乾癬の原因について、これまでの研究で様々なことが明らかにされてきました。
ここでは、乾癬の原因としての「遺伝的素因」「環境因子」「免疫異常」についてご紹介します。
乾癬は、遺伝的素因(生まれ持った体質)と環境因子(精神的ストレス、肥満、糖尿病、高血圧、不規則な食生活、季節、感染症、薬など)の相互作用が引き金となり、免疫に異常が生じることで発症すると言われています。
双子を対象とした調査において、二卵性よりも一卵性で乾癬の発症一致率が高かった(*1)ことなどから、乾癬の発症には遺伝的素因が関与していると考えられています。日本で行われた調査では、乾癬の家族内発症頻度は4.4%でした(*2)。
乾癬の発症に関与するとされる遺伝子は複数あり、乾癬の種類によっても関与する遺伝子が異なります。
乾癬はメタボリックシンドロームと関連するとされています。そのため、高カロリー食(高脂肪食や肉に偏った食事)は、できるだけ控えた方が良いとされています。
乾癬の症状は紫外線により改善しますので、紫外線が多く軽装になる夏は症状が軽くなり、冬は悪化する患者さんが多いとされています。また、冬は乾燥により症状が悪化することもあります(*3)。
溶連菌への感染後に発症することがあり、特に滴状乾癬では(「乾癬の種類」へ)、感染症に続いて発症することが多いとされています(*4)。
薬剤の投与期間中でのみ症状がみられる場合や薬剤の投与をきっかけに乾癬が発症する場合、薬剤の投与により症状が悪化する場合があります(*3)。皮膚科とは別の診療科で処方される薬剤が原因になることが多いため、乾癬の診断が遅れてしまうことがあります。
精神的ストレスは乾癬の悪化原因になりますが、さらに乾癬の皮膚症状もストレスにつながり、悪循環に陥ってしまうこともあります。
最近の研究から、乾癬の発症に免疫の異常が関与していることが明らかになってきました(*5)。
本来、免疫は、細菌やウイルスなどから身を守るためにからだに備わっている仕組みですが、免疫に異常が生じると、自分自身を攻撃し炎症などの症状を引き起こしてしまうことがあります。免疫には様々な物質が関与していますが、乾癬では、TNF-α、インターロイキン(IL)-23、IL-12、IL-17などの「サイトカイン」が過剰に作られることにより、皮膚症状や関節症状が引き起こされると考えられています。
サイトカインとは?
様々な細胞間の情報伝達に関わっている物質で、細菌やウイルスなどの異物を攻撃する際に、免疫に関わる色々な細胞で作られます。
- Tリンパ球、樹状細胞、好中球は白血球の仲間です。
- 表皮角化細胞や白血球から分泌される生理活性物質はサイトカインと呼ばれ、細胞の増殖や炎症に関与します。
- サイトカインは細胞膜上にある受容体に結合して作用します。
乾癬の発症に関与する免疫の異常(イメージ図)
- (*1) 出典:Farber EM, et al:Arch Dermatol, 109:207, 1974
- (*2) 出典:Kawada A, et al:J Dermatol Sci, 31:59, 2003
- (*3) 出典:安部正敏『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p154, 2012
- (*4) 出典:鳥居秀嗣『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p159, 2012
- (*5) 出典:水谷仁『皮膚科臨床アセット⑩』, 中山書店. p11, 2012