社会との共有価値 【解説記事】サーキュラーエコノミーとは?身近にある循環型経済の事例を紹介

サーキュラーエコノミーとは?身近にある循環型経済の事例を紹介 サーキュラーエコノミーとは?身近にある循環型経済の事例を紹介

現在、世界中で推進されているサーキュラーエコノミーは、廃棄を前提としない経済活動のあり方である。

今回は環境問題を解決し、限りある資源を有効活用する上で欠かせない『サーキュラーエコノミー』の概要や取り組み事例を解説していく。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、資源の廃棄を前提とした『リニアエコノミー』に代わる、廃棄を前提としない経済モデルのことだ。

この表はスクロールしてご覧いただけます

サーキュラーエコノミー リニアエコノミー
製品・部品・資源を最大限に活用し、それらを消費することなく永続的に再生・再利用するあり方 大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする経済活動

サーキュラーエコノミーでは、3Rと呼ばれる「リデュース(排出削減)」「リユース(製品・部品の再使用)」「リサイクル(資源の再生利用))」を配慮する必要がある。ほかにも、資源の消費量を抑えたりストックの有効活用をしたりなどの配慮すべき点は多い。

なお、サーキュラーエコノミーの推進は不可欠だが、資源循環を可能にする体制づくりのため多くの資源やエネルギーが必要となる側面もあることを忘れてはいけない。

サーキュラーエコノミーを闇雲に推進するのではなく、環境負荷を軽減するために有効な範囲・方法でサーキュラーエコノミーに転換していく必要があるだろう。

また、廃棄物の発生防止を目標に掲げるSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の目標12とも深く関わる。詳しくは、「SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の取り組み内容」を参照してほしい。

サーキュラーエコノミーが注目されている背景

現在、サーキュラーエコノミーが世界中で注目される背景には、2つの要因がある。

  • 環境問題の深刻化・資源不足への対応
  • ESG投資の拡大に伴う企業の競争力確保

この項目では背景の解説と、どのようにサーキュラーエコノミーに結びつくのかを解説していく。

環境問題の深刻化

これまでの大量生産・大量消費に伴い、環境問題や天然資源の不足が深刻化していることが背景のひとつだ。

新興国の経済発展や世界的な人口増に伴い、資源・エネルギー・食料需要は増大し、廃棄物量も増加の一途をたどっている。その結果、以下の事態を招いている。

  • 気候変動や海洋プラスチック問題などが深刻化
  • 水や食料・希少資源などの供給が需要に追い付かなくなる

このままリニアエコノミーによるビジネス形態を継続していたのでは、世界的に経済活動の持続が難しくなると予測されるため、サーキュラーエコノミーへの転換が求められている。

ESG投資の拡大

2つ目の背景であるESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業に対して行う投資だ。

欧米を中心に世界的に注目を集めるESG投資は、2018年には30.7兆ドルまで拡大しており、投資市場の約3分の1を占めている。

このように循環型の経済活動を適切に評価する市場が生まれていることが、企業にとってサーキュラーエコノミーを推進する理由となっている。循環性の高いビジネスモデルへの転換は、事業活動の持続可能性を高め、中長期的な競争力の確保にもつながるといえるだろう。

サーキュラーエコノミーのビジネスモデルの例

ここでは、サーキュラーエコノミーへの転換を図ることのできるビジネスモデルについて、5つの例を紹介する。

  • サーキュラー型のサプライチェーン
  • 回収&リサイクル
  • 製品寿命の延長
  • シェアリング・プラットフォーム
  • サービスとしての製品

サーキュラー型のサプライチェーン

サーキュラー型のサプライチェーンとは再生可能な原材料やリサイクル率の高い資源を用いることで、環境負荷などを減らすモデルのこと。サプライチェーンで用いられる原料の例としては、下記がある。

