社会との共有価値 【解説記事】SDGsとは?17の目標・取組事例をわかりやすく解説!
日常生活を送るうえで多くの人が意識しないうちに、国連による世界的な決定に基づいた暮らしを送っていることを知っているだろうか。
例えば、先進国を中心に二酸化炭素排出量などの削減を目標とした「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(通称:京都議定書)」が挙げられる。
近年、その中でも特に注目を浴び、さまざまな取り組みが行われているのが「SDGs」といわれる取り組みだ。
そこで、この記事では「SDGs」の概要をわかりやすく解説する。また、各国でどのような取り組みが実施されているのか、事例とともに紹介していく。
SDGsとは、国連で決めた「持続可能な開発目標」のこと
SDGsとは「エス・ディー・ジーズ」と読み、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称のことだ。
2001年から2015年まで策定・実施されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継で、2015年9月の国連サミットで策定された。15年間の持続可能な目標として、2030年を達成年限としている。
SDGsはMDGsで策定されて以降の世界情勢の変化によって顕在化した課題へ対応できるよう、目標を8から17へ増加させた。
MDGsの目的が発展途上国の課題解決だったのに対し、SDGsは気候変動や国際平和など先進国の課題解決も加え、すべての国に該当する包括的な内容である。次の項目では、SDGsが掲げる17の目標と169のターゲットをわかりやすく解説していく。
SDGs「17の目標」と「169のターゲット」をわかりやすく
先述したとおりSDGsは、持続可能でより良い世界を実現するための17の目標と169のターゲットから構成されている。先進国や発展途上国に限らず「地球上の誰一人として取り残さない」という誓いのもと、さまざまな観点から課題に対する目標が定められた。
ここでは、わかりやすく17の目標と169のターゲットを解説していこう。
SDGs17の目標とは
SDGsが掲げる「17の目標」とは、世界中の人々が平等かつ安全に生きることのできる社会を作るための目標のことで、17種類それぞれが現在の世界が抱える包括的な課題である。
目標の中には飢餓や貧困の問題に対するものもあれば、気候や生態系など環境問題に対するものもある。
気候や生態系などの環境問題であれば、昨今の気候変動や外来生物の増加などで身近に感じる人も多いのではないだろうか。
一方で、飢餓や貧困というと、発展途上国の問題のように思える方も多いだろう。しかし、実際は日本社会にも子どもの貧困などの貧困問題が存在していることが報道などで取り上げられている。
国連が定めた17の目標は以下になる。
- 目標1.あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 目標2.飢餓をゼロに
- 目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- 目標4.すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- 目標5.ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- 目標6.すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
- 目標7.手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- 目標8.すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
- 目標9.レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
- 目標10.国内および国家間の不平等を是正する
- 目標11.都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
- 目標12.持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 目標13.気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 目標14.海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 目標15.森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 目標16.公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
- 目標17.持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する
出典:国連本部のウェブページ
一見グローバルなものに見える17の目標だが、それぞれを国や地域の実情に置き換えることで、国だけでなく、自治体・企業・私たち一人ひとりも活動できることが見えてくる。
なお、国では地方創生SDGsローカル指標リストという、SDGsの目標を国や地域レベルへ置き換える資料を作成、公開中だ。
169のターゲットとは
169のターゲットは、17の目標でかかげたゴールへ辿りつくためのターゲットのことだ。言い換えると17の目標をより細分化し、詳細な行動指標や目標を定めたものである。
17の目標で11番目である「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」を例にあげると、ひとつの目標に対し10種類のターゲットが存在する。
その内容の一部は、以下のとおり。
- 弱い立場の人々、女性、子ども、障害者、高齢者のニーズに特に配慮した安全・安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスの提供
- 貧困層や弱い立場の人々の保護や災害による被害を削減し、経済損失を大幅に減らす
- 財政的・技術的支援を通じて、後発開発途上国への現地の資材を用いた持続可能かつ強靭な建造物の整備
これらは、現代社会および国際的な問題である「さまざまな要素で生まれた格差」を解消するためのターゲットだ。
