社会との共有価値 【解説記事】【SDGsと人権問題】解決すべき社会課題とは?

【SDGsと人権問題】解決すべき社会課題とは? 【SDGsと人権問題】解決すべき社会課題とは?

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の達成を目指すためには、多くの課題をクリアする必要があるが、人権の保護については2030アジェンダの中でも特に重視されている。

17の目標の中にも関連する部分が多く、すべての人の人権が尊重されることは理想の社会を目指す上で大切な要素である。

そこで今回は、SDGsと人権について解説し、日本国内の問題や改善のための取り組み事例もあわせて紹介する。

SDGsと人権の尊重

まずはSDGsにおける人権の尊重について具体的に解説しよう。

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と人権

2015年9月にこのアジェンダが採択され、人権保護に関する内容も明文化された。

SDGsはアジェンダ内に掲げられている17の目標であり、人権についてもその重要性が示されている。

前文では、SDGsの目標とターゲットは2000年に発表されたミレニアム開発目標(MDGs)を基にした内容であること、MDGsの達成できなかった部分もすべて実現させることが説明されている。

そして、これらの目標はすべての人々が人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指すものと示されている。

さらに、各節でも人権に関わる課題が多く記載されている。

第8節では目指すべき世界像として「我々は、人権、人の尊厳、法の支配、正義、平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界を思い描く」とある。

人種や民族、ジェンダーによる違いを尊重して多様性を認めあうことで、人類は本来の能力を発揮することができるだろう。

そのためには、子どもや女性・女児に対する暴力や差別を根絶して、すべての人に公正な社会でなければならない。

第10節には主要な原則が示され「新アジェンダは、世界人権宣言、国際人権諸条約、ミレニアム宣言及び 2005年サミット成果文書にも基礎を置く。」とある。

さまざまな課題はあるものの、根幹にある考え方はすべての人の人権を守るためにあらゆる差別をなくすことが原則としてある。

また、第19節にも「すべての国が国連憲章に則り、人種、肌の色、性別、言語、宗教、政治若しくは信条、国籍若しくは社会的出自、貧富、出生、障害等の違いに関係なく、すべての人の人権と基本的な自由の尊重、保護及び促進責任を有する」と示されている。

全人類の人権と自由は、国や宗教、貧富の違いや障害の有無に関わらず尊重されなければならないのである。

SDGsの目標と人権

ここからは、SDGsとして人権に関わる目標を紹介する。

目標4「質の高い教育をみんなに」では、教育を受ける権利が掲げられている。

開発途上の地域では貧困や紛争により、多くの子どもたちが学校に行けず学ぶ機会を失っている現状がある。

さまざまな取り組みにより2000年以降は大きな進歩が見られ、2015年には学校に通えない子どもが約半数にまで減少した。

しかし、情勢悪化などにより状況が悪転している地域もある。

また、貧富の差による不平等さも残っており、今後も教育格差を是正して公平な権利のためアプローチを続けていくことが必要だ。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、女性に対する差別の撤廃を大きな目標としている。

昔と比べて改善はしているものの、雇用機会の不平等、暴力や虐待、不公平な家事労働、政治への参入など、さまざまな面で差別を受けている女性・女児は未だ多く存在している。

