People & Culture 【解説記事】女性の社会進出はどれくらい進んでいる?残る課題と企業の取り組み
女性の社会進出は、徐々に進んではいるものの、課題も残っているのが実情だ。例えば、働く女性は増えていても、管理職や正社員は少ないという状況にある。今回は、データに基づく具体的な現状、課題やその解決に向けた企業の取り組みなどを解説していく。
女性の社会進出の現状
女性の社会進出とは、社会で女性が活躍する機会が増えていくことを意味する。男女格差の解消や経済成長など、さまざまな観点から女性の社会進出は欠かせないものだ。
ここでは、そんな女性の社会進出に関する日本の現状について、政府の調査結果を踏まえて紹介する。
働く女性の割合は44.6%
女性の社会進出の代表例が「働く女性の割合が増えること」だ。現在の日本において、働く女性の割合は増加傾向にある。
厚生労働省の「令和3年版働く女性の実情」によると、令和3年の女性の労働力人口は3,057万人で、労働力人口総数に占める女性の割合は44.6%という結果だった。
女性の労働力人口については、およそ30年前の平成2年の調査結果と比べると464万人増加している。また、労働力人口総数に占める女性の割合についても、平成2年と比べると4.0ポイント上昇しているという結果だった。
働く女性の数は着実に増えていることがうかがえる調査結果といえるだろう。
女性の労働力人口 | 労働力人口総数に占める女性の割合 | |
---|---|---|
平成2年(1990年) | 2,593万人 | 40.6% |
平成12年(2000年) | 2,753万人 | 40.7% |
平成22年(2010年) | 2,783万人 | 42.0% |
令和3年(2021年) | 3,057万人 | 44.6% |
- ※参考:「令和3年版働く女性の実情」(厚生労働省)
女性が働くことへの意識は変化している
女性が働くことに対する人々の意識も変化してきている。
内閣府の実施した「男女共同参画社会に関する世論調査」では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方についての意識を調査している。これに対し、「賛成」と回答した人は35.0%、「反対」と回答したのは59.8%という結果だった。
なお、「賛成」とした回答は前回調査時の40.6%から5.6ポイント減少し、「反対」とした回答は前回の54.3%から5.5ポイント増加している。このことから、女性が働くことに対する意識は、年々変化しているといえるだろう。
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に対する人々の意識 | |
---|---|
賛成 | 35.0%(前年から5.6ポイント減少) |
反対 | 59.8%(前年から5.5ポイント増加) |
- ※参考:「男女共同参画社会に関する世論調査」(内閣府)
また、反対とした理由でもっとも多かったのは、「固定的な夫と妻の役割分担の意識を押しつけるべきではないから」で、56.9%だった。
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に反対する理由の例 | |
---|---|
固定的な夫と妻の役割分担の意識を押しつけるべきではないから | 56.9% |
妻が働いて能力を発揮した方が、個人や社会にとって良いと思うから | 43.3% |
夫も妻も働いた方が、多くの収入が得られると思うから | 42.1% |
- ※参考:「男女共同参画社会に関する世論調査」(内閣府)
女性の社会進出を取り巻く課題
前章で紹介したとおり、働く女性の数は増えており、女性の働く意識も変化しつつある。一見すると女性の社会進出は進んでいるように見える。とはいえ、昇進や雇用形態に目を向けると課題が残っているのが現状だ。
女性の社会進出を取り巻く課題の例
- 女性の管理職割合が少ない
- 働く女性の半数が非正規雇用
ここでは女性の社会進出を取り巻く課題について、もう少し詳しく見ていこう。
女性の管理職割合が少ない
働く女性の数は増えても、管理職に占める女性の割合は依然として少ないままだ。帝国データバンクの「女性登用に対する企業の意識調査(2022年)」によると、女性管理職の割合は平均で9.4%と、1割にも満たない結果だった。
それでも前年の調査結果と比べると0.5ポイント増加しており、過去最高を更新している。しかし、政府が目標とする女性管理職の割合30%には遠く及ばないのが現状だ。
もちろん、中には女性管理職の割合が30%以上の企業も存在するが、調査対象となった企業全体の9.5%にとどまった。
各企業における女性管理職の割合 | |
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30%以上 | 9.5% |
