社会との共有価値 【解説記事】SDGsの達成に向けた日本の取り組みとは?海外から学ぶ取り組み事例も紹介
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の達成に向けて、世界ではさまざまな取り組みが行われている。
日本でも政府や企業がプロジェクトを立ち上げて、あらゆる課題を解決するための事業を展開しているが、具体的にはどのような活動が行われているのだろうか。
今回は、国内外で実施されているSDGs達成への取り組みを紹介する。
日本でのSDGs達成への取り組み
SDGsの達成に向けて、日本で行われている取り組みについて紹介していく。
日本政府の取り組み
SDGsを達成するために、日本政府は2016年5月に「SDGs推進本部」を設置した。
本部長に内閣総理大臣、副本部長に内閣官房長官と外務大臣を据えて「SDGs実施指針」を策定し、国内の状況に合わせた課題と主要原則を提示することで、より取り組みやすい具体的な目標を示している。
2018年には地方創生を推進するために「SDGs未来都市」を選定し、SDGs達成に向けた取り組みで大きく貢献した地域や都市を厳選した。そして、特に優秀な取り組みはモデル事例として取り上げ、各地域に応じた活動を推進している。
加えて日本では、脆弱な立場にある人々に着目した『人間の安全保障』の考え方を国際社会で長年にわたり主導している。そのため、SDGsとは考え方が一致しており親和性が高いといえるだろう。
また2012年の国連総会決議においては、人間の安全保障の基本理念を「人間中心」「誰一人取り残さない」と定めている。日本政府は人間の安全保障の観点に基づき、1999年に国連の「人間の安全保障基金」の設立を主導。2019年末の時点で、99の国・地域で257件のプロジェクトを実施し、累計で約4.3億ドルを拠出している。
各企業の取り組みも活発となってきており、2017年からは優秀な事業を実施した企業を「ジャパンSDGsアワード」として表彰している。
出典:「持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」(外務省)
SDGsアクションプラン2021
「SDGsアクションプラン」とは、日本政府が毎年発表しているSDGsの取り組み指針のことだ。SDGsアクションプラン2021年版では、次の4つの重要事項が定められた。
1.感染症対策と次なる備え
治療やワクチン、診断方法などの開発と普及、医療へのアクセス確保などを目指す。
2.よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
デジタル化やワークライフバランスの実現、イノベーションの進展などによって持続可能な社会を推進する。
3.SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
温室効果ガスや海洋プラスチックゴミの対策を行いつつ、各地域のSDGsへ取り組みを推進する。
4.一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速
分野を問わず、女性の参画やダイバーシティ、バリアフリーを推進し、子どもの貧困対策や教育のリモート化により、次世代へのSDGs浸透も図る。
中小企業のSDGsへの取り組み
日本の99%は中小企業が占めており、SDGs達成のカギにもなっている。中小企業によるSDGsの取り組みが、SDGs推進に関わるだろう。ここからは、中小企業が実際に行っている取り組み内容について紹介する。
ホットマン株式会社
タオル製品のメーカーとして原材料の綿花を取引するなかで、不平等な取引を余儀なくされている開発途上国の存在を知り、問題解決のためにフェアトレード商品を開始した。
フェアトレードとは、生産者から適正な値段で購入すること。あらゆる理由から低賃金で働く開発途上国の生産者から継続して取引を行うことで、経済状況の向上や自立を図る取り組みだ。
ホットマン株式会社がフェアトレード商品の開発に成功した結果、国内初の日本製フェアトレードコットンタオルの生産に成功した。セネガル産のコットンを使用することで、弱い立場にある生産者の生活を守り、持続可能な社会の実現に貢献している。
株式会社茨城製作所
社長自身がインド・バンガロールで2年間を過ごした経験から、同国民13億人の約1/4が十分なエネルギーアクセスを得られない生活を強いられていることを知り、課題解決に向けたビジネスを推進。現在はネパールを対象に以下の取り組みを実施している。
- 川などの水流を利用して発電する『軽水力発電機』の開発と製造を実施。
- 電力不足、無電化地帯でガラス窓がない学校に電気を供給。
- 加えて、夜間学習の子どもにランタンを配布することで学習環境に移動しやすくなった。
有限会社ワールドファーム
持続的な農業のために、地域一体型のプロジェクトである「アグリビジネスユートピア」を発足した。全国14ヶ所で事業を展開して、売上の改善と雇用創出に貢献している。
出典:「SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介」(関東経済産業局)
海外に学ぶ日本のSDGs
海外の取り組みを知ることは、SDGsに関する日本との違いや、新たな学びの発見へとつながる。ここからは、SDGsに対して海外ではどのような活動が行われているのか紹介する。
SDGsに対する日本と北欧の違い
北欧はSDGsへの意識が高く、国民にも考えが定着している。個々人が必要性を感じながら、地球の現状や環境について幼少期から学び、持続可能性についての理解を育んでいる点が、日本との違いを生んでいる要因だろう。
スウェーデンから学ぶ
スウェーデンは女性の社会進出が盛んで、世界的にもジェンダーの公平性が高い国のひとつである。
20世紀から国が社会福祉を目指す過程で、男女問わず労働力を求めたことがジェンダーの平等につながり、現在の手厚い保障や男性の育児休暇取得率の高さにも関連している。
日本でも女性管理職や男性の育休取得を推進している。今後も広まっていくことが期待される。
フィンランドから学ぶ
国と企業が連携して、観光地の文化や豊かな自然を守るためにレスポンシブルツーリズムに取り組んでいる。
フィンランド政府観光局は、観光業界が持続的に発展できるように、サステナブルな取り組みを行う企業や地域を認定するプロジェクトを開始した。
日本でも星野リゾートが、約70%の電力を自家水力発電や地熱システムによって生み出し、廃棄物をすべて再資源化することに成功している。斬新さだけに固執せず、ひとつずつ課題を解決していく取り組みによってSDGsの達成に貢献している。
まとめ
SDGsの達成に向けて、現在も政府や企業、個人レベルでさまざまな取り組みが進められており、少しずつ成果が出てきている。
協和キリンでもSDGs17の目標のうち、特に3,6,9,13の課題を重視し、例えばCO2排出量や廃棄物排出量の削減などの取り組みを行っている。