ITP相談室 あなたの疑問にお答えします 監修:埼玉医科大学病院 血液内科 教授 宮川義隆

ITPに関するよくある質問や皆さんの不安な点について、専門医の先生にお答えいただきました。

ITPについて

病気について

Q.ITPとはどういう病気ですか
A.

ITPは、血液の病気です。血液の中にある血小板(けっしょうばん)という細胞が減り、血が止まりにくくなります。

Q.「難病」といわれましたが、治らない病気ですか?
A.

ITPは国の「難病」に指定されていますが、適切な治療を受ければ、日常生活の制限はほとんどいりません。
ITPには「急性型」と「慢性型」があります。子供に多い「急性型」は、約9割が治ります。大人に多い「慢性型」は、治療の継続が必要となります。*

*: 内科 102(6):1418-1423, 2008

検査

Q.骨髄検査は必要ですか?
A.

ITPの診断のためには、白血病などが隠れていないか、必要に応じて骨髄検査を行います。
腰に局所麻酔をした後、骨髄検査用の特別な器具を腰の骨に刺して検査をします。検査の必要性については、主治医とご相談ください。

治療方法

Q.脾臓(ひぞう)は体の中でどんな役割をもっている臓器ですか?
A.

脾臓は、にぎりこぶしほどの大きさの臓器で、おなかの左上にあります。脾臓の役割はリンパ球を作り、血液中の古くなった血液細胞と細菌を取り除くことです。
小児ITPの場合、約9割は治りますので、原則として脾臓摘出術(脾摘)は行いません。
大人のITPの方で脾摘を受ける場合、肺炎球菌のワクチンを受けるようにしましょう。

Q.脾臓摘出術(脾摘)を勧められました。手術を受けないといけないですか?
A.

ITP患者さんでは、脾臓での血小板の破壊が進んでいるため、血小板数が少なくなります。そのため、副腎皮質ホルモン剤療法で症状が改善しない場合などに、次の治療方法として脾臓摘出術(脾摘)を検討することがあります。
しかしながら、「体の中にある臓器を取ってしまっても大丈夫なのか?」、「約3割の患者さんでは、効果がなかったり再発したりするので、できれば手術を受けたくない」、と考える患者さんもいらっしゃいます。
脾摘を絶対に行わなければならないわけではありません。脾摘以外の他の治療として、免疫抑制剤や血小板を増やすトロンボポエチン受容体作動薬を選択することも可能です。最適な治療法について、主治医と相談しましょう。必要であれば、セカンドオピニオンの取得をお勧めします。

*:Kojouri K, Vesely SK, Terrell DR, George JN., Blood,
2004 Nov 1;104(9):2623-34.

Q.脾臓摘出術(脾摘)の前後で気を付けることはありますか?
A.

脾臓を摘出することで、免疫力が低下することがあります。
脾臓には肺炎球菌など特定の細菌と闘う役割があるため、肺炎球菌感染症を起こすリスクが高くなります。そのため、脾摘を受ける方は、肺炎球菌ワクチンの接種を受けましょう。

Q.「トロンボポエチン受容体作動薬」とはどのようなお薬ですか?
A.

血小板の元である骨髄中の巨核球を増やすお薬です。1週間に1回注射するものと毎日服用する飲み薬があります。患者さんの生活スタイルなどに応じて使い分けます。

日常生活の注意点

Q.「血小板数3万/μLあれば大丈夫」と言われました。
基準値(15万~40万/μL)よりもかなり低いのですが、本当に大丈夫でしょうか?
A.

血小板数3万/μLとは、重大な出血のリスクを回避できるレベルの血小板数です。
血小板数に加えて出血症状の程度、合併症、年齢、服用している薬の種類に応じて目標の血小板数が異なります。
主治医とよく相談しましょう。

Q.どれくらいの血小板数があれば、スポーツをしてもいいですか?
A.

スポーツの種類にもよります。
相手と激しく接触したり、転んだりする可能性のあるスポーツの場合は、出血するリスクがあるため、ある程度の血小板数が必要です。
詳しくは、主治医と相談しましょう。

Q.日常生活はどのくらい、制限しなければいけませんか?
A.

"日常生活"(今までどおりの生活)は、患者さん個々のライフスタイルにより異なります。血小板数が3万/μL以上あれば、今までの生活を特に制限する必要はありません。

Q.副腎皮質ホルモン剤を服用しているのですが、感染しやすいと聞きました。
何か気を付けることはありますか?
A.

副腎皮質ホルモン剤を服用していると、免疫力が低下するため、風邪をひきやすくなることがありますが、毎日マスク着用が必要というわけではありません。食事の前のうがいと手洗いを心がけましょう。

Q.生ものを食べてはいけないですか?
A.

フルーツや野菜、刺身など、生ものを食べても問題はありません。

妊娠・出産について

Q.妊娠・出産できますか?
A.

ITPで不妊になることはありません。
血小板数が2~3万/μL以上あれば、妊娠は可能です。
生まれたばかりの赤ちゃんの血小板数が一時的に減ることがあります。血液内科・産科・小児科・麻酔科が揃った病院での出産が、より安全と考えられています。

小児ITPについて

Q.保育園と学校はふつうに行ってもいいですか?
学校生活の制限は必要ですか?
A.

ITPであってもふつうに登園・通学できます。
血小板数が2~3万/μL以上あれば、登園・通学が可能であることがほとんどですが、頭を打つ可能性があるスポーツは避けましょう。
運動の制限は、子供の年齢・血小板数と出血症状により異なります。
詳しくは、主治医とご相談ください。

Q.成長に問題はないですか?
A.

ITPという病気自体の成長障害はありません。
ITPの最初の治療では、副腎皮質ホルモン剤が用いられます。
副腎皮質ホルモン剤による治療で血小板数が増えますが、顔が丸くなったり(ムーンフェイス)、免疫力の低下や低身長などがみられることがあります。

Q.急性ITPと言われましたが治りますか?
A.

小児ITPの場合、8割以上が半年以内に治ります。約1~2割が慢性化しますが、そのうち4~6割の患者さんでは数年かけて血小板数が5万/μL以上に増えてきます。*
出血症状に応じ、副作用を避けるため、必要最低限の治療を行うことが多いと思います。
詳しくは、主治医にご相談ください。

*:日本小児血液学会雑誌 第18巻第3号(2004年6月)P.210-218