協和キリングループ目標※1
2050年:バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロ(Scope1+2+3)
2040年:使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成
2030年:CO2排出量2019年比55%削減(Scope1+2)
2024年:CO2排出量2019年比51%削減(Scope1+2)
協和キリングループは、社会の持続性へのインパクトとグループの事業へのインパクトの観点から、当社グループが優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)を特定し、中期経営計画に組み込んでいます。特に、マテリアリティの中でも気候変動(温暖化の防止)への対応は重要な項目の一つと捉え、全社で様々な取り組みを進めています。
当社グループは、2021年11月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同を表明すると共に、本提言を踏まえ、気候変動に関連するリスクと機会の評価や管理を行い、適切な情報開示を行っていきます。
なお、当社の親会社であるキリンホールディングス株式会社は、当社が所属するキリングループとして2018年12月にTCFD提言への賛同を表明しています。
気候変動課題を含めた環境管理全般の最高責任者として、代表取締役副社長が任命されています。
気候変動におけるリスクや機会に関する課題や、環境活動方針・結果などについては、定期的に開催される代表取締役副社長を委員長としたCSR委員会の、グループの環境管理における重要事項として報告・審議され意思決定しています。また、CSR委員会にて報告・審議・決定された内容は、取締役会に報告し、全取締役に共有されています。
なお、2020年度より、環境管理統括機能を担うCSR推進部内にTCFD検討担当(以下、TCFD検討チーム)を設置し、気候変動におけるリスクと機会の特定および評価、ならびに対応について検討しています。
特定したリスクおよび機会は、当該担当部署および関係部署にて定期的に見直し、CSR委員会へ報告・付議することにより、経営戦略の一環として気候関連課題に取り組んでいます。
気候変動に関するリスク・機会については、TCFD検討チームが中心となり、1.5℃シナリオ、2℃シナリオおよび4℃シナリオを用いてシナリオ分析を行うと共に、短・中期/長期におけるビジネスインパクト(移行リスク※1、物理的リスク※2および機会についての財務的影響度)および、これらビジネスインパクトへの対応方針や事業戦略ついて検討しました。
その結果、集中豪雨や洪水等による水害および炭素税等のカーボンプライシングに対してリスクがあることが確認されました。
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気候変動関連ドライバー | 潜在的なインパクト | インパクト | レジリエンス (対応策により向上するポジティブインパクト・低減するネガティブインパクト) |
インパクト |
---|---|---|---|---|
カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度) | 炭素税が継続的に発生 短中期:約4.1億円/年 長期:約9億円/年 |
小 (リスク) |
2℃および1.5℃シナリオのいずれも炭素税負担が発生するものの、省エネ、再生可能エネルギーの導入・拡大、エネルギー転換などの施策を推進し、SBT1.5℃目標を達成することにより、炭素税負担額を低減できる。 | ±0 |
CO2排出規制の強化 | 電力購入費: 短中期:約12.2億円/年 長期:約12.2億円/年 再エネ単価下落によるメリット:3.1億円削減 |
微小 (機会) |
小 (機会) |
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気候変動関連ドライバー | 潜在的なインパクト | インパクト | レジリエンス (対応策により向上するポジティブインパクト・低減するネガティブインパクト) |
インパクト | |
---|---|---|---|---|---|
新興国における人口の増加/経済のグローバル化 | 未知のウイルスなどによる感染症の増加、パンデミックの発生 | 短中期および長期: 感染症を重点領域としていないため影響はほとんどない。 |
±0 | 現状として感染症領域を重点領域としていないため売上収益への影響はほとんどなく、機会は小さい。一方、新興感染症の感染拡大によるマイナスの財務影響に対しては、COVID-19の経験を経て実施してきた感染症対策や業務プロセスの強靭化により継続して対応していく。 | ±0 |
でんぷん、乳糖等の原材料の調達困難・品質悪化 | 短中期および長期: 穀物や乳製品の調達価格の5~10%上昇が予測されているが、これによるでんぷんや乳糖等の原料調達コスト上昇は軽微であり、また、他の産業と比べてこれらの使用量が少ないことから、影響はほぼない。 |
±0 | 原材料調達リスクを踏まえ、調達方針を決定し、調達先(エリア)の複数化・分散などによる対応を検討してくことにより、リスクを低減、マイナスのインパクトを緩和しインパクトゼロにする。 | ±0 |
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気候変動関連ドライバー | 潜在的なインパクト | インパクト | レジリエンス (対応策により向上するポジティブインパクト・低減するネガティブインパクト) |
インパクト | |
---|---|---|---|---|---|
社会の価値観の変化 | 認証材由来の包装紙利用ニーズの高まり 環境や健康への関心の高まりと食生活の変化 |
短中期および長期: 生活習慣病(糖尿病関連)の売上収益に与えるマイナス影響は限定的。 |
