人権の尊重
方針・戦略
協和キリン株式会社 担当役員メッセージ
執行役員人事部・総務部担当
Chief People Officer (CPO) & Global Human Resources Head
板垣 祥子
国際連合が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業が大切にするべき価値として「人権の尊重」を掲げています。私たち協和キリングループにおいても2030年のビジョン達成に向けてビジネスをグローバルに展開する中でステークホルダーが格段に増え、“ビジネスと人権”のスコープが広がっています。私たちは、組織を超えたワーキングチームを結成し、社外の専門家からのアドバイスも得ながら、グローバル企業における広範な人権課題の理解を深めつつ、「協和キリングループ 人権基本方針」を策定しました。 この基本方針では、適用範囲を当社グループのすべての役員と社員だけでなく、当社グループの事業、製品、サービスに関係するバリューチェーンで働く人々とし、その遵守を求めています。当社のコアバリューの1つである「Integrity」を大切にし、一貫して誠実で倫理的であるため、この基本方針に基づいて人権デュー・ディリジェンスの取り組みを継続的に進めていきます。そして私たちのあらゆるバリューチェーンで働く人々の笑顔をつくることを目指していきます。
人権方針
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業の責任として人権に関する対応方針を策定し、従業員はもちろん、さまざまなステークホルダーに周知することが求められています。協和キリングループでは、従来「キリングループ人権方針」に従い人権に対する取り組みを進めてまいりましたが、社会情勢の変化および社会からの要請等に鑑み、2022年12月に協和キリングループ独自の「協和キリングループ 人権基本方針」を策定いたしました。当方針を当社グループの事業活動における人権尊重の取り組みに関するすべての文書・規範の上位方針と位置づけ、当社グループの全役員および従業員に適用します。また、すべてのビジネスパートナーに同方針の支持を期待すると共に、サプライヤーに対しては同方針を遵守いただくよう努めていきます。
協和キリングループ 人権基本方針
制定日:2022年12月8日
協和キリングループ(以下、「当社グループ」)は、「医薬」の事業分野において、高度な技術とユニークな視点で独自の研究を進め、製品を開発・提供するにあたり、公正かつ自由な競争の下、自律的で責任ある行動を通じて、持続可能な社会の形成に向けた取り組みを進めています。当社グループは、世界の人々の健康と豊かさに貢献するという経営理念を実現するために、当社グループの価値観に基づき、イノベーションへの情熱、多様な個性が輝くチームの力および高い倫理観をもって、Life-changingな価値を継続的に創出していきます。
「協和キリングループ 人権基本方針」(以下、本方針)は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠し策定されています。本方針は、当社グループがステークホルダーに対する人権尊重の責任を果たすために、当社グループの経営理念・ビジョン・価値観・行動規範ならびに関連する社内方針・規程等に基づく人権尊重の取り組みを約束するものです。また、人権擁護者に対する脅威、脅迫、攻撃(物理的および法的)を容認しない、またはそれに加担しないことを約束します。そして、人権尊重の取組みにあたっては、以下に掲げる人権に関する国際規範を支持し、尊重します。
すべての人々の基本的人権について規定した「国際人権章典」(「世界人権宣言」、「市民的および政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」)
労働における基本的権利を規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言※1 」に加え、賃金や労働時間など労働者の人権に関する諸条約
「先住民族の権利に関する国際連合宣言※2 」
「人間を対象とする医学研究の倫理的原則(ヘルシンキ宣言)」
「子どもの権利とビジネス原則」
※1 中核的労働基準である「児童労働の禁止」「強制労働の禁止」「差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」の支持・尊重を含みます。
※2 土地と水及び天然資源の所有と使用に関する正当な保有権を尊重し、先住民族の権利を尊重することを含みます。
本方針は、当社グループのすべての役員と従業員に適用します。また、当社グループの事業、製品、サービスに関係するすべての取引関係者に対しても、本方針の遵守を求めます。
当社グループは、自らの事業活動において、直接または間接的に人権への負の影響を及ぼす可能性があることを理解しています。我々は、自らの事業活動から影響を受ける人々の人権を侵害しないこと、また自らの事業活動において人権への負の影響を引き起こし、またはこれを助長したことが明らかになった場合には是正に向けた適切な対応をとることにより、人権尊重の責任を果たします。
当社グループの製品やサービスを取引関係者等がどのように利用されるかをすべて把握することはできませんが、我々は、その製品やサービスが人権侵害に加担するような使用を一切意図していません。
取引関係者による人権への負の影響が、当社グループの事業、製品、サービスに関連していることが疑われる場合には、取引関係者に対しても人権を尊重し侵害しないよう求めていきます。
当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則した人権デュー・ディリジェンスを推進し、当社グループが社会に与える人権への負の影響を特定し、その防止および軽減を図ります。
