社会との共有価値 【解説記事】カーボンニュートラルとは?SDGsとの関係や実現に向けた企業の取り組み

2020年度における日本の温室効果ガス総排出量は、11億4,900万トンにもおよぶ。温室効果ガスは地球上のあらゆる生物に影響を与え、国を問わず喫緊の課題となっている。

こうした温室効果ガス削減に向けて目指しているのが「カーボンニュートラル」だ。

今回は、SDGsの目標7と13の達成に関わるカーボンニュートラルの基礎知識を紹介する。

カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体として実質的にゼロにすることだ。実質的なゼロとは、温室効果ガスを排出したとしても、同量の温室効果ガスを吸収する取り組みを行えば、地球上の総量に与える影響は差し引きゼロにすることを意味する。

カーボンニュートラルの実現には、化石エネルギーの使用を減少させ、省エネを徹底することが重要だ。あわせて、再生可能エネルギーをはじめとした非化石エネルギーの導入を拡大する必要がある。

2020年10月に行われた菅首相(当時)の所信表明において、政府が「カーボンニュートラルを2050年までに実現すること」を宣言したことで、カーボンニュートラルへの国内の注目が高まった。

EU諸国や中国など、日本に先立ち実現目標を表明した国も見受けられ、今やカーボンニュートラルは、日本に限らず世界各国が実現を目指す目標といえるだろう。

カーボンニュートラルが求められる背景

カーボンニュートラルが世界規模で求められる背景には、深刻な地球温暖化による気候変動問題がある。

世界の平均気温は、2017年時点で1900年ごろと比べて約1℃上昇し、今後も二酸化炭素などの温室効果ガスへの対策を行わなければ、上昇は続くだろう。

温暖化が解決しなければ、気候変動によって懸念されている自然災害・健康・農林水産業などへの影響が現実となる。

具体的な影響の例として、次のようなものが挙げられる。

  • 豪雨による大規模な水害
  • 高温・少雨による森林火災の多発
  • 異常な降雪による都市機能の停止や、海水面の上昇に伴う都市の水没
  • 猛暑日や干ばつの増加による健康被害
  • 降水量や気温の変化による作物の不作

こういった事態を回避するためには、今後、世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑える必要があると考えられている。とはいえ、温室効果ガスの排出自体をすぐにゼロにするのは難しいのが現状だ。だからこそ、実現可能なカーボンニュートラルが重要視されている。

カーボンニュートラルの取り組みはSDGsの目標達成につながる

カーボンニュートラルと関連するSDGsの目標は、次のふたつだ。

カーボンニュートラルと関連するSDGsの目標
目標7
  • 「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
  • 安全で安価なエネルギーの確保や、エネルギー効率の改善などの目標
目標13
  • 「気候変動に具体的な対策を」
  • 温暖化に伴う気候変動の緩和や、発生する災害への適応などの目標

カーボンニュートラルの実現に取り組むことは、以上のようなSDGsの目標達成につながる。

例えば、カーボンニュートラルを実現するために、企業が積極的にバイオマスエネルギーを使うことで温室効果ガスの発生を実質ゼロにすれば、再生可能でクリーンなエネルギーの利用割合は拡大するだろう。そうすれば、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の実現に大きく近づくことができる。

また、カーボンニュートラルは気候変動の緩和にも役立つため、目標13の実現に直結するといえる。

なお、SDGsの目標7、目標13の詳細は以下の記事でも紹介している。

カーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組み

カーボンニュートラル実現に向け、すでに多くの企業が取り組みを始めている。ここでは、次の4つの事例を紹介する。

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カーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組み例
国本工業株式会社 グリーン電力の購入で消費エネルギーのカーボンニュートラルを実現
マテックス株式会社 温室効果ガス排出量の可視化や電力使用量削減でカーボンニュートラルに貢献
株式会社Clear 日本酒醸造工程の温室効果ガス排出量可視化や包装資材の切り替えなどでカーボンニュートラルに貢献
東洋アルミエコープロダクツ株式会社 容器包装の脱プラスチックや循環型システム実現への取り組みを通じてカーボンニュートラルの実現を推進

カーボンニュートラル実現に向けた実際の取り組み例を把握し、より具体的なイメージをつかもう。

国本工業株式会社

パイプ加工品といった自動車部品製造や、金型の設計・製作などを手がける国本工業株式会社は、製造工場などで消費するエネルギーのカーボンニュートラル化を達成した企業だ。

カーボンニュートラルを実現するために同社では、以下の取り組みを行っている。

  • 工場に太陽光発電パネルを設置
  • グリーン電力を購入

グリーン電力とは、二酸化炭素を排出しない発電方法で作られた電気エネルギーのことだ。太陽光や風力・水力・地熱といった自然エネルギーを活用したものや、バイオマス発電などが含まれる。

自社で発電設備を準備できない場合や、準備できたとしても消費電力を100%カバーできない場合でも、グリーン電力証書を購入し使用することでカーボンニュートラルの実現を目指せる。

同社では、製品をカーボンニュートラルが実現した環境で生産していることを訴求し、企業競争力の向上にもつなげている。

マテックス株式会社

建築用ガラスやサッシの卸販売を中心に行うマテックス株式会社は、社内だけでなく、社会全体のカーボンニュートラルの実現に向けた複数の取り組みを行っている企業だ。

同社では、自社のカーボンニュートラルの実現に向けて、次のような取り組みを行っている。

  • 温室効果ガス排出量の可視化
  • 照明をLEDに変更
  • 省エネに向け設備や運用方法を改善
  • 配送業務を効率化

これらに加え、同社のエコガラスの普及を促進することで、自社以外の温室効果ガス排出量の削減にも貢献している。

株式会社Clear

ラグジュアリー日本酒ブランドのグローバル展開や、日本酒専門メディア「SAKETIMES」運営を手掛ける株式会社Clearは、日本酒製造の持続可能性実現に向け、カーボンニュートラルに取り組む企業だ。

取り組みの代表例として、次のようなものがある。

  • 日本酒のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量の見える化
  • パッケージ資材を環境負荷の小さいものへ切り替え

カーボンニュートラル実現への取り組みという同社のサステナビリティな姿勢は、海外展開するうえでも大きな利点となっている。

東洋アルミエコープロダクツ株式会社

東洋アルミエコープロダクツ株式会社は、食品容器や包装資材の製造・販売などを行う企業だ。同社では、容器包装の脱プラスチックや循環型システム実現への取り組みを通じて、カーボンニュートラルの実現を推進している。

同社の取り組みの代表例は、次のとおりだ。

  • 脱プラスチック素材の提案・販売
  • 紙コップたい肥化の実証実験へ参加
  • オリジナルのマークで環境に配慮した製品を消費者に訴求

自社だけでなく社会全体を視野に入れてカーボンニュートラル実現を推進するあり方は、今後、企業に求められる姿勢といえるだろう。

まとめ

カーボンニュートラルは、温室効果ガス排出量を完全にゼロにできなくても、実質的に排出総量をゼロにできる取り組みだ。気候変動の影響を抑え、SDGsの目標を達成するうえで重要な役割を果たすカーボンニュートラルに、私たちも取り組んでいく必要がある。

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