社員座談会「協和キリンのグローバル化」世界を相手にグローバルな視点で働ける。
「日本発のグローバル・スペシャリティファーマ」を掲げる協和キリンでは、リージョン(地域)の垣根を超えた開発プロジェクトが推進されています。協和キリンのグローバル化がどのように進んでいるのかについて、実際に海外の関係者とともに働く開発本部の3人に伺いました。
小寺 充彦オデラ ミツヒコ
開発本部 開発マネジメントオフィス
2014年度入社/新卒永井 千里ナガイ チサト
開発本部 臨床開発センター
2019年度入社/キャリア皆さんの仕事内容と、現在取り組んでいるグローバルプロジェクトについて教えてください。
小寺さんたちの統括の下で、医薬品開発プロジェクトの臨床開発段階で計画をリードするのがクリニカルサイエンス部です。ヒトでの試験を実施して医薬品としての承認取得を目指す臨床開発段階において、Phase 1試験開始から承認取得までの全体像・試験構成の計画を立案することに加えて、1つ1つの試験のデザイン策定、治験実施計画書の作成までを担います。この治験実施計画書を元に医療機関とやりとりをして、実際に試験を推進するのは永井さんの部署がメインになりますが、二人三脚で試験を運営していくイメージですね。現在私は、グローバル展開を予定している抗がん剤プロジェクトで、Phase 1のファースト・イン・ヒューマン試験にクリニカルサイエンスリードとして取り組んでいます。
髙瀬
私が所属する臨床開発センターは試験の実行責任を担います。試験計画段階では、クリニカルオペレーションの観点からプロトコルが実施可能な内容か検討し、業務委託するベンダーや試験実施国・実施医療機関の選定など、臨床試験の計画の立案に関与します。また、臨床試験の具体的な実行・管理方法を多岐にわたって策定し、試験開始後は、計画通りに試験が実施されているか、各種規制を遵守して実行されているか、求める品質が担保されているかを監督します。今は海外のパートナー企業とともに、大規模なグローバル試験を実施するプロジェクトに参加しています。
永井
協和キリンが目指す「日本発のグローバル・スペシャリティファーマ」とはどういうものか、その概念やビジョン、体制などについて教えてください。
協和キリンの「2030年に向けたビジョン」として、「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらす Life-changingな価値の継続的な創出を実現します」というスローガンを掲げています。このなかで「日本発」という言葉を使っているのは、日本に根付く伝統的な価値観に基づいたやり方で、世界の方々に笑顔を届けたいというメッセージだと捉えています。たとえば日本企業のトヨタ自動車を例に挙げると、日本の改善活動がそのまま「カイゼン」という言葉で世界に伝わるようになっていますよね。このように日本企業が培ってきた独自の文化を取り入れながら、専門性の高い医薬品開発を通して世界の人々に貢献できる事業体を目指すものだと解釈しています。
小寺
協和キリンではグローバルな方針の決定自体に日本人メンバーが関与し、中心となって動かすことができるチャンスがあります。たとえば他社だと、グローバルの本部で方針が決まり、それがそのまま各国に降りてきてそれに従う話をよく聞きますが、協和キリンのグローバルは「ワンチーム」です。One Kyowa Kirin体制のもと、非臨床ステージ以降の開発プロジェクトを一体的に進めるためのGDO(Global Development Organization)※2が組織されていて、リージョン(地域)にかかわらず一緒にプロジェクトに取り組めるようになっています。
※2:地域を超えたグローバル開発組織の名称
永井
私は、入社時からグローバルなチームで働くことが当たり前の環境でした。他社の話を聞くと、1つのプロジェクトに、複数リージョンからそれぞれ部署の担当者が参画するような、リージョンベースで組織が作られている場合があるようです。しかし協和キリンはリージョンを超えた1つの組織として、日本から各部署のリーダーが参画することもあれば、他の地域から参画することもあり、異なる地域にいる担当者・リーダーと直接コミュニケーションをとることが求められます。日本的な考え方を根底に持ちつつも、リージョンの違いにとらわれず多様性を大事にしながらワンチームで仕事が進められるのは、協和キリンのユニークな点ですよね。