当社グループは、本方針を実行する過程において、独立した外部からの人権に関する専門知識を活用するとともに、ステークホルダーとの対話と協議を誠実に行います。
当社グループは、本方針がすべての事業活動に組み込まれ、効果的に実行されるよう、役員、従業員および必要に応じて取引関係者に適切な教育・研修を行います。
当社グループの事業活動が、人権への負の影響を引き起こしたことが明らかになった場合、あるいは取引関係者を通じた関与が明らかになった、または関与が疑われる場合には、国際基準に基づいた対話と適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
当社グループは、本方針の実行に責任を持つ担当役員を明確にし、実施状況を監督します。
当社グループは、人権尊重の取り組みの進捗状況およびその結果を、ウェブサイト等で開示します。
本方針は、いかなる法律や法的権利も妨げるものではありません。
当社グループは、事業活動を行うそれぞれの国または地域における法と規制を遵守します。国際的に認められた人権と各国の法令に矛盾がある場合には、国際的に認められた人権の原則を最大限に尊重するための方法を追求します。しかし、いかなる場合においても、我々は、事業活動を行うそれぞれの国または地域の法に違反することはありません。
本方針は、当社の取締役会の承認を得ており、代表取締役社長により署名されています。
[PDF版]協和キリングループ人権基本方針
人権方針策定のプロセス
策定にあたっては、外部有識者である特定非営利活動法人 経済人コー円卓会議日本委員会の協力を得ながら、後述する人権デュー・ディリジェンスワークショップ、キリンホールディングス株式会社、海外現地法人人事最高責任者、グループCSR委員会等、複数のレビューを経ながらブラッシュアップを重ねました。
ガバナンス
2017年7月には協和キリングループ人権啓発推進委員会を設置しました。当委員会では、人権啓発等の計画を立案・推進・支援を行っています。また、人権問題が発生した場合、迅速な解決に向けた調査協力等を支援しています。当委員会は当社人事部長を委員長とし、関係部門長ならびに主要子会社の人事担当組織の部長で構成されています。なお、当社人事部が事務局を担っています。
日常において、人権課題全般に関する取りまとめ役を当社人事部が担いますが、人権課題は多岐にわたります。そのため、各部門・各社と協力しながら取り組みを進めていきます。また、人権課題を含んだコンプライアンスの遵守状況は、年4回開催されるCSR委員会(委員長:代表取締役副社長)に報告して実効性を確認し、取締役会へ報告します。
リスク管理
人権デュー・ディリジェンス
人権デュー・ディリジェンスワーキングチームの活動
当社ビジネスの本格的なグローバル化に伴い、私たちの活動が世界のライツホルダー(人権課題に直面する当事者)に及ぼす影響は一層拡大しております。Life-changing valueの提供にはステークホルダーとの価値の共創が不可欠であり、その中で当社従業員のみならず、取引先に関係する人々の人権にも配慮する必要があると考え、人権の尊重という企業の社会的責任を果たすために、2022年より戦略本部、CSR推進部、調達部、人事部からなるワーキングチームを発足し、人権デュー・ディリジェンスに対する取り組みを始めております。外部有識者である特定非営利活動法人 経済人コー円卓会議日本委員会(以下CRT)の協力を得ながら、国際連合が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」のもと、社会からの要請、各国の法規制を踏まえ、企業として人権尊重の責任を果たすための社内体制整備を進めています。CRTから複数の提案をいただき順次対応を進めており、2022年は①当社独自の人権基本方針策定、②ビジネスと人権に関する勉強会及び人権課題特定のためのワークショップ(人権デュー・ディリジェンスワークショップ)を関連部署を集めて開催いたしました。
人権デュー・ディリジェンスワークショップの開催・協和キリン人権課題の特定
2022年8月に、①ビジネスと人権についての現状理解と知識習得、②協和キリンの抱える人権課題の抽出、③先述した協和キリングループ人権基本方針のレビュー等を目的とする人権デュー・ディリジェンスワークショップをオンラインで開催いたしました(参加部署:戦略本部、生産本部、研究開発本部、ファーマコビジランス本部、SCM部、コーポレートコミュニケーション部、CSR推進部、調達部、人事部)。 ワークショップでは現状の取り組み、潜在的な人権テーマ、ライツホルダー、バリューチェーンへの展開(人権課題がバリューチェーンのどの段階に当てはまるか)等について意見交換しました。 ワークショップで抽出された人権課題については、協和キリン全部署における課題への認識・取り組み状況を確認し、ワーキングチームで対応すべき人権課題について優先順位をつけて取り組みを進めています。なお、優先順位の高い課題は、自社での評価だけでなく社会からの関心度(専門機関評価)と掛け合わせて特定しました。2023年は高崎事業場のサプライヤーについて、外国人技能実習生に関する調査を行いました。そして、実際に技能実習生を受け入れているサプライヤー(新日本ウエックス株式会社様 )の管理部門および技能実習生に直接インタビューを実施しました。その結果、同社では技能実習生の人権が尊重されており、人権侵害について特段懸念すべき事項がなかったことを確認し、報告書を同社にフィードバックしています。 今後も引き続き、サプライチェーンにおける人権課題について、調査・評価を進めていきます。
バリューチェーンにおける人権配慮