また、17の目標や169のターゲットを達成するための行動が、複数の目標やターゲットの達成にも波及することになる。
例えば、再生可能エネルギーを促進すると環境保全につながり、安全なエネルギーが手軽に利用できる社会になる。
また、エネルギーの発展によって貧困層へ効率よく食料等の支援ができるようになるだろう。このように、ひとつの行動によって数多くのメリットが生まれる仕組みになっている。
世界のSDGsの取り組み事例
193か国におよぶ国連加盟国のうち、積極的にSDGsへの取り組みを行っている国は日本のほかにも数多く存在する。その中には他国の参考となっている取り組みも少なくない。
各国の取り組みは、達成状況としてランキング形式で報告されていて、その最新版は「Sustainable Development Report 2019」で確認することができる。
そこで、この項目ではランキング上位となった北欧2国と日本国内の取り組みについて紹介していく。
事例:スウェーデンの場合
2019年6月発表のランキングでスウェーデンの達成度は世界2位だが、前回のランキングでは達成度1位。今回の1位との差は0.2ポイントと拮抗しており、そのSDGsへの積極性の高さがうかがえる。
そんなスウェーデンの特徴は、企業による取り組みが活発に行われていることだ。
世界的に有名な家具量販店IKEAがその代表格で、製品の60%以上に再生可能な素材を利用している。SDGsの達成年限である2030年には、再生可能素材とリサイクル素材の使用を100%にすることが目標になっている。
また、製品デザインは転用・修理・再利用・再販売・リサイクルを考慮した循環型を採用した。この取り組みは製品寿命を可能な限り長くできるだけでなく、将来の原材料バンクとしての利用も見据えている。
事例:デンマークの場合
2019年のランキングでスウェーデンを抜き、達成度1位となった国がデンマーク。北欧諸国はいずれも環境問題への意識が高いという共通点はあるが、デンマークがSDGs達成のために行った取り組みは、珍しいものだった。
それは、ヴィレッジを建設する「UN17 Village」といわれるプロジェクト。このプロジェクトは17の目標すべてを達成できるといわれている。建材はもちろん、使用されるエネルギーも再生エネルギーを活用する設計で、多くの企業が協力しているためだ。
また、社会においても企業協力によりプラスチック廃棄物の削減が進んでいることもデンマークの特徴だ。
事例:日本国内の取組事例
2019年のランキングによると、日本の達成率は15位とアジア諸国で最も高い順位だ。
より達成度を高めるためには国内の基盤整備が課題と考えられており、積極的に取り組むための「SDGs推進本部」を設置した。全閣僚を構成員としたもので、2020年には今後10年のうちに政府が取り組むべき目標を具体的にまとめたSDGsアクションプラン2020を策定した。
国内実施のために、以下の3本柱を展開する方針。
- ビジネスとイノベーション
- SDGsを原動力とした地方創生
- SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメント
これらの3本柱をもとに、以下8つの取組一覧が発表された。
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取組目標 | 行動の具体例・詳細 |
---|---|
1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等 | 働き方改革の着実な実施や子どもの貧困対策など |
2.健康・長寿の達成 | データヘルス改革や健康経営の推進など |
3.成長市場の創出、地域活性化 | 情報通信技術・研究開発強化や人材育成など |
4.持続可能で協調な国土の質の高いインフラの設備 | 戦略的な社会資本の整備や文化資源の保護など |
5.省・再生可能エネルギー | 再生エネルギーや新エネルギーの導入促進など |
6.生物多様性 | 大気保全・化学物質規制対策や持続可能な農林水産業の推進など |
7.平和と安全・安心社会の実現 | 再犯防止対策・法務の充実や子どもの安全など |
8.SDGs実施推進の体制と手段 | 広報・啓発の推進や市民社会との連携など |
上記は各取組目標の一部になる。中には日本国内のみを対象としてものに留まらず、国際協力につながる行動指針もかかげられている。詳細を知りたい人は出典先のSDGsアクションプラン2020を参考にしてほしい。
出典:SDGsアクションプラン2020(令和元年12月SDGs推進本部)
こちらの記事では、3本柱のひとつ「SDGsを原動力とした地方創生」を詳細に紹介している。ぜひ参考にしてほしい。
【企業事例】SDGsに取り組む日本企業が増えている
北欧諸国と同様、日本国内においても企業がSDGsの達成へ向けて、あらゆる事業で参入し、その数は増加している。
株式会社 博報堂
SDGsプロジェクト事業を立ち上げた博報堂での取り組みのひとつは、SDGsの目標やターゲットの日本語訳による、社会認識向上への協力。
このほかにも、飢餓をゼロにする目標を掲げている。例えば、災害時の食料不足による飢餓に対し、食料備蓄について考えて実践する非常食に関するイベントを開催するなど、さまざまなプロジェクトが進められている。
株式会社 ベネッセホールディングス
教材の販売や通信教育サービスを手掛けるベネッセでは、「質の高い教育をみんなに」の目標を掲げている。例えば、地球環境に良いこと・悪いことを分かりやすく伝えるイベントを開催している。
これは、子ども自身が環境のために考えられる力をつけて行動することで、持続可能な状態で地球を次世代へ残すための取り組みといえるだろう。
株式会社 協和キリン
協和キリンでは、経営理念に基づいたCSV経営の実践に取り組んでいる。
CSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)経営とは、自社の事業によって社会貢献すること。社会課題への取り組みである「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」を両立させることで、企業価値向上を実現するCSV経営を実践している。
まとめ
世界が抱える問題を解消するため、国連主導によるさまざまな取り組みが行われている。各国の取り組みはSDGsが定めた17の目標と169のターゲットに基づいており、自国のみならず国際協力や企業間の協力にも発展していることが特徴だ。