乾癬の種類には、全体の9割(*1)を占める尋常性乾癬のほか、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、滴状乾癬などがあります。
ここでは、それぞれの種類の乾癬の特徴をご紹介します。
乾癬の中で最も頻度が高く、全体の約9割(*1)を占めます。皮膚が炎症を起こして赤くなる紅斑(こうはん)、皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)、その上に銀白色のフケのようなものが付着する鱗屑(りんせつ)、それがポロポロとはがれ落ちる落屑(らくせつ)が主な症状です。
- 東京医科大学 名誉教授 坪井先生ご提供
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関節炎を伴うタイプの乾癬で乾癬性関節炎とも呼ばれます。乾癬全体の約3%(*1)を占めますが、近年増加傾向にあり、2015年の報告では約14%となっています(*2)。
多くの患者さん(約80%)では、皮膚症状が関節症状に先行してみられますが、関節症状が現れてから数年後(約4年)に皮膚症状が現れることもあります(*3)。
また、皮疹が目立たない場合や皮疹が消失してから関節症状が現れることもあるため、乾癬と診断されないケースもあります。
しかし、治療開始が遅れてしまうと関節破壊が進行し、日常生活に支障をきたす可能性もあることから、以下に示すような症状(関節症性乾癬の主な症状)がみられる方は早めに専門のお医者さんに相談することが大切です。
末梢関節炎
多くの場合、手や足の指先の関節に炎症がみられます。非対称性(からだの片側)に関節炎がみられることが多いとされています。
指趾(しし)炎
指1本全体に腫れがみられ、ソーセージ指(趾)とも呼ばれます。
付着部炎
腱や靭帯が骨に付着する部分(付着部)に炎症がみられ、痛みを伴います。
アキレス腱や足底の腱などの付着部に現れやすいとされています。
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乾癬の皮疹が全身に広がり、全身の皮膚(9割以上)が赤くなった状態で、乾癬全体の約1%(*1)を占めます。
症状が持続すると、リンパ節の腫れ、悪寒、発熱、脱水、むくみなどの全身症状を伴うこともあります。
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発熱やだるさ、赤い皮疹とともに膿疱(中に膿が貯まった皮疹)が多数現れるタイプの乾癬で頻度はまれです。
膿疱性乾癬には、大きく分けて限局型と汎発(はんぱつ)型があり、特に汎発型は発熱やだるさとともに全身に膿疱がみられる重症な病型で、厚生労働省が特定疾患に指定しています。汎発型膿疱性乾癬の患者さんは、手続きを行うことにより国から医療費の助成を受けることができます。2020年時点では、約1,800-1,900人(*4)の患者さんが特定疾患受給対象者となっています。
現在までに膿疱性乾癬に効果が期待できる治療法がいくつか開発されており、それらを駆使して症状を和らげQOLを改善させることを目指します。膿疱性乾癬では、外用療法や内服療法、光線療法、生物学的製剤による治療(「乾癬の治療 -治療方針と治療法-」へ)に加え、心・循環器疾患や呼吸器疾患をきたすこともあることから、これらに対する治療も行います。
また最近では、既存の治療法では十分な効果が得られない患者さんに対して顆粒球(かりゅうきゅう)吸着療法が行えるようになりました。これは、炎症の原因となる白血球(顆粒球や単球)を吸着するビーズに、体外に循環した血液を通過させることで白血球を除去する治療法です(*5)。
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小児〜若年に多く、直径1cm以下の小型の皮疹が全身に現れるタイプの乾癬で、乾癬全体の約4%(*1)を占めます。かぜや扁桃炎などの感染症に続いて発症することが多く、溶連菌(ようれんきん)感染が原因になるとされています。
感染症が疑われる場合には、まず抗生物質を用いて治療を行います。治療に対する反応性は良いとされていますが、症状を繰り返して尋常性乾癬に移行することもあります。
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- (*1) 出典:Takahashi H, et al:J Dermatol, 38:1125, 2011
- (*2) 出典:Ohara Y, et al:J Rheumatol, 42:1439, 2015
- (*3) 出典:Yamamoto T, et al : J Dermatol; 43(10): 1193-1196, 2016 Oct
- (*4) 出典:難病情報センターホームページより 2020年8月31日現在
- (*5) 出典:金蔵拓郎『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p269, 2012