ジェンダーによる違いで人権が損なわれないよう、全世界で差別を撤廃しなければならない。

目標8「働きがいも経済成長も」は、奴隷、強制労働、人身取引の禁止にもつながる。

これら個人の人権を無視した強制的な労働は早急に根絶する必要がある。

そして、働きがいを感じながら人間らしく働ける「ディーセント・ワーク」を目指して、誰もが仕事を選択できる社会にしなければならない。

目標16「平和と公正をすべての人に」では、生命や自由、身体の安全に対する権利が主張されている。

不安定な情勢や武力紛争、法のない地域では、身の安全が保障されておらず、生命危機のリスクにさらされ続けることになるだろう。

安全で平和な世界を目指すことによって、命に関わる人権を守ることにもつながる。

日本における人権問題

それでは、ここからは日本国内における人権問題について詳しく見ていこう。

女性

日本では依然として女性に対する役割などの意識が残っている傾向にあり、「女性はこうあるべきだ」「女性らしく」などの考えが男女差別を生み出している。

さらに、その格差が犯罪にまで及ぶケースがあり、配偶者などからの暴力(DV)や性暴力、職場におけるセクシャルハラスメントはその代表例だろう。

また、近年は出産や妊娠を理由としたマタニティハラスメントなど、さまざまな面で差別的な扱いを受ける可能性があり、女性の人権は侵害されやすい状況にある。

子ども

人は誰もが人権を尊重されて守られるべきであり、当然それは子どもでも同様だ。

しかし日本では、いじめ、体罰、虐待、性被害など、子どもに対する人権侵害が課題となっている。

特にいじめによる被害は多く、近年はSNSの発達によって複雑化しており、より深刻になっている。

そのことが原因で自殺まで追い込まれているケースも多く、子どもたちの人権を早急に守らなければならない。

障害のある人

障害のある人に対して、就職や職場などで不当な扱いをしたり、差別的な言動をしたり、アパートへの入居を断ったりなど、人権を無視した行為が発生している。

これは、障害のある人に対する充分な理解をしておらず、必要な配慮が不足していることが原因であろう。

まずは、ひとりひとりが障害について知ることから始め、少しずつ理解を深めていくことが大切だ。

ホームレス

ホームレスとなった人に対して、いやがらせや暴力、店舗や宿泊施設への入店を断るなどの不当な扱いをするケースが発生している。

この課題に対しては、ホームレス及び近隣住民の双方の人権に配慮しつつ、偏見を解消して救済活動に取り組むことが重要である。

日本における人権保護の取り組み

日本では人権に関する多くの課題を抱えているが、同時にさまざまな取り組みが行われている。政府と企業の活動に分けてその一部を紹介しよう。

政府

平成28年4月「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」を施行し、女性の職業生活における環境整備のため、女性の活躍状況における調査や課題分析などの公表を義務付けた。

全国の小・中学校の児童・生徒に「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)を配布して、教師や親に言えないような子どもの悩みまで把握することで、人権問題の解決につなげている。

平成30年7月には「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」を策定し、人権啓発や相談、調査救済活動に取り組んでいる。

企業

①パナソニック株式会社

カンボジア農村部の識字率アップに役立てたり、ミャンマーの寺子屋を支援したりするため、ソーラーランタンの寄贈をしている。

カンボジアは識字率が低く貧困の原因ともなっているが、電力供給が不安定で、一部の地域では暗くなると勉強することも難しい。

現在、ランタンを利用して識字教室が開かれ、20代から50代の人々が勉強している。

②佐川急便株式会社

トラックを使用せず、台車や自転車で集配を行う「サービスセンター」を設置。地域展開することで女性の雇用創生にも役立てている。

地域のシルバーセンターに登録する高齢者を配達員として雇用することで、生涯現役社会の実現を目指し、同時に地域の見守り強化にも貢献している。

このように具体的な課題解決に取り組む企業を紹介した。

協和キリンでは、全従業員を対象とした「人権啓発研修」を実施、さらにハラスメント、障害、LGBTといったあらゆる相談窓口や、人権に関する内部通報制度を設置し、当事者をサポートするシステムも構築した。

キリングループ全体と連携したキリングループコンプライアンス・人権意識調査を毎年実施し、常に状況と課題を把握して取り組みを強化している。

より詳細な取り組み内容についてはこちらから

まとめ

今回はSDGsと人権について解説した。

2030アジェンダでも人権の保護について明文化されており、SDGsの各目標でも人権に関わる内容は多く設けられている。

日本でも当然重要視されていることではあるが、現在でも女性や子ども、障害、ホームレスに対する人権侵害は解決できていない問題だ。

ひとりひとりが正しい認識と知識を持って人権に配慮することが大切であり、SDGs達成のためには全人類の人権保護が必要不可欠である。

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