乾癬の治療 -治療方針と治療法-

乾癬の治療法は、大きく4種類に分けられます。ご自身が苦痛に感じている症状や治療の目標をお医者さんとよく話し合って、納得したうえで治療を受けることが大切です。既に治療を受けている方も気になることや知りたいことがある場合には、遠慮せずにお医者さんに相談してみましょう。

乾癬は治るの?
乾癬は決して治らない病気ではない

乾癬は皮疹が繰り返しできてしまう病気ですが、治療法が進歩してきたこともあり、皮疹がほとんどない状態を長く維持している患者さんも少なくありません。また、関節症状についても、症状がほとんどなくなり、支障なく日常生活を送っている患者さんもいます。
治療の目標は人それぞれですが、症状が良くなっている状態を長く維持し、苦痛に感じていることを少しでも取り除き、イキイキとした生活を送ることを目指しましょう。

治療法はどのように選択されているの?
症状やQOL、治療に対する希望・目標などを考慮して治療法を選択

症状やその程度、皮膚症状が生活の質(QOL)に及ぼす影響の程度(「乾癬の診断と評価」へ)、患者さんの状況(年齢、通院条件など)、各治療法の効果・安全性などを考慮して、最も適すると思われる治療法が選択されます。
また、治療法を選択する上では、治療に対する希望や目標も重要となりますので、お医者さんとよく話し合い、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。

治療に対する希望や目標
どのような治療法があるの?
外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤による治療の4種類

乾癬の治療法は、大きく4つに分けられます。

治療の中心は塗り薬を用いた外用療法で、重症化とともに光線療法や飲み薬を用いた内服療法が用いられます。さらに、これらの治療法で十分な効果が得られない場合に生物学的製剤による治療が行われます。また、必要に応じてこれらの治療法を組み合わせることもあります。

なお、治療を選択する上では、重症度だけでなく、QOLの程度や患者さんの状況なども考慮します。

乾癬治療のピラミッド計画

乾癬治療のピラミッド計画


  • 出典:飯塚一:J Visual Dermatol, 14:774, 2015より
    飯塚一:日皮会誌, 116:1285, 2006より一部改変

※ここでご紹介する治療法には、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)、乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)の全てに使用が認められているものと一部の乾癬にのみ使用が認められているものがあります。

外用療法

外用療法は乾癬治療の基本となります。乾癬治療に用いられる塗り薬は、主にステロイド外用薬活性型ビタミンD3外用薬です。これらの塗り薬には長所と短所があり、両者を併用することでそれぞれの短所を補うことができます。また最近では、あらかじめ両者を配合した塗り薬も使用されています。

ステロイド外用薬

炎症を抑える働きがあります。効果の強さによって5段階のランクがあり、重症度や部位に応じて使い分けされています。特に、紅斑(こうはん)に対して効果を発揮し、効果発現が比較的早く刺激作用も少ないという長所がありますが、長期間連用することで皮膚が薄くなったり(皮膚萎縮)、毛細血管が拡張したりすることがあります。

活性型ビタミンD3外用薬

表皮の異常増殖を抑える働きがあります。効果発現が比較的遅く、使い始めの時期に刺激感が現れることがあります。

光線療法

外用療法で十分な効果が得られないときなどに光線療法が行われます。
紫外線を当てることにより過剰な免疫反応を抑えて、乾癬の症状を改善します。紫外線のうち、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)が用いられます。日焼けや色素沈着などの副作用が現れることがあります。

光線療法

PUVA(psoralen ultraviolet A)療法

紫外線に対する反応性を高める薬をあらかじめ患部に適用してから、UVAを当てる治療法です。

UVB療法

UVBを当てる治療法です。2000年代に登場した「ナローバンドUVB療法」は、高い治療効果が得られる波長のみを用い、それ以外の波長を取り除いたUVBを当てる治療法です。PUVA療法のようにあらかじめ薬を投与する必要もありませんので、広く普及しています。また、部分的に残った皮疹に局所的にUVBを当てる「ターゲット型光線療法」も普及してきています。

内服療法

乾癬治療に用いられる飲み薬には、表皮の異常増殖を抑える薬過剰な免疫反応を抑える薬乾癬に関連する炎症性物質(サイトカイン)の産生を抑える薬などがあり、外用療法や光線療法で効果が不十分な場合に行われます。飲み薬のみで用いるだけでなく、他の治療法と組み合わせて用いることがあります。

生物学的製剤による治療

乾癬の発症には免疫の異常が関与しており、TNF-α、インターロイキン(IL)-23、IL-12、IL-17などの「サイトカイン(免疫を調節する物質)」が過剰に作られることにより、皮膚症状や関節症状が引き起こされると考えられています。
乾癬の治療に用いられる生物学的製剤は、これらのサイトカインの働きを抑えることで、症状を改善します。
他の治療法で効果が不十分な場合に用いられます。現在使用可能な生物学的製剤には皮下注射(皮下脂肪の部分)するものと点滴投与するものがあります。
免疫を抑える働きがあるため、感染症にかかりやすくなることがあります。そのため、定期的な検査と普段からかぜなどの感染症にかからないよう心がけることが大切です。

現時点では、生物学的製剤による治療を受けられる施設は日本皮膚科学会が認めた施設に限定されています。生物学的製剤による治療を受けたい場合には、皮膚科専門のお医者さんに相談してみるか、日本皮膚科学会のホームページに掲載されている「生物学的製剤承認施設一覧」を確認してみてください。

乾癬の治療に用いられる生物学的製剤は、細胞の増殖や炎症に関与するサイトカインの働きを抑えることで、症状を改善します。
乾癬の発症に関与する免疫の異常と生物学的製剤の標的(イメージ図)

乾癬の発症に関与する免疫の異常と生物学的製剤の標的(イメージ図)

いくつかの治療法を
組み合わせることもあります

効果を高め、副作用のリスクを最小限に抑える目的で、いくつかの治療法を組み合わせて用いることがあります。

■ コンビネーション療法

2つ以上の治療法を組み合わせる方法です。塗り薬と塗り薬の併用、塗り薬と飲み薬の併用、塗り薬と光線療法の併用、飲み薬と光線療法の併用などがあります。

■ シークエンシャル療法

効果の高い治療法から用いて、症状の改善とともに副作用のリスクが低い治療法に切り替えていく方法です。

■ ローテーション療法

1つの治療法を長期間続けることで懸念される副作用を回避する目的で、一定期間ごとに治療法を切り替えていく方法です。

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