どのような治療法があるの?
再生不良性貧血の治療には、症状や重症度に応じて以下の治療があります。
造血の回復を目指す治療
◆免疫抑制療法
造血幹細胞を攻撃している白血球(Tリンパ球)の働きを抑えて、造血を回復させる治療です。(免疫抑制療法は、ファンコニ貧血には使用しません)
- ・カルシニューリン阻害薬
- ・抗胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)※
※:Tリンパ球を攻撃して破壊する薬です。英語(antithymocyte globulin)の頭文字をとってATGとも呼ばれます。
◆たんぱく同化ステロイド
赤血球を増やす働きと造血幹細胞に直接作用して造血を促す働きがあります。
◆造血幹細胞移植(骨髄移植)
病気を引き起こしている造血幹細胞を、移植によって正常な造血幹細胞に置き換える治療です。これにより、血球の回復が期待できます。
造血幹細胞移植は、有用な治療の1つですが、移植前に強力な治療(抗がん剤や放射線による治療)を行うため、患者さんに負担がある治療でもあります。
造血幹細胞移植が第1選択となる患者さん(以下すべてを満たす場合)
- ・重症度ステージ2b以上(輸血が必要な状態)
- ・40歳未満
- ・HLAが一致する同胞ドナー(兄弟姉妹)がいる
造血幹細胞移植のドナー選択
- ・原則、HLAが一致する同胞ドナー(兄弟姉妹)
- ・免疫抑制療法が無効で、HLAが一致するドナー(兄弟姉妹)がいない場合には、骨髄バンクを介した非血縁ドナーからの移植も検討
◆トロンボポエチン受容体作動薬
造血幹細胞に発現しているトロンボポエチン受容体を刺激して、血液細胞を増やす薬です。トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)とは、主に肝臓でつくられ、血球をつくる元である骨髄中の造血幹細胞や巨核球を増やすホルモンの一種です。
症状の改善を目指す治療(支持療法)
支持療法とは、病気を根本的に治療するのではなく、その症状を改善させ、患者さんの生活の質(QOL)を保つために行う治療のことをいいます。
◆輸血療法
不足した赤血球や血小板を輸血で補充する治療法です。
- ・赤血球の輸血
- 貧血症状を改善するために、白血球が除去された赤血球製剤を輸血します。ヘモグロビン値を7g/dL以上に保つことが一つの目安になります。
〈鉄キレート療法〉
赤血球輸血に含まれる鉄分が心臓や肝臓に蓄積するために起こる臓器障害(鉄過剰症)を改善するために、経口の除鉄薬を服用することがあります。
- ・血小板の輸血
- 出血症状を改善するために、血小板を輸血します。
◆造血因子:顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
白血球が少なくなり、そのために重症の感染症を起こした場合は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)という薬剤を投与し、白血球の一種である好中球を増やします。
【参考】厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業
特発性造血障害に関する調査研究班
研究代表者 三谷絹子 再生不良性貧血診療の参照ガイド
令和4年度改訂版