髙瀬
議論やチームワークを大切にするところも日本らしいなと思います。協和キリンは世界的に見ればさほど大きな会社ではないですし、メガファーマに比べればプロジェクト(会社)がカバーできる範囲は限られています。だからこそ、日本的な改善活動やチームワーク、メンバー間のコミュニケーションによって、能力を掛け合わせて何倍にも大きくすることで価値を創造していけるのが、「日本発のグローバル・スペシャリティファーマ」の1つの側面だと考えています。
小寺
協和キリンのグローバル化において、特に注目している点や、協和キリンならではの魅力を感じる点はどんなところですか。
細かいことかもしれませんが、メンバーが海外に行く機会が多いというのは特徴の1つですよね。単に代表者が駐在するだけでなく、短期で3ヶ月派遣されて、海外とタイムゾーンを合わせてプロジェクトを推進したり、現地と日本のやり方をすり合わせてくるといったタスクの達成をメンバーに任せてもらえるのは、協和キリンの規模感だからこその面白い点だと思います。
永井
それは確かにありますね。アメリカ当局とのやりとりが必要なときはプロジェクトメンバーが1〜2ヶ月間現地に集結して、時差なく効率的に進めてしまおう、というような機会もあります。それ以外にも、海外のドクターと直接プロジェクトについて議論するために海外学会に現地参加するといった機会も多いと思います。年次に関係なく、プロジェクトに必要であればすぐに海外出張に行けるのはありがたいですし、現地に行ったからこそ得るものもたくさんあります。
髙瀬
普段は日本にいながらも、常にグローバルな視点で世界のトレンドをキャッチアップして計画に落とし込み、グローバルの矢面に立てるというのは協和キリンの魅力ですね。一人ひとりに活躍の機会があり、グローバルに影響を与えられるチャンスがあるのは面白いです。
小寺
国内外のドクターに自社の開発品を紹介すると、「興味深いプロダクトを持っているね」、「ベンチャーから買わずに自分たちで生み出したの? すごいね」という反応を受けることもあります。協和キリンの研究所から生み出された、今までにない新しい作用機序の薬剤を評価していただくと、そういった研究機能を保有していることを誇りに思いますし、開発本部のメンバーがそうした研究所と連携できるからこその強みがあると感じます。「日本の研究所から世界に発信できる」ことそのものが、協和キリンのグローバルの要でもあり、大きな魅力でもありますね。
髙瀬
海外のメンバーを交えたプロジェクトに取り組む際、コミュニケーションなどの面で苦労したこと、特に意識していることがあれば教えてください。
グローバルなメンバーだからといって、仕事の進め方は変わらない部分も多いです。ファンクション(機能)のヘッドやプロジェクトのリードが日本にいても海外にいても、どこの国籍を持っていても、「そんなもんだよね」みたいな認識(笑)。ただ、コミュニケーション面で意識することはあります。
髙瀬
日本はハイコンテクストカルチャーと言われていて、文脈や背景で推し量ることも多いですよね。日本だと、曖昧な表現や「空気を読む」みたいな感覚で進んでしまうところを、個々の言葉の解像度を上げて伝える必要性を感じます。私は英語がそこまで得意ではないので、言葉の齟齬によるズレがないよう、ビジュアライゼーションを使ったりして双方の認識が合うよう工夫しています。あとは、積極的に話すこと。
永井
黙っていると「アグリー(賛成)した」と捉えられますよね。
髙瀬
日本だと「熟考している」、「反対意見がある」のように感じることがある沈黙も、「黙っている=意見がない」ととられます。後から言うのは失礼なので、意見があるならその場で言うことを心がけていますね。
小寺
海外だから、日本だからというより、目的を共有するためにどう伝えるかが大事ですね。
永井
チャットやメールだとタイムラグもあってうまく伝わらないことも多いので、電話や会議でできるだけ話してその場で解決するとか。
髙瀬
そうそう。どうしても日本にいるメンバーが多いので、オフィスで立ち話をしてそのまま進めてしまうことがあります。グローバルメンバーは知らぬ間に決定されてしまうことで疎外感や不信感を持たれることも多々あります。
小寺
