腎臓病を悪化させないために
慢性腎臓病(CKD)患者さんが毎日の食事で注意すべきことは、病気の進行度や性別、年齢、生活状況によって違います。かかりつけの病院に相談して医師や栄養士のアドバイスを受け、進行度にあった食事をこころがけましょう。
病気の進行度はステージ(病期)によって分けられています。自分のステージ(病期)についてはセルフチェックで確認してみましょう。
CKDの進行度における食事療法のポイント
CKDステージG1〜G2
この時期に必要なことは、他の生活習慣病(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)に対する注意と共通しています。
塩分の摂りすぎに注意しましょう。食塩摂取量の基本は、3g/日以上6g/日未満です。
バランスよく、適量を食べ、肥満に気をつけましょう。
1日のエネルギー必要量の目安 25〜35kcal×標準体重(kg)たんぱく質は過剰な摂取をしないように気をつけましょう。
1.3g/標準体重(kg)/日を超えないことがひとつの目安です。
CKDステージG3〜G5
腎臓の機能が低下してきているので、腎臓をいたわるための食事が必要です。
-
たんぱく質の制限
たんぱく質は、体を作るもとになる大事な栄養素ですが、
腎臓に負担がかかる“燃えかす”がでるので、必要以上に摂らないように制限する必要があります。
各ステージの目安は「表:CKDステージによる食事療法基準」を参考にしてください。 -
塩分の制限
塩分を摂り過ぎると体に水分がたまり、血圧が上がったりむくみが出たりします。
高血圧になると腎臓に負担がかかりますので、塩分の摂取を制限する必要があります。
食塩摂取量の目安は3g/日以上6g/日未満です。 -
十分なエネルギーの補給
エネルギー不足の状態では、栄養状態が不良になったり、
体のたんぱく質がエネルギーとして使われ、腎臓に有害な“燃えかす”が増えてしまいます。
1日のエネルギー必要量の目安 25〜35kcal×標準体重(kg) -
カリウムの制限
ステージにあわせて、摂取を制限する必要があります。
制限の目安は、ステージG3bでは2,000mg/日以下、G4〜G5では1,500mg/日以下ですが、服用している薬や症状などで変わってくる場合がありますので、医師や栄養士のアドバイスを受けるようにしましょう。 -
リン・水分の制限
症状にあわせて、摂取を制限する必要があります。
表:CKDステージによる食事療法基準
ステージ (GFR) |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
食塩 (g/日) |
カリウム (mg/日) |
---|---|---|---|---|
ステージ1 (GFR≧90) |
25〜35 | 過剰な摂取をしない | 3≦ <6 | 制限なし |
ステージ2 (GFR 60〜89) |
過剰な摂取をしない | 制限なし | ||
ステージ3a (GFR 45〜59) |
0.8〜1.0 | 制限なし | ||
ステージ3b (GFR 30〜44) |
0.6〜0.8 | ≦2,000 | ||
ステージ4 (GFR 15〜29) |
0.6〜0.8 | ≦1,500 | ||
ステージ5 (GFR<15) 5D (透析療法中) |
0.6〜0.8 | ≦1,500 | ||
かかりつけの病院などにご相談ください。 |
ステージ1(GFR≧90) | |
---|---|
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
過剰な摂取をしない |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
制限なし |
ステージ2(GFR 60〜89) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
過剰な摂取をしない |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
制限なし |
ステージ3a(GFR 45〜59) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
0.8〜1.0 |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
制限なし |
ステージ3b(GFR 30〜44) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
0.6〜0.8 |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
≦2,000 |
ステージ4(GFR 15〜29) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
0.6〜0.8 |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
≦1,500 |
ステージ5(GFR<15) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
25〜35 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
0.6〜0.8 |
食塩 (g/日) |
3≦ <6 |
カリウム (mg/日) |
≦1,500 |
ステージ5D(透析療法中) | |
エネルギー (kcal/kgBW/日) |
かかりつけの病院などにご相談ください。 |
たんぱく質 (g/kgBW/日) |
|
食塩 (g/日) |
|
カリウム (mg/日) |
- 注)エネルギーや栄養素は、適正な量を設定するために、合併する疾患(糖尿病、肥満など)のガイドラインなどを参照して病態に応じて調整する。性別、年齢、身体活動度などにより異なる。
- 注)体重は基本的に標準体重(BMI=22)を用いる。[標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22]
- 注)BW=body weight(標準体重)
「一般社団法人 日本腎臓学会 編/東京医学社 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版 564ページ表1」より一部改変
-
腎臓病の人のために低たんぱくの特殊食品があります。これらを上手に活用するのが長続きのコツです。
腎臓の機能が低下するにつれ、より厳しく食事を管理する必要があります。また、糖尿病の患者さんは血糖管理のため、エネルギー制限が加わります。食事内容は自己流で判断せずに、医師や栄養士の指導を受けて決めるようにしましょう。