この表はスクロールしてご覧いただけます

再生可能な資源 風力発電、水力発電など
再生可能なバイオ素材 ユーカリ・ウッド、ケナフなど
再生可能な人工素材 リサイクルポリエステルなど

このような再生可能な原料を用いてモノづくりをすることで、調達のためのコストを抑えたり、安定した調達をしたりすることが可能となる。

回収&リサイクル

回収&リサイクルは、従来であれば廃棄するような設備・製品を再利用することで、生産や廃棄にかかるコストを抑えることができるビジネスモデルだ。

例えば、下記があげられる。

  • 使用済みペットボトルからペットボトルに再生する
  • 自動車から回収した金属やパーツを自動車の製造に再利用する
  • フリマアプリで中古品を販売、購入する

などの方法が、このビジネスモデルに該当する。回収&リサイクルでは、回収した製品をできる限りそのままに近い形で再利用することで、コスト削減効果などをさらに高めることが可能だ。

製品寿命の延長

修理やアップグレード・再販売によって使用可能な製品を活用するビジネスモデルが、製品寿命の延長だ。製品の寿命を延ばし買い替えの機会を減らすことで、廃棄物の発生や新たな資源の消費を減らすことができる。

例えば、下記があげられる。

  • 家電や衣類の修理サービス
  • 自動車をパーツレベルでアップグレードするサービス

消費者も、壊れたり古くなったりしたら買い替えるのではなく、補修・バージョンアップで同じ製品を長く使い続けることを選択するよう心がけることで、製品寿命の延長の普及を後押しすることができるだろう。

シェアリング・プラットフォーム

シェアリング・プラットフォームとは、モノや資産などをシェアする(貸す)ことで収入を得るビジネスモデルのことだ。

例えば、下記があげられる。

  • 空き家・空き部屋を活用した民泊サービス
  • 自動車のシェアリングサービス

使用していない資産(製品)を貸したり共有したりすることによって、1つの資産を無駄なく活用できる。加えて、その製品を必要な人全員が1つずつ保有する必要がなくなるため、製品の製造にかかる資源の消費量を減らせる。

製品のサービス化

製品のサービス化とは、製品自体を売るのではなく、製品を利用できるサービスを売り、消費者は利用に応じて料金を支払うというビジネスモデルだ。

近年、急速に浸透しているサブスクリプション系のサービスが代表例と言えるだろう。例えば、家電・洋服・自転車・自動車など、多様なサブスクリプションサービスがすでに利用されている。

サーキュラーエコノミー推進に向けた取り組み

サーキュラーエコノミーの推進に向けて、どのような取り組みが進んでいるのだろうか。ここでは、日本と海外の取り組みを紹介していく。

日本の取り組み

2020年5月に経済産業省が「循環経済ビジョン2020」で、これからの循環経済政策の基本的な方向性を示した。指針で示されている取り組みのポイントは、次の3つだ。

  • 循環性の高いビジネスモデルへの転換
  • 市場や社会からの適正な評価
  • レジリエントな循環システムの早期構築

つまり、事業者にビジネスモデルの転換を促すだけでなく、循環型に転換した場合に投資家や市場から適正な評価を受けられる仕組みや、循環型の資源調達・流通がしやすい体制を合わせて整備する取り組みだ。

世界の取り組み

サーキュラーエコノミーの先進地域であるEUでは、2015年には「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を、2020年には「サーキュラー・エコノミー・アクションプラン」を定め、積極的な推進に取り組んでいる。

具体的な取り組み内容を一部紹介する。

  • 海洋プラスチックごみ大幅削減
  • 食品廃棄物削減
  • エコデザイン指令作業計画
  • 二次資源の品質基準の開発
  • 化学肥料に関する規則の改訂

今後も日本と海外での取り組みは増えていくだろう。

まとめ

廃棄を前提とせず資源を無駄遣いしない経済モデルであるサーキュラーエコノミーは、今後も持続可能な経済活動をする上で欠かせない。環境負荷の軽減という趣旨を踏まえ、必要以上の資源を費やすことなく循環型経済へ転換を図っていくことが求められる。

協和キリンの「社会との共有価値」についてもっと知る

トップへ戻る