People & Culture 【解説記事】企業の「健康経営」とは?注目される背景や取り組み事例を紹介

企業の「健康経営」とは?注目される背景や取り組み事例を紹介 企業の「健康経営」とは?注目される背景や取り組み事例を紹介

企業の経営戦略のひとつとして、「健康経営」を実践する企業の動きも活発になってきた。これから就職する学生においても、働き方の面で健康経営に関心をもつ人もいるのではないだろうか。

この記事では、健康経営とは具体的にどのようなことをいうのか、具体例を紹介していく。加えて、注目されているSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )との関連も踏まえながら健康経営について解説していく。

組織を活性化する「健康経営」とは

健康経営とは、経営的な視点で従業員などの健康管理を考え、戦略的に健康管理を行っていくことだ。

企業の健康経営によって期待されるのは、従業員の活力や生産性の向上、または、組織の活性化による企業の業績向上や株価向上である。単なる福利厚生ではなく、戦略的な経営であるのが健康経営の特徴だ。

日本国内においては、日本再興戦略、未来投資戦略の「国民の健康寿命の延伸」にかかわる取り組みのひとつに位置付けられる。

2014年からは経済産業省による「健康経営銘柄」の選定、2016年からは「健康経営優良法人認定制度」も導入されており、国も推進を進めている取り組みだ。

健康経営が注目された3つの背景

近年、注目されるようになった健康経営だが、国による推進以外に、何が注目に至る要因になっているだろうか。

注目されている背景としては、労働人口の減少、国民医療費の増加、SDGsの達成の3つが考えられる。

1.労働人口の減少

厚生労働省作成の「令和2年版厚生労働白書」によると、2019年に6,724万人いる労働人口(就業者数)は、このままだと2040年には5,245~6,024万人に落ち込むと予想されている。

労働人口の減少を受けて進められているのが、生涯現役社会の構築だ。生涯現役社会とは、心身の健康状態に応じ、個々人が経済活動や社会活動に参画できる社会のこと。

生涯現役社会実現のためには、第1次の予防策として、人々が健康に過ごせるインフラづくりが重要とされている。このような社会の流れを受けて、人々の健康状況を改善する取り組みとして健康経営が注目されるようになった。

2.国民医療費の増加

「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(平成30年5月21日)によると、2018年度は45.3兆円ほどであった国民医療費が、2025年には54.4~54.9兆円、2030年には61.7~62兆円にまで拡大すると見込まれている。

年齢別に見ると、高齢者の国民医療費が高いのはもちろんだが、現役世代だと40代以上の国民医療費も高い。このことから健康状況の改善は、高齢者だけの問題でないことがわかる。

そこで、注目されているのが健康経営だ。企業のリスクマネジメントや生産性向上につながることから注目されるようになった。

3.SDGsの達成に向けた取り組みを実施

SDGsは、2015年9月の国連サミットで策定された国際的な目標だ。2001年から2015年までの目標として策定、実施されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として誕生した。

SDGsは、2030年を達成年限に、15年間の持続可能な目標として策定されている。

SDGsについては、以下で詳しい説明があるので参考にしてほしい。

SDGsの達成にあたっては、全部で17の目標が設定されている。このうち、「健康経営」に関連するのが目標3、目標5、目標8、の3つだ。

目標3は、「すべての人に健康と福祉を」。あらゆる人の健康的な生活の確保と福祉の促進を目指した目標だ。目標3については、以下の記事で詳しく解説している。

目標5は、「ジェンダー平等を実現しよう」。社会的に立場が弱くなりやすい女性や女児の活躍や母子の保健サービスの拡大などを目指した目標だ。詳しくは以下の記事で解説している。

目標8は、「働きがいも経済成長も」。持続可能な経済成長と雇用、働きがいのある適切な社会保障のある生産的な仕事を目指した目標だ。働きがいのある生産的な仕事という意味で、健康経営と関係している。

健康経営に関する国や自治体の取り組み

健康経営を促進するために国や自治体はどのような取り組みを行っているのか紹介する。

次世代ヘルスケア産業協議会

次世代ヘルスケア産業協議会は、「健康・医療戦略推進本部」のもと、2013年4月に設置された官民一体の検討の場だ。

民間における健康寿命延伸分野のさまざまなサービスや製品を把握し、供給と需要の両方から課題や問題点を洗い出して整理したうえで、対応策を検討することを目的とする。

議論が進められている主な検討事項は、以下のとおりだ。

  • 新たな健康関連製品やサービスを生み出すための事業環境の整備について
  • 健康関連製品などの品質評価をどうするか
  • 企業や個人などへ、健康経営や健康投資を促すための方策についてなど

