文中に出てくる薬や皮膚症状の用語の一部を簡単に解説します。
皮膚に現れる症状(発疹)は、そのカタチや色によって分類され、名称がつけられています。また、疾患によって現れる症状が異なることから、適切な診断には皮膚の状態を把握することが大切ですので、それぞれの特徴を知っておきましょう。
皮膚の表面が盛り上がらずに、限られた部分で皮膚の色が変化したものを指します。
紅色で、指で圧迫すると消えます。一過性の血管拡張によって起こります。
紫色で、指で圧迫しても消えません。皮膚内の出血によって起こります。
正常の皮膚よりも白い部分です。
メラニン色素が減少しています。
丘疹(きゅうしん)・結節(けっせつ)・腫瘤(しゅりゅう)
皮膚がふくらんで、盛り上がった部分を指します。
皮膚がふくらんで、盛り上がった部分を指します。
小透明(米粒以下の大きさ)な水様性の内容物をもつもの。いわゆる水ぶくれです。
膨疹(ぼうしん)
皮膚がやわらかく盛り上がりますが、短時間であとかたもなく消えてしまいます。
びらん
水疱や膿疱が破れて表皮がなくなり、ジクジクとただれたものです。
鱗屑(りんせつ)
角層がフケのようにはがれかかった状態のものです。
痂皮(かひ)
びらんや潰瘍の上にできる滲出液、血液、膿(うみ)などが固まったもので、いわゆる「かさぶた」です。
治療に使われる薬の用語をご紹介します。
より納得できる治療を受けるためにも、自分がどんな薬を使用するのか、きちんと理解しておきましょう。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)は炎症を起こして湿疹ができてしまった部位に使う外用薬です。
効き目の強さで5段階に分類されており、症状の重さや部位、年齢などに合わせて使い分けられています。症状が軽くなった場合には、ランクの低いものに切り替えて使用されます。
ただし、効き目に頼って長期に強いステロイドを使用しつづけると、皮膚が薄くなり弱くなってしまうことがあります。特に顔では、血管が浮き出て赤ら顔になったり、ニキビなども出やすくなります。子どもやお年寄りの場合、顔やワキ・股間などに塗る場合には注意が必要です。
副腎皮質ホルモンを含まない(非ステロイド系)外用薬として、免疫抑制薬(軟膏)や消炎外用薬があります。
免疫抑制薬(軟膏)
臓器移植などの際に用いられる免疫抑制薬を外用薬にしたもので、炎症を抑える作用を持つ外用薬です。また、健康な肌には浸透せずに、皮膚のバリア機能が損なわれた部分だけに浸透する特徴があります。
※2歳未満の子どもには使用できません。
消炎外用薬
ステロイド外用薬に比べ炎症を抑える作用がはるかに弱い薬ですが、ステロイド外用薬でみられる副作用が少ない外用薬です。皮膚の炎症が軽度の場合などに使用されます。薬の主成分や基剤*でかぶれを起こすことがありますので、かゆみや刺激感、皮膚が赤くなったら、すぐに専門のお医者さんに相談しましょう。
*薬の取り扱いや服用を便利にするために加える成分。
皮膚の乾燥を防ぎ、うるおいを補う役割を果たすのが保湿剤です。
ステロイド外用薬などで炎症症状がコントロールできたら、乾燥から皮膚を守りバリアをつくるために用いられます。
保湿剤で刺激感を感じたり、皮膚が赤くなった場合には、かぶれの可能性がありますので、すぐに専門のお医者さんに相談しましょう。
かゆみを起こすことが知られているヒスタミンが肥満細胞から出るのを抑えたり、出てしまったヒスタミンの作用をブロックする薬です。かゆみを止めることにより、掻破(皮膚を引っ掻く)行動を抑制し、皮膚症状を改善させる助けとなる補助的な治療薬です。この薬の副作用としては、ときに眠気、のど・口の渇き、便秘などが出ることがあります。
従来、臓器移植を受けた患者さんの拒絶反応を抑制するための薬でしたが、過剰な免疫反応を抑えることからアトピー性皮膚炎への有効性が考えられ、研究が行われてきました。日本では2008年より、アトピー性皮膚炎の治療に用いられるようになりました。ただし、これまでの治療で十分な効果が得られず、強い炎症が広範囲にある16歳以上の患者さんにのみ処方されます。