微小 (リスク) |
資材・原材料、包装(FSC認証紙、プラスチック等)の目標レベルの検討を進めると共に、タイムリーに対応をしていく。 生活習慣病については、患者の増加も見込まれる。新興国も含む世間の動向、ニーズを踏まえ、経営理念に基づき事業展開を検討し適切に対応していく。 これらによりマイナスのインパクトを緩和し、プラスのインパクトの増大化を図る。 |
±0 |
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気候変動関連ドライバー | 潜在的なインパクト | インパクト | レジリエンス (対応策により向上するポジティブインパクト・低減するネガティブインパクト) |
インパクト |
---|---|---|---|---|
極端な気温上昇 | 短中期および長期: 使用電力の増加によるコスト増加。 |
小 (リスク) |
空調負荷増加によるエネルギー消費増加と同じ。 | 小 (機会) |
集中豪雨、台風・洪水の増加 | 短中期および長期: 水害等により国内外の生産活動への影響リスク(委託製造や物流等のサプライチェーンへの影響リスクも含む)あり。 工場・研究所の敷地内への浸水は長期間の操業停止、現状復旧の多大なコストが発生。 自社工場浸水による生産停止に伴う被害額は相当規模となると予測され、営業機会の喪失も含め事業への影響は非常に大きい。 |
大 (リスク) |
自社生産拠点については、既に水リスク評価を実施し、洪水・浸水リスクを抽出している。 水害対策ポリシーを策定し、浸水防止措置(生産に関する重要資産の地理的分散保管、建物の防水化、重要設備の高層・高所配置化、浸水防止壁設置など)を実施すると共に、今後の設備投資対応を実施していく。 サプライチェーン全体における影響評価・対応を進め、生産停止の回避・被害最小化を図る。 原薬の製造委託会社や包装資材のサプライヤー等への影響が大きいため、これらパートナー各社における水害対策の聞き取り、課題の抽出、BCP策定や災害対応訓練の実施等の検討を進める。 |
微小 (リスク) |
大規模火災の発生、増加 | 短中期および長期: 生産への影響はほぼ無いと思われる。 |
±0 | 評価の結果重要なインパクトはないと判断した。 | ±0 |
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気候変動関連ドライバー | 潜在的なインパクト | インパクト | レジリエンス (対応策により向上するポジティブインパクト・低減するネガティブインパクト) |
インパクト |
---|---|---|---|---|
花粉症患者数の変化 | 短中期および長期: 患者数増加に伴い、現行のアレルギー薬の売上収益増加が試算されているが、実際には売上収益への影響は、限定的。 |
中 (機会) |
インパクト評価でプラスの影響が見込まれているが、アレルギー薬市場に対する実質的な売上収益への影響は限定的と考えている。 当分野の新規開発については、経営理念に基づき医療ニーズに答えていくため、より詳細な検討が必要と考える。 根治治療のニーズが存在するなど、今後の当社グループの戦略で重要なポイントになると認識している。 |
中 (機会) |
空調負荷増加によるエネルギー消費増加 | 短中期および長期: 使用電力の増加により、それぞれ約4億円/年のコスト増加。 |
小 (リスク) |
気温上昇に伴って増加することが見込まれる電力コストの削減、スコープ2排出量の削減が当面の課題であると認識している。 再エネ電力の導入に加え、空調機更新を優先施策とした電力削減による付加価値の創出と共に、積極的な設備投資ならびに設備運用面の改善により使用電力削減を積み上げる。同時に、オンサイトPPA等の太陽光発電の導入を促進し、CO2排出量の削減も推進する。デジタル化によるエネルギー消費の見える化も進める。 これにより2030年目標、2050年目標を達成することにより、再エネによるコストメリットで気温上昇に伴う空調費の増加デメリットを上回り相殺できると考えている。 |
小 (機会) |
脱炭素社会への移行や気候変動の進行が当社のビジネスに与える影響は様々であり、多くの要素と経路が複雑に関係しているため、まず、これらの関係を整理し、TCFD提言で推奨されている気候関連リスクと機会(移行リスク、物理的リスク及び機会の各項目)の評価並びにキードライバー(不確実性が高く、かつビジネスパフォーマンスに決定的な影響を与える可能性のある要因)を特定しました。
これらのキードライバーに対して、気候変動シナリオを用いてシナリオ分析を実施しました。
脱炭素社会に向かう1.5℃および2℃シナリオ、ならびに温暖化が進む4℃シナリオを用いて、分析、評価を行いました。1.5℃および2℃シナリオは、国際エネルギー機関による「持続可能な開発シナリオ」、 4℃シナリオは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「RCP8.5シナリオ(代表的濃度経路(Representative Concentration Pathways)の一つで2100年に約4度の気温上昇が予測されるシナリオ)」や国際エネルギー機関による「公表政策シナリオ」等を用いました。
RCP8.5シナリオは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「代表的濃度経路(Representative Concentration
Pathways)」の一つで2100年に約4℃の気温上昇が予測されるシナリオです。本シナリオは4℃シナリオとして国際的に広く使用されており、4℃シナリオ作成時の参照シナリオの一つとして選択しました。
持続可能な開発シナリオは、「世界エネルギー展望 World Energy Outlook」(WEO)で参照されているシナリオの一つです。WEOは、国際エネルギー機関(IEA:International