健康経営都市宣言

北海道岩見沢市では、健康経営の考えから、市民主体の、だれもが健康、かつ心豊かに暮らせるまちづくりをテーマとした取り組みを行っている。

健康経営都市を実現するために、岩見沢市が掲げているのは、以下の6つの目標だ。

  • 目標1.地域で支え合う安心・安全なまち
  • 目標2.みんなが健康で元気に暮らせるまち
  • 目標3.活力と賑わいに満ちた魅力あふれるまち
  • 目標4.豊かな心と生きる力をはぐくむまち
  • 目標5.自然と調和した快適で暮らしやすいまち
  • 目標6.市民とともに創る持続可能で自立したまち

この中でも市民の健康に関連が深いのが、目標2だ。目標2では、健康づくりの推進、地域福祉の推進、社会保障制度の適切な運営、など健康経営を実現するための、幅広い取り組みが目標として設定されている。

企業が行っている健康経営の取り組み事例

次に、民間企業での健康経営の取り組み事例をいくつか紹介する。

アートコーポレーション株式会社

アートコーポレーション株式会社は、引越業界ではじめて定休日を設定した。全国の支店を対象に、月末や繁忙期を除き、毎週火曜日、または毎週水曜日を定休日としている。

それまで定休日がなかった引越業界においては、大きな一歩となった。従業員にとって働きやすい環境を目指したものであって、健康経営の取り組みのひとつといえるだろう。

なお、アートコーポレーション株式会社の労働環境改善の取り組みは一定の評価を得て、2020年度と2021年度の「健康優良法人」に選定されている。

ザ・コーポレートゲームズ 東京

コーポレートゲームズとは、8歳から120歳まで、だれでも参加できるスポーツの大会である。ザ・コーポレートゲームズ東京2018では、健康経営として、ふたつの取り組みが実施された。

ひとつは、ミズノ株式会社と協力して行われた、通勤時のウォーキングシューズの推奨だ。歩く習慣をつくることを目的に実施された。

もうひとつは、健康意識に役立つアプリの利用推奨である。三井住友海上火災保険株式会社の協力のもと、ストレスや歩数を可視化するアプリの導入により、健康意識を高めるきっかけづくりを行った。

株式会社名古屋銀行

株式会社名古屋銀行は、名古屋銀行健康宣言のもと、役職員がいきがい、やりがいをもって働けるよう、健康保持や増進に向けた取り組みを実施している。

「からだの健康」「こころの健康」「職場環境の改善」の3つを軸にした取り組みは以下のとおりだ。

  • からだの健康:定期健康診断受診の徹底、特定保健指導実施の向上、ストレスチェックと保健指導
  • こころの健康:メンタル不調者のサポート、ケアの充実
  • 職場環境の改善:受動喫煙対策、労働時間の適正化

協和キリン株式会社

協和キリングループでは、2015年に「健康宣言」を発信し、企業価値向上を実現するCSV経営の一環としての健康経営を行っている。会社と健康保険組合との協働で、従業員の生活の質を向上させる取り組みを実施しているのが特徴だ。

宣言時の、「協和キリングループ Wellness Action 2020」から、さらに強化した「協和キリングループ Wellness Action 2025」に現在は取り組んでいる。

協和キリングループが実施している健康経営の取り組みは、ポジティブメンタルヘルス職場ショート研修、本社健康フェス、ウォーキングキャンペーン、禁煙外来や補助薬の費用補助など。その取り組みは、多岐にわたる。

さらに、これらの取り組みは一定の評価を得て、協和キリンはホワイト500に5年連続認定された。ホワイト500とは、「健康経営優良法人認定制度」で認定を受けた企業のうち、上位500社のことをいう。

その他、協和キリンの具体的な取り組みについては、こちらで詳しく解説している。

まとめ

健康経営とは、経営戦略のひとつとして、従業員の健康管理を行っていくことをいう。SDGsの達成などもあって、近年注目を集めるようになった。働きやすさにも関わることなので、企業について調べるときは、健康経営にも目を向けてみると良いだろう。

協和キリンの「People & Culture」についてもっと知る

トップへ戻る