乾癬は、遺伝的素因と環境因子を背景にして免疫系が活性化され、結果的に表皮が過剰に増殖することによって引き起こされる慢性炎症性疾患です。
ここでは、乾癬でみられる典型的な症状、患者さんの数、発症の仕方などをご紹介します。
乾癬にはいくつかの種類(「乾癬の種類」へ)があり、それぞれの種類で症状の現れ方は異なりますが、最も一般的なタイプである尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)では、皮膚が炎症を起こして赤くなる紅斑(こうはん)、皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)、その上に銀白色のフケのようなものが付着する鱗屑(りんせつ)、それがポロポロとはがれ落ちる落屑(らくせつ)がみられます。
正常な皮膚を掻いたり物理的な刺激が加わることで新たな皮疹が現れるケブネル現象や鱗屑を無理にはがすことで点状の出血がみられるアウスピッツ現象といった特徴的な症状がみられることもあります。
乾癬の皮膚症状
紅斑
鱗屑
- 東京医科大学 名誉教授 坪井先生ご提供
(※無断転載禁止)
頭部の乾癬
- 東京医科大学 名誉教授 坪井先生ご提供
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乾癬の爪病変
- 東京医科大学 名誉教授 坪井先生ご提供
(※無断転載禁止)
かゆみの程度に個人差はありますが、約5〜7割(*1)(*2)(*3)の方にかゆみがみられます。入浴やアルコールの摂取などによりからだが温まることで現れることがあります。
乾癬の症状は全身のどこにでもあらわれますが、頭部や髪の生え際、膝、肘、腰まわりなどこすれる部位に出やすいのが特徴です。はじめに頭部、下肢から症状が現れる方が多いとされています(*3)。
乾癬の症状が出やすい部位
日本における乾癬患者さんの数は、約20〜40万人(300〜500人に1人)(*2)(*4)と推計されています。欧米(50人に1人)(*2)に比べると少ないですが、近年増加傾向にあります。
日本での男女比は2:1で男性に多くみられます(*3)。発症年齢は幅広いですが、男性では50歳代、女性では20歳代と50歳代が多いとされています(*3)。
男女比
乾癬では、炎症を起こす細胞(Tリンパ球や好中球などの白血球)が増えることで、皮膚が赤くなったり(紅斑)、盛り上がります(浸潤・肥厚)。また、表皮が異常に増殖し、新陳代謝(ターンオーバー)の速度が通常の約10倍速くなっているため、角化が亢進し、フケのようなものがポロポロと落ちていきます(落屑)(*5)。
乾癬でつらいのは皮膚症状などによる
『QOL(生活の質)の低下』
乾癬は、特徴的な皮膚症状や「カンセン」という名前から「うつる病気なのでは?」と誤解されてしまったり、周囲の目が気になって学校や会社、旅行に行くのがつらくなってしまうなど、患者さんは精神的なストレスを抱えています。
また、乾癬では皮膚症状のほかに、関節の痛みや変形といった関節症状がみられることもあり、日常生活が制限されてつらい思いをされている患者さんもいます。
このように乾癬は、精神的・身体的ストレスによりQOLが著しく低下してしまう病気です。実際、乾癬患者さんでは、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、癌などの病気に匹敵するほどQOLが障害されていると言われています(*1)。
さらに、ストレスは症状を悪化させる原因にもなるため、「症状出現⇒QOL低下⇒症状悪化・・・」という悪循環に陥ってしまうこともあります。
したがって、充実した生活を送るためにも、乾癬治療においては症状の改善だけでなく、QOLを改善させることが非常に重要となります。
- (*1) 出典:Rapp SR, et al : J Am Acad Dermatol, 41 : 401, 1999
- (*2) 出典:飯塚一『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p2, 2012
- (*3) 出典:Takahashi H, et al:J Dermatol, 38:1125, 2011
- (*4) 出典:久保田 潔, ほか(2013) ナショナルレセプトデータベースの活用可能性を探る-乾癬の疫学研究から-日本薬剤疫学会, 11月16日-17日 2013, 東京, 2013:39
- (*5) 出典:北島康雄『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p14, 2012