協和キリンでは、医薬品のバリューチェーンにおいて、人権配慮への取り組みを進めています。
研究における人権
ヒト遺伝子解析やヒト組織利用研究について、倫理的、科学的妥当性を確保し、試料提供者の尊厳や人権が損なわれることを防止する目的で、社内規程を定めています。
臨床試験における人権
臨床試験を実施するにあたっては、ヘルシンキ宣言に則り、参加される患者さんの人権と個人情報の保護、安全の確保、福祉に対する配慮を最優先し、各国の法規やGood Clinical Practice (GCP) などの各種基準を遵守しています。
調達活動における人権
サプライヤーとともに推進するために、「協和キリングループ 調達基本方針」「協和キリングループ サプライヤー行動指針」を制定し、サプライチェーン全体での人権への配慮に取り組んでいます。
製品の品質保証と安定供給:サステナブル調達(具体的な取り組み)
医療機関等および患者団体との関係における人権
「協和キリングループ 医薬品のプロモーション、ならびに医療関係者、医療機関および患者団体との交流に関する基本方針」に従って、医療機関等および患者団体と交流する際に、患者さんの最善の利益のために行動する、という高い倫理観を持って行動します。
透明性の推進
内部通報制度
コンプライアンスラインはハラスメントを含む人権に関する疑問や懸念を報告するための重要なチャネルとなります。当社グループの社員は、電話、電子メール、郵便、ウェブフォームにより匿名で利用できます。寄せられた案件は、守秘義務・通報者保護を基本として、事実関係を調査し、必要に応じて対策を講じています。コンプライアンスラインの詳細は、内部通報制度のページをご覧ください。また、さまざまな相談窓口(ハラスメント、メンタルヘルス、障害者、LGBTQ+)を設置し、当事者をサポートする仕組みを設けています。
内部通報制度
弊社各種お問い合わせ窓口
人権に関わる通報窓口(幅広いステークホルダー向け)
当社グループは一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が提供する国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「対話救済プラットフォーム」にて、サプライチェーン上のあらゆるステークホルダーを対象として、人権に関わる苦情・通報を受け付けています。 第三者を介して苦情を受付けることで、苦情処理の公平性・透明性を図り、適切に苦情・通報に対応していくことで、人権における本質的な課題解決に取組みます。受け付けた通報については、通報事実に関する調査の実施及び通報に関しての必要な対話の実施、是正措置等(再発防止・異議申し立てへの対応含む)の実施等を行います。 通報への対応等に際し、通報者に不利益が及ばないようにするとともに、個人情報の保護に努めます。また法令に基づく場合等の正当な理由がない限り、事案に関する情報を目的外に使用は致しません。 JaCERを通じた通報については、JaCERのホームページ上で定期的に匿名で情報開示を行います。
JaCERの通報フォーム
具体的な取り組み
研修・啓発活動
人権方針に基づく人権尊重の考え方を定着させるため、役員・従業員に対して各種研修を実施しています。協和キリングループ国内従業員を対象とした「人権啓発研修」(2022年は国内従業員向けに「企業活動と人権(人権デュー・ディリジェンス」をテーマとした研修、特定のスタッフ向けに人権デュー・ディリジェンスをテーマとしたワークショップおよびグローバルクライシス演習を開催)、また階層別研修として新任経営職および新入社員、キャリア採用者を対象に人権をテーマにした研修を実施しています。
人権課題の一つであるハラスメントもまた、さまざまな施策を講じ、ハラスメントフリーを目指した環境整備と風土改善に努めています。
具体的には、「ハラスメント撲滅月間」におけるトップメッセージの発信、全従業員対象の啓発研修を実施し、全国のハラスメント相談窓口の周知やハラスメントを相談した際の対応フローについて案内をしています。新入社員研修や、新任経営職研修などの階層別研修においても、ハラスメント防止に関する内容を継続的に取り入れており、それぞれの職階や立場に応じて、ハラスメント防止のための知識を提供しています。
また、外部団体である一般社団法人経営倫理実践研究センターの会員としてハラスメント研究会、ダイバーシティマネジメント研究会に参画し、関連知識の習得と理解の向上にも努めています。
こうした施策の振り返りとして、キリングループ全体と連携したキリングループコンプライアンス・人権意識調査を毎年実施しています。調査結果から、従業員の意識の変化および解決すべき課題を把握し、当社グループにおける取り組みに役立てています。
英国現代奴隷法への対応
英国現代奴隷法への対応協和キリンの海外グループ会社Kyowa Kirin International plcでは、英国現代奴隷法に基づき、事業活動とサプライチェーンにおける現代奴隷リスクに関連する人権の取り組み状況を開示しています。
Modern Slavery Act Transparency Statement
採用と福利厚生
協和キリンは、「いのちのために働くことを誇りとできる人材」、「グローバルに活躍できる人材」を求め、性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、公正な採用を行っています。
DE&I宣言
採用情報
また、協和キリンでは、多様な福利厚生制度により、従業員と家族の生活をサポートしています。契約社員やパートタイマー等の非正規社員に対しても、健康診断等の医療、育児・介護休職、レクリエーション補助、福利厚生充実プランの利用等の福利厚生についての制度を適用しています。
福利厚生