20%以上30%未満 | 6.2% |
10%以上20%未満 | 9.0% |
10%未満 | 26.5% |
0%(全員男性) | 45.0% |
わからない | 3.9% |
- ※参考:「女性登用に対する企業の意識調査(2022年)」(帝国データバンク)
働く女性の半数が非正規雇用
正規雇用における女性の割合も低い傾向にある。内閣府男女共同参画局によると、令和3年における非正規雇用者は2,065万人、全雇用者の36.7%を占め、女性が1,413万人(53.6%)、男性が652万人(21.8%)という結果だった。働く女性は増えているが、その半数以上は非正規雇用というのが実情である。
なお、非正規雇用の職に就いている理由としてもっとも多かったのが「正規の職員・従業員の仕事がないから」であった。正規雇用を望んでいながらも叶わない実情は、問題視せざるを得ないだろう。
非正規雇用での就業では昇給や出世の機会が与えられないことが多く、女性の活躍に結びつきにくくなってしまっている。
その結果、男女間の給与格差が依然として埋まらなかったり、女性管理職の割合が1割にも満たなかったりといった現状の一因となっているともいえるだろう。
女性の社会進出を妨げる出産・育児との両立の難しさ
女性の社会進出が進まない背景には、日本において特に、出産・育児との両立が難しいことが挙げられる。女性の多くは、妊娠・出産を機に、仕事か子育てかの二者択一を迫られるからだ。
厚生労働省委託事業の調査でも、妊娠・出産を機に退職した理由として「仕事と育児の両立の難しさ」が最も多い理由として挙げられている。
妊娠・出産を機に仕事を辞めた理由 | |
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仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた | 41.5% |
家事・育児により時間を割くために辞めた | 29.2% |
勤務地や転勤の問題で仕事を続けるのが難しかった | 26.2% |
妊娠・出産や育児を機に不利益な取扱い(解雇、減給等)を受けた | 16.9% |
- ※参考:「令和2年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 報告書」(厚生労働省委託事業、株式会社 日本能率協会総合研究所)
また、出産後の仕事の継続が難しい理由として、「家事・育児をするのは女性」といった固定観念による影響も大きい。
女性の社会進出を促すには、出産・育児休業制度の充実や固定観念の解消が必要といえるだろう。
女性の社会進出を促す企業の取り組み
女性の社会進出が課題を抱えていることを踏まえ、各企業では女性の社会進出を促す取り組みを行っている。その中から、今回は関西電力株式会社のキャリアステージに応じた支援・施策と、株式会社メルカリの人事制度を紹介する。
関西電力株式会社
関西電力株式会社では、女性の活躍を推進するために、キャリアステージに応じた支援・施策を行っている。具体的な仕組みは、「若手」「中堅」「役職者」の3つのステージに応じた施策で、スムーズなキャリアアップを目指せるといったものだ。
キャリアステージに応じた支援・施策の例 | |
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若手 |
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中堅 |
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役職者 |
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株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、2016年2月に導入した人事制度「merci box(メルシーボックス)」で、出産育児などを幅広くサポートしている。
「merci box(メルシーボックス)」で備えられている制度には、以下の例が挙げられる。
「merci box(メルシーボックス)」のサポート内容例
- 産休・育休期間中の給与について、会社側が100%保障
- 育児・介護休暇は、5日間までは特別有給休暇として取得できる
- 不妊治療を行う場合、その治療費を会社で一部負担 など
まとめ
女性の社会進出は、働く女性の増加や意識の変化においては進みつつある。だが、管理職割合や正規雇用率に着目すると、依然として女性が占める割合は低く、課題が残っている状況だ。
背景にある出産・育児との両立の難しさなどの問題を、制度の拡充や周囲の意識改革によって解決していくことが求められる。