Energy Agency )の主力出版物であり、世界のエネルギー予測と分析の最も信頼できる情報源として広く認識されています。
持続可能な開発シナリオは、気温の上昇を「2℃未満、(可能であれば)1.5℃
に抑える努力をする」というパリ協定と一致した道筋を示したものであり、かつ当社の「1.5℃目標」と整合しているため、1.5℃および2℃のシナリオとして選択しました。
分析の範囲は国内および海外の生産・研究事業場、ならびに製造委託先、サプライヤー等を含み、期間は2020~2030年(短中期)および2031年~2050年(長期)を検討対象としました。
リスク・機会の特定については、リスク・機会ごとに発生時期や発生確率、影響を及ぼす範囲とその大きさを分析し、対策内容などを総合的に評価し優先度合を決定しています。事業への影響が大きいものや社会的責任の高いもの、発生確率の高いもの等を特定し、管理します。
特定したリスクおよびその対策については、CSR委員会にて報告、審議され承認を得ています。CSR委員会で承認された方針・対策等に基づき、各関係部署がその実行にあたり、総合的にリスクを管理しています。リスク・機会の影響は定期的に見直され、その管理状況についてCSR委員会および取締役会において報告されています。
協和キリングループ目標※1
2050年:バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロ(Scope1+2+3)
2040年:使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成
2030年:CO2排出量2019年比55%削減(Scope1+2)
2024年:CO2排出量2019年比51%削減(Scope1+2)
キリングループでは、「キリングループ環境ビジョン2050」の気候変動に関する「一緒に作りたい2050年の社会」である「気候変動を克服している社会」のもとに、キリングループ全体で2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げ、脱炭素社会構築に向けリードしていくため、ステークホルダーとともにCO2排出量の削減に取り組んでいます。 また、より具体的な中長期目標として、キリングループ全体で2030年のCO2排出量を2019年比50%削減(Scope1及び2)※2すること、および2040年にRE100を達成することを掲げ、取り組んでいます。協和キリングループにおいても、キリングループと同様に2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロにする目標を掲げ、より具体的な中長期目標として、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成も掲げ、キリングループと連携し取り進めています。なお、2021年には、キリングループ目標よりもさらに高いレベルの協和キリングループ単独目標として「Science Based Targets(SBT)1.5℃目標」に基づく新たな2030年CO2排出量削減目標「2019年比55%削減」※1を設定しています。
新目標の達成に向け、ロードマップを作成すると共に、短期目標(2024年度CO2排出量:2019年比51%削減)も設定しました。2021年~2025年中期経営計画に組み込み、単年度ごとに目標(CO2排出削減達成率、再エネ導入率、エネルギー原単位前年比1%削減など)の設定・管理を行い、キリングループと連携し目標達成に必要な施策の検討・展開などを行っています。
主に省エネタイプの空調設備の導入、新棟への最新省エネ設備の導入、スポット空調導入といった設備面での改善や設備投資と共に、冷凍機制御や空調管理等のソフト面での改善も図り、生産性向上によるさらなる省エネを目指しています。また、2025年までに国内主要事業場において、使用電力の再生可能エネルギーへの転換を順次進めることにより、大幅なCO2排出量削減を達成する予定です。さらに、2030年までには、海外サイトや国内の支店営業所等も含めた当社グループ全事業場への再生可能エネルギーの導入・拡大を計画しています。
一方、生産・研究事業場への太陽光発電設備の導入・検討しており、2023年3月には宇部工場にオンサイトPPAモデルによる大規模太陽光発電設備(1.47MW)が稼働しています。
これらの施策を展開することによりCO2排出量削減を加速させていきます。
なお、2020年以降、RE100適合の再生可能エネルギーを高崎工場、富士事業場、宇部工場に順次導入し、各事業場の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えてきました※3,4,5。これらの再生可能エネルギーの導入により、2023年度は当社グループの年間消費電力量約78,000千kWhのうち約65,400千kWhがCO2排出量ゼロの再生可能エネルギー由来のものに切り替わり、各種省エネ施策による削減効果と合わせ、当社グループの年間CO2排出量の約55%(28,300t)が削減されました※6。なお、2021年には、本社にもRE100 適合の再生可能エネルギーが導入されています※7。
当社グループのバリューチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3)については、GHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い、15のカテゴリーに分け算定しています。キリングループの「2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロ」、並びに「Scope3を2030年に2019年比30%削減」の目標達成に向け、スコープ3の排出量削減についても継続して取り組んでいきます。サプライヤーの気候変動対応に対する活動状況のヒヤリングも開始しました。