Project Story 02新たな研究テーマに挑戦
米澤 早紀子 ヨネザワ サキコ
- 研究開発本部 研究ユニット 疾患サイエンス第2研究所
- 2017年度入社
免疫・アレルギー疾患の発症抑制に関連すると言われているタンパク質に着目し、免疫・アレルギー疾患の治療薬となるタンパク質医薬品の探索研究をするプロジェクトを担当。プロジェクトリーダーとして、計画の策定やタイムスケジュールの設定、メンバーの進捗の統括を行う。
01プロジェクトリーダーになるまで
免疫・アレルギー疾患を抑制する新薬開発を目指して
関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎などの免疫・アレルギー疾患の治療薬となる、タンパク質医薬品の探索研究に関わっています。探索研究は、病気の治療薬や原因などの研究を行い、医薬品のもとになる化合物や分子を動物の細胞に作用させるなどして、最終的な薬剤の形に落とし込む段階です。
プロジェクトの目的は、疾患の発症抑制に関連すると言われているタンパク質を、協和キリン独自の知見で改変し、医薬品として使用することです。疾患の研究を担当する疾患サイエンス第2研究所のメンバーに加え、創薬基盤研究所、分子解析センター、薬物動態研究所、安全性研究所などの他部署からもプロジェクトメンバーがアサインされ、現在は10名以上が活動しています。
好きな研究業務を続けつつ、プロジェクトリーダーに
現在はプロジェクトリーダーとして、プロジェクト全体の研究計画の策定や、薬理評価を行い、プロジェクトメンバーと進捗や課題を共有しながらプロジェクト推進をリードしています。
研究計画の策定では、どのタイミングでどんな実験を行うか、どれくらいの量の薬を使うかなど、実験方法やタイムスケジュールを考えてメンバーに共有します。各専門メンバーの意見をすべて取り入れて実験を実施するには時間やコストの制約があり、優先順位をつけて取捨選択しなければなりません。異なる立場の関係者が理解できるよう、理論的に考える思考力や、説得する交渉力が求められます。
薬理評価は薬のもとになる分子が細胞にどう作用するかを評価する作業で、プレイヤーとしても活動しています。やはり研究や実験が好きなので、プロジェクトリーダー業の傍らで続けています。
プロジェクトメンバーとの進捗共有は、メールやチャット、電話で確認を行います。予定通りいかない場合もありますが、別の提案をするなどして前向きに話し合っています。
リーダーになる前から、上司が支えてくれていた
入社以来ずっと免疫・アレルギー疾患の探索研究に携わっていて、今のプロジェクトにアサインされたのは入社2年目でした。当初は私の上司がプロジェクトリーダーを務めていて、3年目からリーダー業務の一部を少しずつ任されるようになりました。振り返ってみると、プロジェクトリーダーを務められるように少しずつ育ててもらったのだと思います。
プロジェクトリーダーを任されたのは4年目です。「自分にはまだ早いんじゃないか」と不安を覚えましたが、上司は変わらず同じプロジェクトに参加していて、プロジェクトリーダー就任にあたって仕事のやり方を実際に見せながら指導してくれたので、とても心強かったです。
02プロジェクトリーダーになってからの変化
周囲のアドバイスで自分の意見が出せるように
プロジェクトリーダーになった時はプロジェクトが探索研究の後半に差し掛かっていたので、自分の判断が多くの人を動かし、これまで積み上げてきたものを左右する状況でした。その責任の重さにプレッシャーを感じ、最初は不安なあまり、上司に「どうしたらいいと思いますか?」と聞いてしまうことが多かったです。
上司はそこで「こうしなさい」と指示することはなく、「あなたはどうしたいの?」と私の意見を引き出し、その意見に沿った進め方をアドバイスしてくれました。考える機会を与えられたことで、自分で考える力を養えたと感じます。
当時の私は入社4年目で、経験豊富な研究員とは言えません。探索後期のプロジェクトでリーダーを務めることは大きな挑戦であると、周囲も感じていたことと思います。上司以外のメンバーからもミーティングでアドバイスをもらえたり、居室で考え込んでいると「どうしたの?」と声をかけてくれたりと、全員で支え合う風土に支えられました。
対話を重ね、意思決定する覚悟を持つ
メンバーが多いため研究方針に対する意見が食い違うことも多く、皆が納得する研究計画を立てるのに苦労しました。全体ミーティングの後もメンバーと個別に話し合うなど、何度も対話して、意見が異なる理由を背景から理解することで、全員の納得感がある計画に少しずつ修正していきました。
それでも全員が納得するとは限りませんが、採用しなかった意見はなぜ採用しなかったのかを説明し、どうすれば採用せずともうまく進められるかまで伝えることで理解を促せます。
ときには強い意志で説得を試みることもありました。裏付けとなるデータがない場合は、自分の意見を信じる気持ちが必要です。チームを率いるうえで「こういうふうにやったらうまくいくと思うんです」と理論立て、覚悟を持って伝えることが大事だと学びました。
実験結果を次の行動にまで落とし込む
プロジェクトリーダーとして意思決定を積み重ねたことで、自分の発言に対する責任感が増しました。それまでは実験結果という事実を発信するだけでしたが、今は「プロジェクトの推進において、この結果はどんな意味を持つか」まで考えて説明し、責任を持って断言するように努めています。「得た結果をどう活用するか」と行動まで落とし込まないと、プロジェクトが前進しないからです。
また、説明するなかで「自分には理論が欠けている」ことを実感する機会が多く、周囲のメンバーからフィードバックを受けて理論構築する力を養いました。知識に網羅性を求められるようになり、最新の文献や業界の動向を把握して、幅広い知識を学んでいく習慣もできたと感じます。
03プロジェクトを経ての成長と今後の目標
プレッシャーだった責任感が、やりがいに変わった
このプロジェクトを経て、仕事との向き合い方が変わりました。以前は自分の決断への不安感が大きかったのですが、今はプロジェクトが進むことにやりがいを感じるようになったのです。
また、リーダーを経験する前は研究に対する学術的興味が大きかったのですが、リーダーを経験して「患者さんが本当に欲しいと思う薬が何か?」「より早く創薬を進めて患者さんに届けるには何が重要なのか?」をより深く考えるようになりました。
こうした変化が起きたのは、患者さんに貢献する可能性を広げられるリーダー職を任せてもらえたことで、「医薬品の研究開発を自分が進めている」という実感が増し、より前向きな気持ちが生まれたからだと思います。一方で「患者さんに良い薬を届けたい」という想いは、入社当初からずっと変わらず抱き続けています。
患者さんのニーズを叶える新薬を作りたい
ゼロベースからの研究プロジェクトを立ち上げた経験がなく、現在挑戦中です。今のプロジェクトの標的疾患について調べるなかで、今ある薬剤だけでは十分な効果が期待できない疾患があると知り、特にそのニーズが高い疾患の薬剤研究に興味を持っています。
すでに研究所のメンバーに声をかけ、プロジェクトの計画は立てました。まだ満たされていない患者さんのニーズに応える新薬を開発し、「患者さんに良い薬を届けたい」という想いを叶えていきたいです。