうか。エシカルファッションフォーラムによって、10の基準が示されている。
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基準 | 概要 |
---|---|
1.ファストファッションではなく長く使える | 丈夫・デザインがシンプルなど、使い捨てではなく、何シーズンも使える |
2.生産者の労働環境・賃金・権利に配慮する | フェアトレードなど製品の品質だけでなく、生産の過程・環境も適切にする取り組みをしている |
3.持続可能な生活にフィットする | 地球環境に配慮した持続可能なライフスタイルの推進につながる製品づくりになっている |
4.有害な農薬・化学物質を使わない | 環境破壊や生産者の健康被害につながる薬品を使わないものづくりをしている |
5.環境に優しい素材を使う | リサイクル繊維や廃棄後土に還る天然繊維など、エコな素材を積極的に使う |
6.水を無駄にしない製法で作る | 綿の加工やデニムの染色時など、大量消費する水の量を抑える取り組みをしている |
7.リサイクル・省エネ・廃棄物削減に努める | 製品を作る過程で必要なエネルギーは再生エネルギーを使う、廃棄を前提とした大量生産はしないなど |
8. 持続可能性を促進する | 持続可能性を推進するキャンペーンや情報発信などを行う |
9. エシカルファッションを啓発する | エシカルな素材・製造過程などを公表し、エシカルファッションを広める |
10.動物の権利を守る | 企業理念として動植物の保護を掲げている |
エシカルファッションへの取り組み方
日本のエシカルファッションジャパンは、エシカルファッションへの取り組み方として、8つの方法を示している。
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取り組み方 | 概要 |
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フェアトレード | 開発途上国で作られた製品・素材を適正価格で取引することで、生産者の生活改善に取り組んでいる |
オーガニック | 有機栽培された素材を使用している |
アップサイクル&リクレイム | 不要になったもの・デッドストックを活用している |
クラフトマンシップ | 伝統技術を取り入れ技術の継承をはかる |
ローカルメイド | 地域の技術継承や雇用創出に配慮する |
アニマルフレンドリー | 動物実験をしないなど動物の権利に配慮する |
ウェイストレス | 製造過程から廃棄・リサイクルまでの各段階で、二酸化炭素の排出量や廃棄物の量を減らすことに努めている |
ソーシャルプロダクト | NPOやNGOに寄付するなど社会貢献を行っている |
【認証マーク】エシカルファッションを選ぶポイント
「エシカルファッションの基準はわかったけれど、どの製品がエシカルかよくわからない」時に参考となるのが、次の3つの認証ラベルだ。
- エコマーク
- GOTS認証
- 国際フェアトレード認証
それぞれ、どのようなラベルか解説する。
エコマーク
エコマークとは、生産、流通段階から廃棄、リサイクルするときまでの製品ライフサイクル全体で、環境への負担が少ない製品に付けられるマークだ。企業の環境改善に向けた努力の推進、持続可能な社会の形成を目的としている。
公平な審査によって、商品カテゴリーごとの厳しい基準を満たした商品にのみ付けられる。消費者にとっては、総合的に環境に配慮した製品を選ぶ際の目印となるだろう。
GOTS認証
GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)認証とは、適切なオーガニック繊維加工がされた製品であることを証明するラベルだ。原料の収穫から製造過程まで厳しい基準に基づき、環境・社会などに配慮し加工されたかが評価される。
繊維製品の製造、小売業者の要望により、世界的に評価されつつあるラベルだ。
国際フェアトレード認証
国際フェアトレード認証とは、国際フェアトレードラベル機構によって定められる経済・社会・環境基準を満たした製品であることを証明するラベルである。
生産者の労働環境や生物多様性の保全などに配慮した製品であることを示すものだ。SDGsの多くの目標達成にも深い関係がある。
フェアトレードとSDGsの関係についてはこちらの記事で紹介している。
エシカルファッションに取り組むブランド事例
環境保護やSDGsの達成に向けた意識の高まりから、近年、多くのファッションブランドがエシカルファッションに取り組んでいる。
今回は、その中から次の3つのブランドを紹介しよう。
- People Tree(ピープルツリー)
- Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)
- tennen(天撚)
エシカルファッションに挑戦する上での参考として欲しい。
People Tree(ピープルツリー)
People Tree(ピープルツリー)とは、オーガニックコットンをはじめとする天然素材を手仕事で仕上げる製造工程とフェアトレードに力を入れているファッションブランドだ。環境問題や貧困問題の解決に尽力するNGOグローバル・ヴィレッジの一部門にあたる。
オーガニックコットン、テンセル、ジュート、アルパカなどの天然素材を、本来の持ち味を活かして使うことで環境負荷を減らしている。
また、手織りや手染め、手刺繡などの手仕事を重視することで、開発途上国の生産者が大量生産のシステムに組み込まれるのを防いでいる。そのうえ、能力を活用して収入を得る機会の創出にもつながっているのだ。
素材感を活かした、一点一点趣の異なる、シンプルながら味わいのある製品でエシカルファッションを実践したい場合におすすめのブランドだ。
Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)
Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)とは、2001年の設立当初から、レザー、ファー、皮革、羽毛、ニカワをまったく使用しない製品づくりをしているサスティナビリティブランドだ。
その後も毎年のように、エシカルな取り組みに挑戦し続けている。
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実施年 | 取り組み内容 |
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2008年 | オーガニックコットンを採用 |
2010年 | PVCフリーに |
2012年 | 生分解性素材を靴のソール部分に使用するなど、複数素材をサスティナブル化 |
2013年 | アンゴラフリーや店舗のLED化を実施 |
2014年 | 段ボールなどの包装素材をサスティナブルに |
2016年 | ヴァージンカシミアの使用禁止などを実施 |
2017年 | 再生ナイロンなどを導入 |
2018年 | モヘアを全面的に使用禁止 |
2019~2021年 | エコな新素材・リサイクル素材を積極的に採用 |
ファッショナブルなエシカルファッションを取り入れたい場合に、特におすすめのブランドといえるだろう。
tennen(天撚)
生分解性の高い素材にこだわり、廃棄後は100%土に還るごみを生まない製品づくりをしているファッションブランドがtennen(天撚)だ。
ごみを出さないことを前提とするサーキュラーエコノミー的発想のものづくりは、環境問題が深刻化する中で、今後ますます必要とされる先進的な取り組みといえる。
生地はもちろんのこと、ネームや縫い糸まで天然素材を使用した服作りに加えて、新しいリサイクルシステムにも力を入れるなど繊維製品の循環を徹底している。
ごみを生まないものづくりという理念に共感したら、ぜひ取り入れたいエシカルファッションだ。
まとめ
エシカルファッションは、日常に取り入れるだけで、誰もが環境問題や開発途上国の貧困問題などの改善に貢献できる取り組みだ。大量消費、大量廃棄の時代の終わりは、近づいている。ファッションから始めるフェアトレードやSDGsへの参画に挑戦してみてはいかがだろうか。