海外のメンバーが疎外感を感じてしまうとしたらそれはこちらの責任なので、とにかくオープンに話す機会を設け、積極的にコミュニケーションをとることがグローバルプロジェクトを進めるうえで不可欠だと考えています。
髙瀬
これまで参画したプロジェクトにおいて、特に協和キリンの価値観を重んじて取り組んだ経験があればお聞かせください。
数年前、とある先行試験を終了した方が参加可能な長期継続投与試験に携わっていたのですが、そのタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、提携会社が新規登録の中断を指示したことがありました。ただ、この薬が使えなくなったら代替治療はなく、治験を受けていた患者さんの状態が悪化していってしまうだけの状況でした。未曽有の出来事にさまざまなリスクを考えたものの、チームで最終的な判断の軸になったのが「なにが患者さんのためなのか」ということでした。患者さん自身が継続投与試験への参加を見送る判断をするならともかく、私たちが患者さんの選択肢を潰すわけにはいかないと、海外のスポンサーを説得し、日本では中断しない判断をすることができました。
永井
私も同じような経験があります。私が担当していたがん領域のプロジェクトで、薬剤自体は有効で安全でしたが、外部環境の変化によって残念ながら開発中止になってしまったことがあって。自分たちがこの治験を辞めてしまったら、今この薬の治験に参加している患者さんはどうなるのだろうと考えたとき、人道的な観点から提供を続けることを上層部含めて速やかに決断することができました。かなり慌ただしかったのですが、「患者さんに不利益にならないよう、できることがあればやりましょう」というマインドがメンバーに浸透していたことも印象的で、われわれは誰のために働いているのかという協和キリンの価値観に立ち返ることができた事例でした。
小寺
One Kyowa Kirin体制について、どのように考えていますか。また、普段の業務のなかでこの体制を実感する場面があれば教えてください。
私たちがグローバルに仕事をするときには、リージョン(地域)の軸とファンクション(機能)の軸を組み合わせたマトリックス構造に従っています。扱っているタスクによってはファンクションが大事にしている軸や、それぞれのつながりを感じたり、反対にファンクションごとの違いを感じたりすることはありますが、メンバーのリージョンが違うからといって特に違和感はありません。リージョンの軸が気にならないことこそがOne Kyowa Kirinが浸透している証なのかな、と感じます。
髙瀬
四半期に1回程度、GDO(Global Development Organization)に所属するメンバーが全員出席するオールスタッフミーティングが開催されます。活動方針や振り返りなど、協和キリンが今どうなっていて、これからどうなっていきたいのかを明確に示してくれるので、全員が疎外感なく、同じ方向を向いて士気を高められるというよさがありますね。
永井
自分がプロジェクトの中心にいるときは特に感じないのですが、そうでない社員からすれば、自分がなんのために働いているのかを見失うこともあるかもしれません。しかしオールスタッフミーティングのおかげで、間接部門の方であっても「一刻も早く患者さんに薬を届けるために、こんなプロジェクトが進んでいる」と理解でき、同じ目線に立って価値観を醸成できるのは、非常によい体制だと思います。
小寺
- ※2024年11月時点
私は開発本部の開発マネジメントオフィスというところに所属しています。医薬品開発のプロジェクトでは医薬品ごとに目標とする医薬品像が設定されるので、それに向かってどのように開発計画を立て、遂行していくかの旗振り役を担う部署ですね。開発計画の立案は自分たち単独ではできないので、髙瀬さんが所属するクリニカルサイエンス部をはじめ、臨床開発センターや非臨床部門、生産本部、薬事部門など、社内のさまざまな部署と連携をとりながらプロジェクト全体の統括をしています。そのなかで私はグローバルプロジェクトリードとして、抗がん剤開発におけるファースト・イン・ヒューマン試験※1のプロジェクトなどに携わっています。
※1:第I相臨床試験のなかでも、動物試験で安全性と有効性が確認された後、ヒトに初めて投与する段階の治験
小寺