社会との共有価値 【解説記事】【わかりやすく解説】水力発電の仕組みとメリット・デメリット

現在、日本における発電の主流は火力発電だ。化石燃料を燃やして得られるエネルギーを電力へと変換する発電方法だが、二酸化炭素の排出量が多く、環境への負荷が大きいことが知られている。そこで注目されるようになったのが、クリーンエネルギーである水力発電だ。今回は、水力発電がどのような発電方法なのか、メリット・デメリットと近年の動きを解説していく。

水力発電とは水の流れを利用した発電方法のこと

水力発電は、高い場所から低い場所に水が流れる際のエネルギーを利用した発電方法をいう。水の勢いが発電用のポンプ水車を動かすことで発電機の動力となり、電気が生じる。

主な方式は、水路式(流れ込み式)、調整池式、貯水式、揚水式の4つだ。水路式は、水路や河川に発電用の水車を設置する方法で、河川などに流れ込む水をそのまま利用する。

調整池式、貯水式、揚水式は、いずれもダムや調整池を利用した発電方法だ。蓄えられた水の放水を調整できるため、需要に合わせた発電がしやすい。

なお、電気事業者の発電電力量は、2022年6月時点で、水力(揚水式含む)が80.8億kWhで全体の12.3%を占めている。火力発電が79.3%であるため、全体としての発電電力量はそこまで高くないのが現状だ。

出典:出典:電力調査統計|資源エネルギー庁別ウィンドウで開きます

水力発電のメリット

水力発電は、ほかの発電方法と比べてどのような特徴があるのか、4つのメリットを見ていこう。

1.安定的に供給できる

水力発電のメリットのひとつは、安定して電力を供給しやすいことだ。渇水のリスクがある以外は、太陽光発電や風力発電のように気象などの自然条件に大きな影響を受けない。

また、水路式以外の水を貯蓄しておくタイプの水力発電は、短い時間で発電を開始できて、電力需要に応じた調整がしやすい特徴がある。電力の消費は、季節や時間帯ごとに変化するが、そうした変化に合わせた供給がしやすい。

2.クリーンエネルギーである

クリーンエネルギーである点も水力発電の大きな特徴だ。発電量の多い火力発電は、石炭や石油、天然ガスを燃焼させてエネルギーを生み出すために多くの二酸化炭素を排出するが、水力発電はほとんど二酸化炭素を排出しない。

二酸化炭素の増加は地球温暖化を加速させる原因にもなるため、二酸化炭素をあまり排出しない水力発電は、地球温暖化の抑制にもつながる。大気中に二酸化炭素を含む温室効果ガスがあまり排出されないことから、環境にかかる負荷を抑えたクリーンエネルギーとして注目されているのだ。

クリーンエネルギーの種類や現状については、以下の記事で詳しく解説している。

3.再生可能エネルギーである

再生可能エネルギーとは、自然界に常時存在するエネルギーをいう。どこにでもあって、枯渇せず、二酸化炭素を増加させない(あるいは排出しない)のが再生可能エネルギーの特徴だ。

水力発電も再生可能エネルギーのひとつといえる。水力発電のエネルギー源である水は、河川から海に流れ、蒸発して雲になり、雨となって河川に戻るという流れを常に循環しているためだ。

枯渇せず繰り返し使えることから、日本ではFIT制度などで導入を促進している。

4.純国産のエネルギーを利用できる

純国産のエネルギーを活用できるのも水力発電のメリットだ。水力発電は、河川などに流れ込む水を利用することから、貴重な国産自然エネルギーとされている。

日本は、OECD諸国の中でもエネルギーの自給率が低水準であり、エネルギー資源のほとんどを、海外から輸入する化石燃料に依存している。

水力発電は、化石燃料を使用する火力発電などのようにエネルギー資源を輸入に依存しないことから、重要なエネルギー源として注目されている。

水力発電のデメリット

二酸化炭素の排出が少ないクリーンエネルギーや枯渇しない再生可能エネルギーという特徴、安定した供給がしやすいなど、水力発電はさまざまなメリットがある。しかし、良い点ばかりでないのも事実だ。水力発電のデメリットを3つ見ていこう。

1.初期費用が高い

水力発電は、設備投資などにかかる初期費用が火力発電や原子力発電と比べて高い。まず、水力発電所はすぐに設置できない。設置の前に河川流況の調査が必要になるためだ。

例えば、流量調査には最大1年以上が必要とされる。さらに、調査しても設置まで進むとは限らない。事業性が確保できないと設置まで至らないからだ。

調査は時間もコストもかかるため、参入のリスクが高く、新電力会社の新規参入の障壁にもなっている。

また、ダムを新設したり、水車や発電機などの設備を整えたりすると多額のコストがかかるのも大きな課題だ。

2.発電量が雨量に影響される

水力発電には渇水のリスクがある。渇水とは、降水が少ないなどの理由で河川の流量が減り、ダムの貯水が大幅に減少して、平常時と同じように取水できないことをいう。

渇水は、水力発電の発電量に影響を与えやすい。エネルギー源の水が減少、あるいはほとんどなくなることで、水の流れを利用した発電が思うようにできなくなるためだ。

雨量が極端に少ないなどで渇水が続くと、発電量が少なくなり、十分に電力の供給ができなくなってしまう。

3.環境や生態系に影響を与える可能性がある

水力発電はクリーンエネルギーとして注目されており、発電時の環境負荷は少ない。しかし、ダムを建設する際に周辺の森林を伐採したり、自然生態系に影響を及ぼしたりと、環境への影響が懸念される。

さらに、ダムが建設された場所とは離れたところへの影響も懸念される。例えば、ダム下流における環境への影響だ。ダムが建設されることで、ダム湖内のものが下流に流れにくくなってしまう。

ダム下流への影響で、堆積砂の中で生活する生物の減少、河川には本来いないプランクトンの増加が見られるようになった。

近年は「中小水力発電」が活発に

日本の水力発電の歴史は長い。明治末期ごろから開発が進み、昭和初期ごろから大規模なダム建設が全国で進められ、一時期は水力発電が電力の大部分を担うこともあった。

しかし、大規模なダムの建設は1960年代から急速に減退していく。大規模なダムを建設できるような場所が限定的となったのも要因だ。

近年は、既存のダムの活用や中小規模の水力発電が進められるようになってきた。中小水力の規模は厳密に定義されていないが、固定価格買い取り制度においては3万kW未満の水力発電所を指す。

中小水力の事例として挙げられるのが、河川や農業用水、上下水道を利用した施設だ。中小水力は、未開発地点が多く残っており、地域雇用に貢献するほか、高落差だけでなく低落差も活用できることから、多くのポテンシャルを秘めている。

まとめ

日本では古くから電力の供給を支えてきた水力発電が、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーとして再び注目されるようになってきている。

今回紹介した水力発電のように、私たち一人ひとりが、供給される電力の作られ方や環境への負荷に意識を向けることが大切だ。

協和キリングループは、気候変動による影響が事業継続のリスクや機会となることを認識しCO2削減に取り組んでいる。

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